【???】0--【※※】
【コタイノブキ】
【※※※※※※※※※※※】-0-==----??--???
『なんだよ、コレは……?』
------気がつくと辺りは真っ暗で、何も見えない。
何も感じない。聞こえない……。
……僕はどうなった?
確かさっきまで、学校の廊下にいたはずなのだが------。
ここではありとあらゆるものが死んでしまっているようだった。
それは生物に限らず、”存在すべきもの”まで死んでしまっている。
時の流れを感じられない。
空間が見えない。
人の声が聞こえない。
全て死んでいる。
僕自身も”ここ”の影響を受けている様だ。
ここと同質の存在と成ってゆく。
自分の体を感じられない。
感覚が無いのだ。
動かすべき腕が無い。足が無い。
そして動いているべきである、心の鼓動を感じない。
辺りの空気を感じられない。
こんなに、ここまで”何も無い”のは初めてだ。
今の僕は空っぽの器と表現するに等しい。
今の僕になら様々な事柄をありのままに受け止められるだろう。
『……う、ぁ?』
不意に、辺りが明るくなった。
しかし依然として身体の感覚はない。
それに自由も利かない。
僕は、どうなってしまったんだ……?
自分の状態を確認する術が無い。
故に分からない。分からないままでも刻は過ぎ行く。
事柄も過ぎゆく。
『あ……あぁ、ぁ?』
---、刹那。
景色が見える。
いいや、見えているのではない。
僕の中にその景色が流し込まれている。
それを勝手に認識するから”見えている”様に思えるのだ。
感覚がない、体なんて無いはず。
僕には脳なんて無いはずなのに”認識”出来ている。
とても奇妙な体験だ。そして不気味でもある……。
流し込まれた景色は質量を持ち、空っぽである僕を満たして行く。
認識されたそれらの景色は、次の瞬間には消えている。
受け止めた後、一瞬で彼方に流れて消え去って行く。
流し込まれて、浮かんで、僕がそれを認識して、そして消える。
何度となくそれが繰り返されて行く。
……しかし、消えてもそれは僕という器に残っている。
それらは僕の記憶に”刻まれて”行く。
流れ去った後も僕という存在の中に蓄積されてゆく。
草原。岩山。河原。海。町。家。
それらの風景が頭に浮かんでは消えて、消えた後も僕の頭に残り続けて、だから頭がどんどんいっぱいになって行ってゆく……。
『あ、あぁぁ……!ぐ、ぅぅ……!?』
不意に苦しさを覚えた。
もう入りきらないのに、それでも無理矢理入れようとするからだ。
僕は抗う術を持たない。
故に苦しさだけを感じて、それに抵抗さえ出来ず、ただ受け入れるしか無かった。
人が見える。
声が聞こえる。
風を感じる。
人が消える。
声が消える。
風も止む。
人を『思い出す』。
声を『思い出す』。
その中に、仄かな風の感触が残る。
---そう、”思い出して行く”のだ。
最初から”そう在った出来事”を辿って行く。
元から”そこにあった”経験が、次々に僕の中に蓄積されてゆく。
------しかし、思い出したそれらは明らかに”僕”の物じゃない!
------、思い出されたそれら全てが、僕を飲み込もうと迫って来る。
『あ、あぁぁ、うぁ!!!!』
迫って来る迫って来る迫って来る……!!
風景が流れてきて、その風景の場所の風や空気を感じて、そこに居た人を感じて、声を聞いて……!
どの場面でも僕は、いない!
当然だ。これは僕の行った事柄ではない!
だけど、空っぽになっている今の僕はそれ等を受け止め、そして正確に的確に把握して行く。
身体の自由は利かない。
”ダレカ”の視点で、”ソレ”を見ている。
強制的だ。僕はもう辞めたいのに!
僕の記憶じゃない!
僕がしたことじゃない!
なのに、それらはまるで僕がした事の様に、鮮明に僕の記憶に刻まれて行く……!!
『グゥ、ぅぅ!!あ、がァァ……。』
僕の心境や状態など、”彼”は全く考えてくれない。
僕に構わず風景はどんどんと切り替わる。
流れて行く。
まるで風の様に、僕を掠めて流れ去って行く。
まるで風の様に、また次の風景が僕に当たって来る。
しかしそれらは風の様に『”過ぎ”去って』はくれない。
流れて来たそれは、自身が持つ”内容”だけを僕に植え付けて去って行く。
流れて来るそれを一度受け止めたら、どんどんと僕に蓄積して行く。
元々多大に余っていたのであろう、僕の頭の中の隙間を、どんどんと埋めて行く。
あまりに急な速度で詰め込むから、痛い。
……痛い痛い痛い痛い痛い!!!
痛覚を感じる動体が無いというのに、それは痛みだと分かる!
『……あぁ、うぅ!!』
まともな思考なんてもう働かない。
既に、僕に『余った』場所など無かった。
”受け止めたもの”を収容するだけのスペースは、空いていなかったんだ。
”器”は既に満たされようとしている。
……だけど、風景は依然押し寄せてくる。
……だから、風景は『ボク自身ヲウワガキ』し始める……。
『グ、あァァ!!うあぁぁぁぁ!!??』
押し寄せるそれは、元々そこにあった邪魔な”僕”という存在を押しのけて、そこに収まろうとする。
押しのけられる。
器から零れそうになる……!
ダメだ、やめろ……!
ダメダダメダダメ、だ……!!!
『や、ぁ……!』
渾身の力を振り絞って、叫ぼうとする。
声は出ない。
声を出す為の器官が存在しない。
チカラも入らない。
チカラを出す為の体が存在しない。
僕は、僕という存在を証明する為の手段を持ってない。
ここに僕はいない……?
『……、……。』
もともと、僕なんて、いなかったのだろうか。
……もともと、ミヤビギなんて、いなかった?
じゃあ、ぼくは だれだ?
------わか、ラない。
判らなくなる。
全てが崩れて行く。
……クズレて、ゆく。




