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個体ノ武器  作者: 雅木レキ
【自らの意思は…?:雅木葉矛】
60/82

【変化】035【葉矛】

夏休み中は学校見学。そして明日からは学校&受験対策。

愚痴みたいですが、正直時間が足りません。

これから更新回数が少なくなるやも知れません。御免なさい。

受験後、更新の遅れは取り戻したいと考えています。

【個体の武器】

【雅木葉矛】-0-35----変化




 ------駄目だ!!!


 ------、意識が急にぶっつりと”繋がった。

体と頭の配線の並びが元に戻った。

身体を操る権利が再び”僕”に戻る。

僕はすぐに行動を開始する。



 ……振り上げた剣は止められない。

このまま決まれば間違いなく城ヶ崎は即死だ。

戻った思考は反射的にそれを拒んだ。

人殺しする覚悟なんて持ってない!

僕は必至に剣の軌道をずらした。


 剣は城ヶ崎の横っ腹を斬りつける。

少量の血が飛びちり、僕はひやりと肝が冷えた。

だ、大丈夫だ、この程度の攻撃では致命傷には至らない。

剣はちょっと肌を抉っただけだ。

本来のコースを駆けていたなら、城ヶ崎の上半身と下半身は真っ二つに分かれていたのだろうが。


 城ヶ崎は僕から距離を置く。

危なかった。

仮に彼が反撃を試みた場合、恐らく僕はそれを防げなかった。

先程までの強さは、”僕”に戻った時点で失われている。

城ヶ崎が一度行動を停止した。

それを確認して、僕は自身の右手を見遣った。



 ……何故だろう。

僕は剣を握っている。

正しく言うなら”剣の様ななにか”を握っている。

僕の握っているそれは、剣として完全な形をしていない。

赤いモヤモヤとした空間が剣の形をしているだけだ。

剣の輪郭に見えなくは無い赤い霧を、僕は実体として握っている。

そのモヤモヤには実態がある様だ。

しかも剣と大差なく扱える程に鋭い切れ味を誇っている。

直感がそれを告げた。


 ふと、僕は気がついた。

コレは紛れも無く剣だ。

”完全”でないだけで。

不完全なまま発現した剣は、不確かな存在としてこの世に存在を得たのだ。



 ……そのモヤモヤもだんだんと薄れて行く。

僕に”その意思”がないから、不確かな存在は存在を保つことが出来なくなったのだ。

戦いが無い限り兵器は必要ない。



「なん、だったんだ……。」

 僕が、一人でそう呟いた。


 自身の体に何らかの変化があったのは間違い様が無い。

今、完全に僕は自身の体の制御を失っていた。

直前で”僕”に戻ったから良かったものの、そうでなければ返り血でずぶぬれになっていただろう。

想像しただけで生々しい。

……誰が、僕を動かしていた?



「よう、む?どうしちゃったのさ……?」

 凪が心配そうに声を掛けて来る。

答えられない。

僕だって何が起こっているのか……。


 ふと、僕の脳裏に少し前の風景が過る。

凪が城ヶ崎を圧倒していた時だ。

城ヶ崎につららの大群を落とした直後、彼女になんて声を掛けていいかわからなかった。

僕もこうやって声をかければ良かったんだ!

『ナギ?どうしちゃったのさ?』

あの変貌した恐い凪にそうやって声を掛けてやれば良かったんだ!



 ……ああ、やっぱりそんなことはどうでもいい。

思考を戻そう。



 今のはなんだったんだ?

僕は、何をした?

凪の声が聞こえて、全部がスローに見え初めて、それから……?


「下の階に落ちたときだ!その時に触ったもの、詳しくそれの形状を言ってみろ!」

 城ヶ崎が叫んだ。

切羽詰まった様子である。

……触ったものの形状?

鍵、かな?

形状は鍵の様な形をしていた。

僕は城ヶ崎にそれを伝える。



 そして、城ヶ崎は頭を抱えた。

戦闘中一貫して隙を見せなかった彼が、今この瞬間だけ信じがたい程に隙を見せている。

どうやら相当に都合の悪いものを触ってしまった様だ……。

彼があそこまで落胆するなんて。

……いや、さっき殺されかけたけど、あまりに苦悩した姿を見せたものだから少しだけ同情してしまった。

……程なくして、彼は顔を上げる。



「……個体ノ武器《Individual_Weapon's》。」

歯がゆそうに呟いた。



「いんだゔぃじゅある・ウェポンズ?」

 凪が滑舌悪く復唱した。

……確かに言い辛い言葉である。

英語かな?



 ……でもどういう言葉だ?

めちゃくちゃな英語だ。文法とかあったもんじゃない。


『インダビジュアル』。


 確か、”個人”とか”個体”とかって意味だった気がする。

それに、ウェポンズ。つまり、”武器の”?

とするとやはり意味が繋がらない様な……。


 いやいや、直訳で考えるな。

いろいろと考えろ。


 えっと、つまり。

『武器の個体』?違う。

『武器の個人』?意味不明。

『武器は個人』。うん。ヘンだ。

『個人の武器』。……それっぽい?

人が所持している武器ってことか?

いや、武器って普通”誰かが持つ”モノだよな?



個体ノ武器(こたいのぶき)。そうやって呼んでも良い。」

 考え込んでいると、呆れた様に城ヶ崎が言った。

予想は全部外れていた様だ……。

呆れ顔を見る限り、僕の自問自答の内容はお見通しだったようだ。

やっぱり意味が分からなくて考える人多いんじゃないのか?このネーミング。



 ……それにしても、”個体ノ武器”……?

名前を言われてみてもやっぱり意味が分からない。

そもそもそれってどういうものだ?


「何故だ。」

 城ヶ崎は斬りつけられた脇腹を庇いながらも、僕に剣先を向ける。


「何故、お前は平然としていられる!?例え個体ノ武器の力が作用したとしても、何故傷が治る!何故そうなる!?」

 ……どういう意味だ?

そうやって追求されると不安になってくる。

この人はなんで焦っている?

自分が負けそうになったから。

もしくは僕を仕留めれないから言っている訳じゃ無さそうだが。



「個体ノ武器を取り込み、使用がなされた前例はない。」


 城ヶ崎は手に持った剣を構えた。

それに対して僕の体がぴくりと反応した。


 ……ッ。


相手の動きに対して体が敏感になり過ぎている……。

こんなの”僕の集中力”じゃない……。

僕は今、この場の何が動いたって瞬間的に把握出来てしまう程、周囲に注意を向けている。


「何故なら、実験段階で使用者の”人格”が失われるからだ。」


 じ、人格!?

実感は出来ないが、なにやら不吉なことを言い出したぞ?

つまり、今の力を持つと……。

どうなるんだ?

わからないけど、マズそうだ?


「深く意味を考えるな。ただじっとしていろ。今、この場でお前ごと破壊する!破壊してやる。破壊されることが……!」

 城ヶ崎が駆け出す。

早い!

走り出す直後の予備動作も見えなかった。

僕は無防備を晒している。

身構える猶予はない。


「お前の為でもあるんだからなッ!!」

 反射的に体が動いた。

右腕が宙をつかみ……。

違う。右腕は再び”剣”を掴んだ。

視野外に持って行かれた右手の平には、確かに”何かを掴んだ”感覚を覚える。

何か、なんて白々しい言い方だな。

僕には分かっている。掴んだのは”剣”なんだ。



 体を捻り、ひらりと回転する様に働きかけ、その剣を引き抜く。

剣を引き抜くと同時に相手の攻撃にも対処した。


 引き抜き、敵を見遣って構え、剣を振るう。

普段行うだろうこの三つの動作のうち、僕は真ん中の”構え”の過程をすっ飛ばした。

強引な例えかもしれないが、剣で言う構えとは、銃で言うところの相手の方角に銃口をあわせる動作と等しい。

銃程ではないにしろ敵を見ずに剣を振るったところで正確な攻撃は出来やしないのだ。

そのハズなのだ。


 ……だけれど、今回は例外だった様だ。

僕の攻撃は城ヶ崎に当たった。

奇妙な感覚だ。

斬撃を”置いておいた”ら当たった、という感じなのだ。


 僕は、僕の体は相手の動きを完全に把握しているかの様に攻撃を繰り出した。

剣を手に持った後は城ヶ崎の方は視野に入れていない。

剣を振ったら城ヶ崎が”当たりに来た”のだ。


 無論城ヶ崎もただ当たった訳じゃない。

斬撃が当たる寸前で彼は2つの剣を使った防御を試みた。

僕の透明で実態の薄い剣が、彼の銀色の剣とぶつかり合う。

明らかに向こうの剣の方が強そうだ。

モヤモヤとした良くわからない、かろうじて剣の輪郭が見えるこの状態の剣が純粋な鉄とカチ合えるとは思えなかったのだが。


 ……事実、現実は違った。

僕の剣は二枚重ねになった剣、両方を一方的にブチ抜いた。

僕からしたら全く手応えがない。

手に衝撃や抵抗などは一切感じなかったのだ。


 更に、僕は彼の無防備な腹に蹴りを入れた。

ストレートに。

所詮僕の筋力では大したダメージにはならないと思われたのだが……。

流石に防御も何も無しに受けてはそうもいかないらしい。

彼は一瞬硬直し、ダメージに耐えようとした。

完全に動きを止めた。


 剣を逆手に持ち直す。

……この剣のどこからどこまでが柄なのか、もしくは刃なのかがイマイチ分からない。

なのにも関わらず手を傷つけること無く剣の持ち直しは行われた。

頭では分かっていないのに体は完全に剣について把握しきっている様だ。


 逆手に持った後は、それを振り上げる。

”止めよう”とか、そんなことを思う暇さえ無い。

気がついたら既に腕が高く振り上がっていた。


 城ヶ崎は小さな悲鳴を上げ飛び退いた。

彼を掠める様に不鮮明な刃が駆ける。

軌跡を描いても目にその軌道は残らない。

刃が薄い存在であることも関係しているが、それ以上に早過ぎる、それでいて独特過ぎる軌跡を描いているのだ。

見て分かるものじゃない。



「”まだ、続けるのか?”」



 無意識に言葉が出た。

距離を離した城ヶ崎に対して発せられた言葉だろう。

今のは僕が言おうとした言葉じゃない。

でも、僕の口から出た……?

口を抑えたが遅かった。

次の言葉が既に発せられた後だったからだ。


「武器を構えるなら、お前を殺して、終わらせ……。」


 城ヶ崎はたじろいだ。

一方で、僕は必至に抑えた。

心の底からわき上がって来る何かを。




 ------、もう剣は必要ない。

剣のことを極力意識しない様にすれば剣は消える。

また今度もそうだ。

いつの間にか剣は消滅した。

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