17羽
「まあ、マザー。おっちーは放っておいて本題に入らねえか?」
「そうね、もうそろそろあなたのことを知りたいところだったの」
母の微笑とウサギたんの今までに無い気迫……。主人公っぽい立ち位置の僕を置いてけぼりのまま話が進んでしまう! 拾ってきたこの主人公っぽい僕を置いて!
さすがに会話に入りたい。べ、別に寂しいわけじゃないし、本当にちょっと僕の存在いるかどうか怪しくなってきたから怖いとか、そういうわけじゃないし!
「母上、ウサギ殿」
この野郎共……「え、居たの?」みたいな顔でこっち見てきたよ。気にしてる素振り見せてたのになんで「居たの?」みたいな顔してるんだよ。
「居たの?」
「居たのか」
「声に出して言うなよ! 泣きたくなっちゃうだr――」
「んじゃ、ウサギちゃんがそうなった経緯を教えてもらおうかしら」
「そうだな、そこから話さねえといけねえか」
もう僕は二人の会話に混じることなく、ウサギたんの過去を聴くことにした。というか、母さんなんでそこまで「ミステリアスな女」を演じているの? 這い寄るカオスの主人公の母みたいになってるんだけど!?
「丁度一カ月くらい前になるのかな、定年する前に詐欺にあっちまってなあ」
「やっぱり、あなたこの前失踪したおじいさまね」
ああ、もうこの二つのセリフだけで原稿用紙三枚分くらいのツッコミをしてやりたいんだけど、どうせスルーされるので止めておこう。
「よく知ってるな」
「まあ、仕事柄……ね?」
あなたシングルマザーで女で一つで僕を育ててくれてる普通の母ですよね。宇宙でハントとかしてないですよね。この間仕事の鍵忘れたからってスーパーに鍵届けさせたよね。
「ウサウ詐欺……。こんな詐欺を聞いたことがあるかい?」
「ちょっと!? もうそれってオレオレ詐欺だよn――」
「ODCは黙ってなさい。これは私とおじいさまとの大事なお話し中よ」
くっそーっ……ツッコミたい、とてつもなくツッコミたい……。
「続けるぞ。もう仕事も疲れて公園で一人タス……黄昏ていたんだ」
「そこにやつが現れたのね……」
「そう、小さいウサギが来て俺に問いかけてきた。〝疲れていませんか〟ってな具合にな。俺は疲れてるだけだと思って適当に返事をしちまった」
「なんて返事をしたの?」 (バ)