“ナイツオブエデン”
VRMMO。バーチャルリアリティーオンラインゲーム。
それが世界に発表されたのは約二十年前。世界は異世界とも言える仮想空間に魅了され、その業績は鰻昇りとなっていった。世界中の企業がそれに目を付けるのは当然の流れであり、あらゆるタイトルが作られ続けた。
そんな中、とあるゲームがこの日本から発表される。それが、“ナイツオブエデン(KOE)”という名のVRMMOだった。
“力で勝ち取れ。己で掴み取れ”を謳い文句に作られたそのゲームは、瞬く間に世界中のゲーマー達のハートを鷲掴みにした。
瞬時翻訳機能。世界数十ヶ国の言語がインストールされており、どの国の人が相手でも言葉は瞬時に翻訳化され、国の隔たりなく共に楽しむことが出来る。
ジョブシステム。ゲーム中には多種多様な“ジョブ”と呼ばれる職業が存在し、それぞれのジョブに応じた多数のスキル(特殊能力)を習得することができ、なおかつジョブチェンジも自在にすることが出来る。
ランキングシステム。プレイヤー同士がランキング戦と呼ばれる戦いをすることで、それぞれにランキングが付けられる。強さだけが全てであり、如何にレベルが格上だろうとも勝てばランキングが上がっていく。
討伐システム。ゲーム内に存在する多数のモンスターを狩ることでもプレイヤーレベル、ジョブレベルを上げることが出来る。そのため、ランキング戦で勝てない場合でもプレイヤーを育てることが出来る。
旅団システム。ゲーム内で仲間を集い、旅団という集団を結成することが出来る。そして旅団毎にランクが付けられ、人気旅団には数万人が所属する。
他にも様々なサービスを展開する“KOE”は、VRMMOというジャンルの中で圧倒的な人気を博し、今や世界数百万人のプレイヤーが存在するまでに至っていた。
その影響は仮想世界を飛び出し、現実世界にまで出始める。KOEにおいて高ランクのプレイヤーはマスコミに紹介され、テレビやラジオに出演。雑誌の取材、グッズの発売など、まるで世界的スターのような扱いを受けていた。
そう、KOEというゲームは、もはや“ゲーム”というジャンルには収まらなくなりつつあった。世界的な社会現象を巻き起こすそのゲームは、いつしか“してて当たり前”と呼ばれるものになっていた。思えば、歪みはそこから始まったのかもしれない。
その時、人々はまだ気付いていなかった。その世界に忍び寄る異変に……