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16羽



 少し訂正すると、母さんとウサギたんの湯飲みはそのままだったけど、僕の湯飲みの姿が見当たらない。

 見えるのは水の入ったグラス(百均)が、コースター(百均)の上で待機している姿くらいだ。

 ちくしょう、まだ一口しか飲んでなかったのに……。どちくしょう、ウサギたんが良いとこのお茶って言ってたからゆっくり味わいたかったのに……。

 僕は片付けたであろう犯人、もとい母さんに色んなマイナスの感情を込めた視線を送る。とどけ! 僕の想いという名の文句!

「にしても本当に話し上手で面白いウサギちゃんだこと。お母さん久しぶりに家の中で楽しんでるわぁ」

 ウサギたんとの会話がとても楽しいらしく、僕が大きくなってからあまり見なくなった満面の笑みを浮かべる母さん。……いや、それはそれでどうだろうマイマザー?

「俺ぁ話は下手だし、面白いことなんてそう話してないって! マザーが聞き上手なだけだぜ、俺が今まで話した誰よりもな!」

「まあ!」

 そんな風に僕の心中を察する事のない二人は僕を置いて会話を再開させる。置いてって言うか、むしろみてすらいない気がする。僕の想いにも視線にも全く気がついてくれないし……。

 くっそー、きっと二人の内どっちかが飲んだのだろうなあ。ああでも、もし飲んだのがウサギたんだったら僕は許せるぜ。可愛いはジャスティスだからな!

 ……じゃなくてだ、何だろうこの感覚。今までに感じた事がない切なさと寂しさ、それと悲しさが僕の胸中を満たしていくんだ。もしかして、これが疎外感ってやつか?

 と言うかこの母親、そろそろ黙らせないと僕のある頃ない事ウサギたんに言い始めたぞ!? 僕のあるかどうかわからない好感度を下げさせるわけにはいかないし、そろそろ僕の本気を見せてやるぜ!

「ねえ、母さ」

「でも本当にごめんねぇウサギちゃん、この子ったら昔っから可愛い生き物には目がなくて……。でもここまで酷いとはお母さん、思いもしてなかったわ~」

「だっ」

「ほーん、おっちーの小さい頃か。ちょっと興味あるな、ヘイマザー!写真か何かない?」

「ちょ」

「あるわよ勿論。我が子の成長記録を保管しない親なんてそうそういないんじゃないかしら?」

「そ」

「なあマザー、そいつを見せて貰う事は出来ねぇか?」

「ひ」

「良いわよ、ちょっと待っててくれるかし「だあああああああああああああ!!」何よいきなり吃驚するじゃない!」

「そうだぜおっちー、驚くしうっせーぞ!」

「いやいやいやいやいや! 吃驚したのはこっちの方だよ!?」

 まさかの会話続行! 本当に吃驚したよ!? おっちー超吃驚!

 『だってこんなに可愛い生き物がいるなんて思ってもなかったし』

 『ちょっとまだ喋ってる途中だよ』

 『そんな、勝手に決めないでよ』

 『人の話を聞いてくれ』

 これ、全てほとんど一言目で遮られたんだぜ? そりゃ大声出したくなるよ! 存在の主張だよ! もっと声出していこう!

 ……って、何っの部活だよ!      (時)


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