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15羽



「いやいや、お世辞とかじゃなく本心だぜ?」

 そういうとウサギたんは僕の方をちらっと見ると「してやったぜ」と言わんばかりの満足げな表情をしていた。なんという腹黒ウサギ……。だが、そんな君もかわいいので許しちゃう。

「もう、ウサギちゃんが褒めちゃうから特別なの出しちゃう」

 母さん席を立つと少し台所でごそごそしだした。僕がいくら褒めても何も出ないのに、なんだろうこの差は……。

 そして、母さんが持ってきたのはカステラ。僕のおやつの時間には一切出てこなかったカステラ。母さんが僕とおやつの時間を一緒にしなかった理由を今垣間見ました。

「ほんっと、出来る主婦は違うぜー」

「もう遠慮しないで食べて食べてー」

 ウサギたんはフォークをグーの手で握りしめ、今か今かとカステラが届くのを待っていた。心なしか耳が尻尾のようにピョンピョンしている。かわいいですはい。「もえもえきゅんっ」ってされたらこれはヘブンズゲート開いちゃう。

「ウサギちゃん、ウサギちゃん」

「なんだい、マザー」

 あれ、さっきお母様って言ってたよね、いきなりマザーまで来ちゃったよこのウサギたん!

「もえもえーきゅんっ、ってしてくれない?」

 考えてること一緒だったー! 親子してこの生物に取りつかれてるよこれ! でも母さんが目の前でもえもえきゅんっしても何も感じない! これが親子かっ!

「こうか? もえーもえーきゅんっ」

 この日見たもえもえきゅんっの威力を僕たちはまだ知らない。

――

 ああ、なんて幸せな気分だろう。目の前で羽の付いたウサギたんが数匹で僕をヘブンズゲートに導いてくれてる。やったんだ。もうあんな中二病の設定の原稿とはおさらばできるんだ」

「オッチー……。ODC-。落武者ー。おぢむしゃー……」

 天国に向かう最中、後ろから声が聞こえてきた。もうそんな名前とはおさらばじゃい。

「ウサギちゃんだめよ。そんなんじゃ起きないわ。こうするのよ」

 一度何も聞こえない状態から思いっきり息を吸い込む音が聞こえてきた。何か、何かとてつもない邪悪な気を背後に感じる。

「インフィニティージェノサイド! オッチードットコム! 甦れ! 我が孤高の魂よ! 燃え尽きてもなお蘇りし真の――!」

「やめええええてええええええ!! ってか、オッチードットコムまだ続くのかい! というか母さんなんで僕の小説の内容知ってるんだよ!! くっそ、いっそ天国行きたかったわ!」

 がばっと上半身を叩き起こし、たのは良かったけど、目の前がぼやけて見えない。なんかめっちゃ目から水出てる。なんだろうこれ、ちょっとしょっぱいな……。

「あなたの部屋の荷物はどこに何があるのか全部知ってるわよ。テヘッ」

「ジェット機で天国向かってもいいですか」

「ODC、ODC! それよりもさっきのこと話すからちゃんと座れよな。マザーと俺に失礼だろ」

 ウサギたんの態度すごいでかい気がするんだけど気のせいかな。気のせいだよね。

 僕はなぜかウサギたんにちょいちょい指摘を受けながら、再びすべてが片づけられて何もないテーブルに腰を下ろした。                           (バ)


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