【恋葉 凪】003-2/2【葉矛】
【個体ノ武器】
【雅木葉矛】-00-3-1/2----恋葉 凪
三日前に翼さんに引っ張られて逃げた道のり、駅前までの最短ルートを駆け抜ける。
息が切れるがそれでも足を止める訳には行かない。
足を止めれば、僕を引っ張っている彼女は転んでしまう。
振り返る余裕もつもりも無いが、追っ手があるようには感じなかった。
それでもなるべく場を離れた方が良いのは明らかだ。
僕は背の高い黒い怪しい男達に連れ去られそうになったばかりなんだ。
気が気で無かった。
……とは言っても、後になって考えてみればこんな状況で彼女の言う事を聞き分けている自分の冷静さに驚く。
僕自身、こういう時は絶対『取り乱す側』の人間だと思っていたのだが。
駅前はやはり混雑していた。
大人達に紛れて部活が無い、もしくはサボった自他学校の生徒達がいろいろなところに溜まっている。
そういう人たちは大抵集団で動くから分かり易い。
別に分かりたい訳じゃないけど。
恋葉さん(に似た人?)は手を離して人ごみに紛れ込むように普通に歩き出した。
「いい? 大丈夫? 雅木君、見失わないようについて来てよね。」
彼女が囁いた。
僕は黙って頷いた。
見失ってしまわないように注意しながら、僕は彼女の後を追った。
幸い”東紅葉高校”の制服のお陰で他の人と区別がつき易かった。
その上平日なため休日程人がいる訳でもなかったのでなんとかついて行ける。
彼女のペースは歩いて追える程のもの。
故に呼吸を整えるだけの余裕があった。
進行ルートだが、今回は駅の方には向かわずそのまま少しずつ駅前から『ハズレ』の方に向かって行く。
人が少なくなって行き、駅周辺のハズレまで------。
---僕は今、駅周辺と言えるかいえないか怪しい距離にある廃墟にいる。
コンクリート作りの三階建ての小さなビルである。今はその三階にいる。
この建物は確か、ちょっと前に火事で全焼した建物だった気がする。
ニュースで報道していたのを見た覚えがある。
この建物だが、元々は中華料理屋だったようだ。
ところどころにその名残がある。
名残、例えばこげ落ちていて見分けがつきづらいが、お皿の様なものが焼けた木のテーブルの上に置いてあるのが見える。
「さて、雅木君。危なかったみたいだけど怪我無いかい?」
一息ついたところで恋葉さんが僕に喋りかけて来た。
「あ、ハイ。僕は大丈夫で……。」
そこで僕は、彼女が先日とどう違うのか良く観察する事が出来た。
なんで気がつかなかったんだろう。
よく見れば凄く違うじゃないか。
……まず髪型が違った。
翼さんは三日前「ショート」だった。
目の前にいる少女は髪を長く伸ばしていた。
背中の中程まで伸びた髪を後ろで一つに束ねている。
ずいぶん長いポニーテールだ。
……まさか三日で髪が伸びた、とかそんな事は無いはずだ。うん。
それに良くみれば『眼』が違う。
三日前に見たのは深い濃い緑色の瞳。
それと違って、目の前の彼女の瞳は、もっと浅い。
薄い緑色。エメラルドグリーンとでも、表現のしようのある。鮮やかで淡い色。
目付きから受ける印象も違う。
薄めというかジト目な感じの目付きから受けたおとなしそうな、というかヤル気の無さそうな印象は受けない。
キリッとした、ツリ目気味のその眼は活発的な印象を僕に与えた。
……全体的に見て、見ず知らずの人であることは確かだ。
「あ、あの。失礼かもですが、……誰ですか?」
翼さんじゃないのはよく見て分かった。
けど凄く似てる。
だから尚更気になるが……。誰なのさ?
彼女はきょとんとした様子で首を傾げた。
……質問が唐突過ぎたかな。
ちょっと考え込んで、
「翼さん、じゃないですよね?」
と。続けた。
それを聞いたとたん彼女はがっくりと肩を落とし、顔を伏せてうなだれた。
同時にため息をつく。
「うわぁ、酷いな……。クラスメイトの顔も覚えていないのかい?」
クラスメイト?
……は? クラスメイトだって!?
確かこんな人はいなかった……。
……いや、言い切れない!
まだクラス替えがあってから間もない。
……二ヶ月が以上経ってるけどまだ間もないと言える時機であるハズだ。
当然僕は女子生徒との絡みなんて殆どないし、正直クラスの人の顔と名前なんて自分が喋る男子生徒のものしか覚えていない。
考えを巡らせてちょっとだけ、哀しくなって来た。
その点稀鷺は凄い。関わる、関わらないに限らず大半の女子の名前を把握しているのだから。
「ちょっとだけショックだな……。まぁ、どうせボクなんて姉さんの劣化でしか……。」
「……ボク? 姉さん?」
凄い!一つの発言で幾つも突っ込みたいところが出て来るなんて!
『ショックなのは僕も同じだ』と言おうと思ったが、その突っ込みも引っ込んだ。
顔を伏せ、いじけ始めていた彼女は、
「……そ。姉さん。ボクは『恋葉 凪』。二年、というか君と同じ組だ。君は覚えていないみたいだけどさ。」
そう言いながら、こちらを覗き込むように心なしか『ジトっ』とした目線を送ってくる。
翼さんに似た表情だ。その表情のお陰で姉妹だと納得がいった。
……お姉さんによく似た目付きなコトで。
確かに二ヶ月同じクラスで顔を覚えてなかったってのは、僕だってめんと向かって言われたら結構ショックかもしれない。
け、けど僕は基本的にクラスではぼうっとしてるからな。
昼休みとか、大体稀鷺のところにいくし。
そもそも女子の顔を眺めるなんて僕には出来ない。
これなら顔を知らなくても仕方ない、よね?
「ツバサ姉さんとは実の姉妹。どうせあんまり影も濃くないけどさ。頭の片隅にで良いから、出来れば覚えておいてよね……。」
ため息をつきながら、若干ふてくされたようにその場に座り込む。
……や、やれやれ。
参ったな、こういう時はなんて声をかけていいものか……。
------ところで建物はコンクリート製で、焼け落ちた後でも原型はしっかりと保っていた。
風の通りが良く、それが火事の広がり方を助長したのだろうが今はその風が心地いい。
「まぁ、姉さんと間違えられなかった事にまず感謝するべきかな。ボクと姉さんは違うのに、なんでみんな、間違えるんだ……。」
ブツブツと小さく独り言を呟いている。全部聞こえているんだけど。
声をかけようとして、なんて呼ぼうか躊躇った。
知り合ったばかりの女子を名前で呼ぶのは僕の流儀に反する。
……流儀とかかっこ良く言ったが、要するにその度胸がないだけだ。
「あの、恋葉さん。」
「……その呼び方、気に入らないな。」
ふてくされ気味だった彼女は立ち上がり、
「ボクの事は『ナギ』って名前で呼んでくれた方がいい。『レンヨウさん』は無し。いいね?」
そう言いながら、彼女は建物の中を見渡した。
……いろいろ聞きたい事があった。
アイツ等誰? さっき霧を起こしたのって君でしょ、どうやったの? どうして僕が狙われてるのさ?
だがそれ以上に。
今まず一番気になるのはここの安全さ。
『僕たちは安全なのか』だった。
これ以上は逃げ切れない。ここはビルの三階なのだ。
意を決して彼女に話しかけてみた。
「ナギ、さん。ここって安全なんですか? これ以上逃げれる場所は無さそうなんですが。」
「敬語禁止。」
ビシッと人差し指と中指を合わせて突きつけてきた。
「あ、じゃあナギさん。ここって何かあるん……のかな? アイツ等が目を付けづらいとか確実に逃げ切れる場所だって確信がある、とか……。」
彼女はニヤリと笑みを浮かべた。
「ないよ? なにも。」
「へ?」
澄まし顔でそれだけ言うと、僕に背を向け今入って来た入り口を見やる。
左手の平に右手の拳を叩き付け、
「なんにも無いから都合が良いんだよ、雅木君。」
左手をポケットにいれ、入り口を睨みつける。
「出てきなよ! わざわざ誰もいないところまで逃げて来てあげたんだからさぁ!」
そう彼女が小さく叫んで、一拍ほどした。
やっぱりか。
黒いスーツを着たアイツ等が二人入り口から入って来た。
……やっぱりあのまま逃げれるなんて都合が良過ぎたんだ。
片方は手に警棒を。
もう片方は黒い拳銃を持っている。
やはり武器を持って来ている。
僕をどうにかするつもりなんだ。
この数日間、頭から銃が離れないな。
すっかりそのカタチが焼き付いてしまっている。
すっかり見慣れてしまった感がある。
不意にそんな自分が少し怖くなった。のんきな事を言っている場合ではないんだ。
冷静に考えて、武器を持つ二人の大人に対して僕たちは状況で見れば圧倒的に脆弱だった。
普通に見れば勝ち目などない。
非常に頼りない男子高校生と〔僕と比較したら〕何故かとても強い(今日あったばかりだけど)クラスメイトらしい女子生徒。
向こうはガタイの良い男が2人
こちらは丸腰。向こうは武器を持っている。
向こうは二人。こちらも二人。
だがこちらは一人は完全に戦力外。むしろ足手まとい。
もちろん戦力外とは僕の事だ。
「雅木君、下がってて。」
凪さんは僕にそういって自ら敵に歩み寄る。
「え、ちょ……ちょっと……?」
右手の掌を前に突き出し。左手をポケットから出さないで。
無防備に、銃を持った敵に歩み寄って行く。
「止まれ!」
一人、銃を持った方が、それを前に構えて静止を促す。
銃身の下に取り付けられた追加ライトパックのレーザーポインタが、彼女の胸元に銃口が向けられている事を知らせている。
だが彼女は止まらない。
「止まれと言っているだろう!!」
それでも彼女はとても余裕を見せていた。
まるで、銃など大した脅威でないと言わんばかりの無防備さだ。
銃口から身体を逸らすとか、そういったそぶりすらしない。
「ヤダね。」
彼女は静かにそう言い放つ。
正直、何をするつもりなのか分からなかったが、とても頼りがいがあった。
行動や、言動1つひとつに確かに信頼に足る何かを感じたのだ。
彼女の行動には『自信』が満ちている。
というかそもそも彼女に頼れないのなら、僕に助かる術は残されていないように思う。
情けないとは思うけどさ、自分でも。
でも今は彼女に頼る以外ない。ある訳がない。
「構わない、撃て!」
警棒を持った方の男が言った瞬間、黒い拳銃の銃身が跳ねた。
弾道は極めて正確で直進的。
銃身から打ち出された弾丸は正確無比に彼女の胸元に飛んだ。
避けれない。
もう避けようがない。
僕は目を覆う必要があるか悩んだ。
そうやって悩んでいる間に、既に弾丸は目標に着弾していた。
「……え?」
一瞬、思考が働かなくなる。
何が起こったか理解出来なかったんだ。
……彼女は避けなかった。
避ける必要がなかったのだ。
弾丸は、とても硬い壁にぶち当たってその足を止めた。
その壁は青白く透き通った氷で出来ている。
彼女と敵との間に、透き通った小さな氷の板が出来ていた……。
「な、なにそれ!?」
僕は驚いたが、声を上げる程に驚いたのだが男達も凪さんも冷静だった。
氷の板は凪さんが手にしていた。
板の表面積は小さいが、結構に分厚く出来ていた。
彼女はそのまま、弾丸を受け止めた板を持ち上げ相手に投げつける。
「雅木君、ちょっとでいいから隠れてて。」
こちらを振り返り素早く指示をくれた。
「流れ弾、当たっても知らないよ?」
流れ弾丸と聞いて慌てて近くのコンクリートの柱の裏に隠れた。
頭だけ出して事の成り行きを見届ける事にしたんだ。
……あのね。
僕をへたれだと言うのは勝手だけど、実際こんな状況になったら君だって同じ事してるって、絶対。
銃って実際に見てると怖いんだ。
それの銃口が自分に向けられるかもしれないなら尚更だ。
先ほど投げた弾丸を受け止めた氷の板はどちらの男にも当たらなかったが、二人を分断させる事は出来ていた。
凪さんは素早くもう一度右手を前に突き出す。
……宙に。なにも無いところにうっすらと、彼女の手元を中心に何かの「輪郭」が現れる。
空中に現れた輪郭は青白い光のもやと冷気を発し、次の瞬間には『カタチ《実態》』になった。
その輪郭は極めて単純な形。
『柄』と『刃』の様な形。
宙に現れたのは僕にとってはゲームなどでしか馴染みの無い物。現実に実物を見る事は殆どないもの。
『剣』だった。
それは透き通った、氷で作られた剣。
『剣の形をした氷』とも言える。
彼女は躊躇い無くそれの柄を握り、構えた。
先ほどの氷の板を避けるべく回避行動を取り、敵二人は同時に無防備になっていた。
まず、銃を持つ方に狙いを定めた。
「遠距離武器は厄介だ。先に仕留めさせてもらう!」
相手は体制を立て直していなかった。
好機だ。
その隙を突くように切り掛かった。
「グッ……!この化け物が!」
体制を立て直せずいた銃を持った男は、細かく狙いを定めず銃を撃った。
狙いもデタラメに適当に撃たれたそれだったが、銃身の銃口、銃弾の弾道は凪その人を捉えていた。
「……あぁ!」
思わず声を上げた。僕が。
ここから見たら明らかに弾丸が当たり、その上で体を突き抜けているようにしか見えなかったんだ。
声を上げてからデジャヴに気がついた。
こんな事、こんなアングルが三日前の夜でもあった様な気がする。
「化け物だなんてっ……!」
やっぱりそうだ。
凪さんは弾丸には当たらず、弾丸をすり抜けるように間合いをつめ自分の射程以内に接近した。
「ボクは、普通だ!」
剣を振り下ろす。刃が肉を裂く。
だが、敵もただ斬られている訳ではなかった。
後ろに身を倒し飛び退き極力被害を抑えようとした。
深くは無かったのか。血が飛び散ったが少量で、彼女が返り血を浴びる事は無かった。
「普通で十分。ボクは人間で、人として、人生楽しんでるよ!」
そう叫んだ彼女は振り下ろした剣を真上に放り投げ、宙で逆手に持ち直した。
「だから、はっきりとッ! 言ってやろう!」
逆手に持った剣をまっすぐに投球した。
剣は回転する事無く切っ先を相手に向けてまっすぐに飛んだ。
「君は、失礼だ!そして……!」
相手の肩に剣が刺さる。
氷で出来たそれは、柄から刺さっている場所に掛けて青白く透き通り、突き刺さった地点から切っ先に掛けて血で赤く染まった。
「邪魔だァ!!」
追加で剣をより深く突き刺し、同時に蹴り飛ばして地面に叩き付ける。
「ぐえっ!」という短く、小さい悲鳴が聞こえたきり。
それきり彼は動かなかった。
「性懲りも無く来る君達が悪いんだからね……。」
立ち止まってボソっと呟いた。
もう一人はただ呆然と立ち尽くしていた。
凪さんがそちらを見やり正面から向かい合うまで。
「さて、もうこの人もう動けないと思うんだけど。早くつれて帰ってあげた方がいいんじゃない?」
彼女は一定の距離を取り、その手にいつの間にか新しい剣を持っていた。
剣が作られるのは一瞬あれば良かった。
一瞬で輪郭が形成され、実体化する。
形として実体化したそれは、氷で出来ている。
冷気を帯びたそれは常に青白い、冷たい霧のようなものに覆われている。
「それとも、まともな武器も無しでボクに敵うとでも?」
余裕を振りまき明確な脅しを掛けた。
「……魔術師め! たとえ敵わなかったとしても!」
棒立ちだった男は警棒を構え交戦に備えた。
凪さんもため息をつき剣を構える。
「こっちは仕事でやってるんだ、メンツがあるんだよ! ウェザードの確保は、こっちの部署の担当でなぁ!!」
喋っている途中に喋る事によって晒す隙があった---。
そしてその隙を見逃してやる程、彼女は相手に甘くは無かった。
地面を蹴り、一瞬で相手に近づく。
剣を振り下ろし警棒をはたき落とそうとする。
しかし、相手もやられてばかりではなかった。
警棒を振り上げて氷の剣とカチ合わせた。
鋼鉄製の警棒はその身を歪ませながらも剣を砕いた。
「うわ!嘘!?」
剣を砕かれ、一瞬無防備になる。
……攻防の立場が変わった。
先行して攻撃を仕掛け、有利になったハズが一瞬で不利になる。
武器の有無。
カチあった時のよろけ方。
彼女の不利は必然だった。
攻めるのは守る事より難しい。
守る方は、攻めて来た相手の行動を見てから自分の行動を決めれるのだから。
---警棒が振り下ろされる。
「情報部になめられてたまるか!! 仕事をしてない、子供が舐めるなァッ!?」
だが彼女は振り下ろされた警棒を素手で手の平で挟み、込むようにして掴み止める。
「……とはいかないんだな!これが!」
ハッと彼女のした行動に気がつく。
刃ではないが白刃取りだ。
鋼鉄製の警棒を白刃取りしたと言う事にも驚いたんだけど。
だって、それ普通無理。やったら手が折れるでしょ。
けど、それ以上に驚いたのが……。
彼女は、掴んだ警棒をそのままヘシ『折った』。
「折れたァ!?」
そう叫んだのは僕だったが。
……黒スーツの男はその場で警棒の折れ口を確認してしまった。
それが彼の敗因だった。
彼女はその明確な隙を見逃さなかった。
体をひねり回し蹴りを繰り出す。
遠心力を付け重く威力のあるその蹴りは、彼のあばらの骨の辺りにぶちあたり、こちらにも聞こえる程の痛い鈍い音を出した。
「簡単にはいかないんだよ。物事はね……。」
新しい剣を作りだし、壁に背を付ける形で倒れ込んだ相手の首に切っ先を突きつけた。
決着だ。
相手に武器はもうない。
さすがに相手に反撃の手段が残ってるとは思えなかった。
「……殺せ。もう武器も、仲間もいない。先に行っておくが、俺はなんの有益な情報も……。」
折れた警棒を投げ出し、呟いた。
今の蹴りはかなりのダメージになっただろうし、何より武器も折れてしまった。
そして今、恋葉 凪は『剣』を持っている。
ふと気がついたのだが、いつの間にか状況が入れ替わっている。
武器を持ち、数でも優勢なのはこちら。
状況はこちらが完全に有利だ。
凪さん1人で黒服2人分以上の戦力があるってことか?
……とすると、僕は黒服何人分だろう。
0,5人分くらいはあるのかな?
……ないかもしれない。
もしかしたら、最悪-(マイナス)まで考えれられる。
そんな事考えていたら、
「あのね、勘違いしてない?」
そういって彼女は氷の剣を投げ捨てた。
「ボクは普通の高校生、女子学生。キミは職業柄、人を傷つけることをなんにも躊躇わないかもしれないけど。ボクはヤダね。」
小さくため息を付いて、彼女は呟いた。
「人殺しなんて、してたまるか。」




