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狐の話

狐と金平糖と

「で!何で私は神様になったの?約束の日って何?本当の名は?」

神使達はこちらを全く見ずにもくもくと神棚の掃除を続ける。

人型に化けた狐は、美月よりも背は低くほっそりしている方とぽっちゃりしている方が分担してせわしなく動いている。

「答えてよー!」

涙目の美月。名に一つわからない状況で花びらの記憶のままに着いたら狐は喋るし、肝心なことは何一つ言わない。

「だまらっしゃいっ!おっ、おいらたちだってなぁー!うっ、うぅ…」

ぽっちゃりしている方の狐は泣き出してしまった。

困惑する美月にほっそりしている方が話しかける。

「あんさんも、大変でしたやろ。それはわかりますがね。私らもいきなり主人であった神を無くし、悲しみにも浸りたいんですわ。」

涙を収まり掛けたぽっちゃり狐が続く。

「なんで君を神にしたのかはっ、分からないけどっ、ひっく。このっ、神社はっ、大切だからっ。」

泣かないで、と言いながら更に質問を重ねる。

「この神社の役割って?」

ほっそり狐は何処から持ち出したのかホワイトボードを使った説明を始めた。

「こん神社は神護神社かみもりじんじゃ言いますんや。今でさえ廃れてますがね、日本の神社の中で一番古い神社なんや。あ、まだ質問はあかんで。それでやな…」

長ったらしい説明を纏めるとこうだ。

神護神社は読んで字のごとし、神を護る神社。

日本で一番古いと言うと、いろんな所から抗議が来そうだが、聞いた感じ神社とは少し違うようだ。

神使の狐は神社と呼んで居るけれど。

各地に神が散らばる前にかの天照大神がこの神社を建てた。

此処に祀られるのは決まった神様ではなく時代と共に変わって行くシステムらしい。といっても神の寿命は長いから私で三代目になるそうだ。

神護神社の役割は神同士のイザコザの解決だとか神の悩み相談だとか…。

つまりは神の世界のバランス調整役だそうだ。

そんな地味で大事な神社が潰れかけてたって、これ、大丈夫か?


「は、話は、大体わかったわ。」

美月はまだ長々と喋る狐をさりげなく止めた。

「いや、分かってないね。あんさん。今の自分の状態わかってないわ。」

「いや、分かったから!なんてゆうか、適当にこの神社に顔出してそんな感じの事しときゃいいんでしょ?」

呆れ顔の狐。

「アホか。見てみぃ、自分の体を。」

慌てて手を見るが何ともない。続いて足を見ると…

「って何これ?!すっ、透けて、きっ消えてる…?!」

「そうや、あんさんは今も死んでいる状態や。」

「え?!どっ、どういう事?!てか、これどうにかしてっ!!」

ほっそり狐がぽっちゃり狐に何か言うと、まもなく大きなシャムの瓶が運ばれて来た。

丁度2Lのペットボトルを真ん中で半分に切ったような大きさで、中には少しの真っ白な金平糖(20〜30個位?)が入っていた。

「これを一つ口にいれなはれ」

ほっそり狐の言われるがままに白い金平糖を取り出し一つ口にいれた。

普通の金平糖より一回りほど大きくあっという間に口の中で溶けてしまった。綿菓子みたいな感じ。

見ると、足が元通り戻っていた。

「えっ?なにこれ?どういう事?!」

そしてまた狐の説明が始まった。

白い金平糖は前の神様の『神気』の塊だそうだ。

今の美月は一度死に、まだ生き返ってはいない。言うなれば今も死んでいる状態である。

存在が不安定なため、すぐに現世から消えようとしてしまうのだそうだ。

それを、前の神様の『神気』の塊、つまり力の源の様な物を体に取り込む事で命をつなぎとめる事ができるらしい。

そして美月の対価、生き返る為にしなければならない事は、この大きなジャムの瓶を金平糖で一杯にしなければならないそうだ。

『神気』は信仰心が集まると増えるそうで、『神気』が強くなると神様としての格も上がるそうだ。

『神気』が強くなると白い金平糖が勝手に増える仕組みらしい。

それから、神護神社の務め?をはたし、他の神からの感謝や尊敬心でも金平糖は増えるらしい。 が、詳しい事はこれを読め、と何やら読めない字(草書かな?)で書いている手紙を渡された。

「これは、前の神があんさんに。言うて置いて行ったもんや。あん人は夢見が出来たからの。あんさんが此処にくるのもわかってはったんやろ。」

「夢見って?」

「夢で未来を見る事や。『神気』めっちゃ使うから、あんまり最近はみてはらんかったけど…死期を悟ってはったんやな…」

うっ、うぅ、わぁーーん!!

ぽっちゃり狐がまた泣き出したのでそれを宥め、取り敢えずまた消えかかった時の為に五つほど金平糖をハンカチに包んで、その日は家に帰った。


(なんか、とんでもない事になってきたなぁ…)

ことの重大さを知らない美月はまだ実感が湧かない。自分が神様になったなんて。

(でも、折角生き返るチャンスが貰えたんだ…)

次に死ぬ時に後悔がない様に生きよう。

そう思いながら今まで通りの生活を信じていた美月は、眠りに着いた。

神護神社の役目を、まだ美月は知らない。

対価の意味も。

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