2羽
「ははっ、ムーンライト伝説みたいな名前だね。だからそんな恰好してるのかな?」
これは最近流行りのキラキラ輝くタイプの名前だなぁ。きっと親が世代だったんだろう。
「名前じゃねーよこのタコ介、俺そのものがウサギなんだよ」
「へぇ、園茂野賀ウサギくんかぁ。名字も変わってるんだね」
今だ輝けニコっ☆とスマイル!
「俺の話をっ聞きやがれぃ!!」
ちょっと後ろに下がった園茂野賀ウサギくんはつぶらな瞳を獰猛に輝かせると、素敵なあんよを僕のもっとも皮の薄い部分にシュゥゥゥゥトッ!!超大ダメ―ジァ!?
「っぁ!?~~~ぃひ!?」
何故かこの短時間で本日二度目のダイレクト☆脛アタックを頂戴した僕は、恥も外聞も気にかける余裕なくその場に崩れ落ちる。声にならない声と、目から零れた一滴の汗を抑えることなく。
そんなに駄目ですか、僕のスマイル。
「たっくよぉ、最近のガキは人様の話をろくに聞かねぇんだな」
お前さっき自分でウサギって言ったじゃん、人じゃないじゃんなんてツッコミをする余裕はない。本当に、なんで同じ所を……!!
「おう、あんた生きてっか?」
アイツは今だ体を起こさない僕を小さな手で突く。くそう、なんだこの図。
「いきなり、なに、すんだ……」
「おー生きてた生きてた」
痛みが徐々に引いてきてようやく僕にも喋る力が戻ってきた。それでもまだじんわりじわじわと痛いんですけどね。
「なんでいきなり、蹴りを、しかも……脛……」
「あぁん? そんなの腹が立ったからに決まってんだろうよ」
腹が立ったから脛に蹴りをくれる人なんて今まで一度も会ったことないよ!?
「おい、それよか立てるか? なんなら手ぇ貸すぜ?」
そういって自称ウサギは僕に手をのばす。その小さなおててで立てと申すか!?頼もしいねぇ!
「っう、くっそ……自分で立てるよこのヤロー」
僕はぼやける視界をそっとぬぐいながら起き上った。
「おーおー、よく頑張ったなー」
自称ウサギはそんな僕を見ながら拍手……のつもりだと思うけど、小さな手をくっつけては離してを繰り返している。そのたびに耳がピコピコと動くのが堪らなく可愛いが、こいつは僕の脛を二度もデストロイしてきた要注意人物だ。もうその容姿には騙されまい!
「なーに警戒してんだよ。こちとら無害のウサギぞ?」
スルーもツッコミ、スルーもツッコミ。無害のウサギは脛に二度も蹴りを入れないなんて言わない!!
「そういやおっちー」
「誰がおっちーだ!」 (時)




