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14羽



「ちょっとるっくん、早く来て頂戴。お母さんもこの子もお茶待ってるわよ?」

「そっちも僕の仕事かよ!!」

 というか、物置の片付けし終わってすぐに「なんで用意出来てないの?」みたいな感じで言うなよ!両方いっぺんに出来るわけないじゃないか! あれか!? 僕は秘められた能力に目覚めてないだけで、本当は分身の術を使えるだけでなく母さんはその事を知ってるのか?

「んなわけねー」

 ちょっと埃まみれになった手を洗いながら一人でボケて一人で回収する。なんだろう、変な技術が身についちゃったなぁ。

 そして体力消費がいつもの倍以上になってる。これは何とかしないと……てあれ?

 手洗い場を出るとほのかにお茶の芳しい香りが廊下まで漂っている。もしかして待ち切れずに自分で淹れ始めたのかな?

「もう少し待ってくれたら淹れたのに」

「あらヤダ、本気にしてたの? 冗談に決まってるじゃないの」

「いつもの母さんから考えると、冗談に聞こえなかったんだけど……」

「お茶の良い香り~」

 この母親、強引に話を逸らしたのかそれとも本心で言ってるのかわからない……。

 でも確かにいい香りがする。多分この前お土産にもらった茶葉を出したんじゃないかな、えっと確か八女のどこかって言ってたけど……どこだっけ? 忘れちゃったなぁ。

 曖昧な記憶を探りながら入った台所では、さも当然の如く僕の席がウサギたんのものに。母さん、もう一つ椅子は余ってるのになんでそっちすすめないのさ……。

 僕が冷凍庫から氷を一つ持って戻ると、テーブルの上は完全に3時のおやつモードだ。緑茶のお供として置かれているのは羊羹とせんべいで、これまたお土産でもらったやつだ。

「おっちー、おっちー」

「うん?」

「なんで氷なんか持ってんだよ」

「ああ、これね。こうするんだ」

 そういってちょっと僕の体温で溶けた氷を湯呑の中に静かに入れる。

「僕は猫舌だからこうしてじゃないとすぐには飲めないんだ」

「へー、勿体ねぇなぁ」

「本当は熱いのを飲みたいけど、火傷したらしばらく何も美味しく感じられないからね」

 そんな話をしていると、席を外していた母さんが戻ってきた。手にあるのはおかきじゃないかな?

「ごめねぇ、小さい子が喜ぶようなものがなくって」

「いやぁ、気にしないで良いって。俺ぁ和菓子好きだぜ? それによぉお母様」

 ウサギたんは腕を伸ばして自分の丁度反対の位置にあるお茶の袋を取ろうとするが、ぷるぷる震え可愛い姿を見せるだけで一向に届く気配がない。

 本当はもう少し見たいけど、本当に辛いのか目が心なしか潤んで見えるので取ってあげる。

「これが欲しいの?」

「おお、サンキューおっちー!」

 こうやって素直だと本当に文句なしで可愛いんだけどなぁ……。

「それでそのお茶がどうしたのかしら?」

「ん、そうだった。さっきちらっと見えたんだが、やはりこの茶は星野村ってぇとこの玉露だ。あそこの茶は美味いからなぁ、よく覚えてるよ」

「ふーん」

 星野村かぁ、あんまり聞いたことないな。

「それにこの茶はお母様みてぇな別嬪さんが淹れたんだ、そんじょそこらの茶より美味いに決まってらぁ!」

「あ~らも~! この子ったら可愛いだけじゃないのねぇ! お母さん、嬉しくなっちゃった♪」  (時)


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