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個体ノ武器  作者: 雅木レキ
【自らの意思は…?:雅木葉矛】
51/82

《深刻な状況か……あれ、オレの責任?》26-#2/2《城ヶ崎》

【個体の武器】

【城ヶ崎】-0-26-#----改めて”無力”--《深刻な状況か……あれ、オレの責任?》




 理子が深刻だというならふざけていていい様な状況でもないのだろう。

真面目に考えてみよう。


 警報機は理子が鳴らした。

建物内の味方を『普通の状態』から変える為に。

皆を身構え警戒した状態にしようとしたんだな。

普段と違った出来事が起これば人は警戒心を持つ。

それが過激な出来事だったら尚更だ。

いきなりあんな大きな音が鳴ったら、普段通りにのんきにしていられる方がおかしいだろう。

現にオレも慌てたし、それによって集中力も研ぎすまされている。


 問題は理子が何故警戒心を煽ったかだ。

それだけの事柄があったという事だ。

そしてその事柄はこの建物内部で起こる様な出来事だ。

警報機を鳴らすという方法を考えれば予想はつく。

内部の人間にしか効果がないからな。この方法。


 外を出歩いている仲間がこのビルの火災警報機が鳴ったコトを知ったところで『ふーん』で終わってしまう。

自分に直接関係性が薄いことでは慌てることが出来ない。

それが人というものだ。


 ……だいたいはこんな感じだろう。

考え終わった直後くらいか。

理子は簡潔に説明してくれた。

たちの悪い事にオレの予想は殆ど当たっていた。


「簡潔に言います。6階研究資料保管庫に侵入者がいました。侵入者は現在逃走中です。」


「は?」


 理子の言葉を理解するのに時間を要した。

なんだって?

ここに直接乗り込んで来た輩がいるってのか?

考えを巡らせるうちに1つ、気になる事を思い出した。



 ……そういえば。

確かさっき、菊地聖樹が戻って来ていると聞いた。


 アイツは自分の安全さえ保証してくれればこっちの指示に従うと”アルバイト”を自称していた。

生意気なヤツだったが、強力なウェザードであったしオレの指示にはちゃんと従ってくれた。

クソ生意気ではあったが仕事をこなす能力もそれなりには高かった。

アイツの事は信用していたんだが……。


 ヤツとこの件は何か関係が?

だとしたらヤバい。

俺の責任問題になりかねん。


 ”菊地聖樹”がこの騒ぎと関わっていることはまだ確定ではない。

だがタイミングが良過ぎる。

可能性は高いと見ていいだろう。



「逃走中って、具体的にはどういう?侵入者は把握出来てるのか!?何を盗られた!!」

 冷静さを保つのが難しいな。

なんでオレがここに来たとたんに面倒事が起こるんだ!

オレは苛立っていた。

”研究資料保管庫”なんて機密文書しか置いてないぞ!


 6階にはガードマンとウェザードが複数人待機しているはずだ。

というか、そもそもパスワード無しであのエリアに入ること事態無理なハズだ!

一体何をしているんだ!

何故侵入される!

誰のせいで情報が漏れた!


「城ヶ崎、冷静に。侵入者は”レンヨウ”です。今私が追いかけています。」

 理子の冷静な一言。

それの意味を理解するのにまたもや1秒以上掛かる。

そして、意味を理解したオレは一言呟いた。


「れ、んよう?」


 思考が凍り付いていた。

なんだってんだ。

なんだってそんなことが出来る?

だって、自分たちを追いかけているヤツ等の拠点に自ら攻め入って来るなんて……、そんなの狂っている!

現実にこんな大胆不敵なヤツがいるものか!

わざわざ敵に包囲されに来るなんて、そんな……!


「一応貴方の方からも対処を。お願いします。」


 電話が切った。

俺はその場に立ち尽くし暫く思考を働かせた。


 レンヨウ、恐らく姉妹でせめて来ている。

あの2人は揃って強力なウェザードだ。

同時だったら、相手をするのも厳しい。


 悔やんでも悔やみきれないな。

半年悠長に追いかけていたからこの襲撃を許してしまった。

最初からリスク覚悟でオレが直接出向いていればこんなことにはならなかったのだろう。

しかも、まだ可能性でしかないが”菊地”のヤツもレンヨウと行動している。

もしこれが”現実”だったなら事態は相当深刻だぞ。

情報が漏れたのも恐らく菊地からだと言うことになる。

全部、オレの責任?


 何もしないのはヤバい。

いや、何かしてヤバく無くなる様な状況ですらないのかもしれないが……。

でも考えろ。

 オレに出来ることはなんだ?

この事態はオレが引き起こしたに等しい。

何をやったら最善だ?

どうやって行動したら収まる?


 火災では無かったと伝えること。

 騒ぎを上手く操ること。

 理子が追い易くすること。

 俺自身も追いかけること。


 ……全部やるべきだ。

重要なのは『何をどの手順で行うか』だ。

一番効率的にことを運ばなくては。

一刻を争うことだ。

仮に侵入者を逃し、情報が外に持ち出されたオレの立場が無い。

プライドとかそういった意味でもそうだが、『責任を取らされる』かもしれないじゃないか。

そうなれば、文字通り”今の立場は無い”。


「城ヶ崎君?今の、理子?」

 振り返ると相変わらず研究員が居た。

相変わらずというのは少し違うか。

いつの間にかオレの椅子を占拠し、我が物顔でくつろいでいる。


 コイツの姿を見てたら脳裏にピーンと一筋の光が射した。

確か敏生はここの建物にも良く来ているハズだ。

構造は把握しているはず。

そして今はコイツにも頼りたい気分だ。

実に好都合。


「敏生。やることが出来たぞ。」


 オレは白衣の男を立たせ、ことの次第を伝えた。



==========================================


 敏生に連れられ放送室に連れてこられた。

業務連絡などをここで行える。

そして電力関係の制御室も兼ねている。

……ここは表向きには”ショッピングセンター兼販売業者のオフィス”だからな。

この建物を建てるときも、建設を依頼した会社を欺くために2つの部屋を別々に作らせた上で後から部屋をここに纏めたらしい。

いちいち『この部屋は何の為の場所だろう』とか思考されるのを避ける為だとか。


 全く無意味だ。

建設業者がそこまで深入りするか!

まぁ、お陰でオレの移動の手間も省けたのだが。


 総合情報統制室なんて豪勢な名前がついたその部屋の内部は、非情にごちゃごちゃとして息苦しいだけだ。

見渡す限り機械機械機械だ。

無数のランプがチカチカと点滅していてめまいがする。

全てに何らかの意味があるんだろうが、俺には何がなんだか分からない。

部屋にいる担当者は3人。

3人でコレだけの機械を動かしていると思うと圧巻だな。


 オレは部屋に入るなり、この時間担当していたヤツ等にことの次第を説明するところから始めた。

そりゃもう、まず俺が普通に社員であることから説明したとも。

子供って面倒だな。

外見だけで判断されて”子供が入って来るな”と邪魔者扱いを受けるんだ。


「そういう訳だ。伝える対象はガードマンとウェザードだけだ。階層を限定して放送を流すことは出来るのか?」


 一般社員にまで火災が誤報であることを伝える必要は無い。

特に4階の社員達は上の階で何が起こっているのか知りもしないのだから。

知らぬが仏という言葉もある。

自分たちの頭上で繰り広げられている国家級の機密など知らないでいた方がずっと平和に過ごせる。


「可能です。そういう部屋ですからね。ただし音漏れして下の階に放送が聞こえてしまうかもしれまんが、今から行いますか?」


 音漏れする程度の建物なのか?そうなのか?

……まぁ、この階は火災がどうたらの騒ぎでとんでもなく”にぎやか”だ。

この部屋に居ても外の様子が手に取るように分かる程に騒がしい。

皆焦って絶叫しているのだ。

先程の連中は批難指示優先で社内の人間の心までカバー出来ていない。

混乱は拡散して行く。

ま、一般の社員に期待しすぎるのもアレか。


 ともかく、この階の連中は必至だ。

上から漏れて来た僅かな声を聞くだけの集中力は持ち合わせていない。

いないと信じたい。

信じよう。

オレは首を縦に振った。


「では、今から取りかかります。」


 担当者はそう述べ、早速無線機と向き合った。


 ……ここは4階だが、この部屋に居る連中だけは上の階の事情を把握している。

ここを担当するヤツだけちょっと飛び抜けてエリートなのだ。

優秀な者は機密を知る権利を与えられる。


 危なっかしいモノに関わらない方がいいのは確かだ。

だが、それに関われば給料がグンとあがるとなれば?

飛びつくヤツはいるのだ。


 コイツ等は平和で安定した生活よりも給料を取った連中だ。

『いざという時』に保証は無い。

会社が一回でもミスったらコイツ等の生活はとたんに危うくなる。

いろいろと”知っている”からな。

まぁ、普段は普通に生活出来ていることを考えれば追いかけ回されているウェザード達より安定した生活を送っていると言えるか。



「……そうだ。エレベーターを止めれるか?」


 ふと、いい考えが浮かんだ。

エレベーターを止めれればレンヨウ姉妹が下に向かう手段は非常階段しかない。

エレベーターさえ動かなければ逃げ道を絞れる。

理子にとっても都合がいいだろう。


「可能ですが、一般用と兼ねているのでちょっと問題があるかなって……。」

「……欠陥が見つかったのでメンテナンスを行う。良くある話しだろ。」


 担当者は怪訝な顔をした。

おっと、面倒くさいフラグか?


「それほどまでに重要なことが起こってるんですか?」


 案の定説明を求められる。

当然と言えば当然か。

この執拗さを見れば、誰だってちょっとくらい疑問が浮かぶ。

そして浮かんだ疑問は質問として発言したがるのが人というものだ。


「ああ、重要なことが起こってるんだ。やってくれ。」

 詳しく聞かれる前に答える。

それが面倒にならない為の秘訣だ。

この場で詳しく聞かれれば『機密文書を持ち出された』なんてことを説明せねばならなくなる。

……聞かれても説明する気は無いが、それではこの人物の疑問が残ってしまうからな。

疑念、雑念が残るのは宜しく無い。

作業効率も落ちるだろうし、何より”知りたい気持ち”はその人物の身を滅ぼしかねない。


「出来ました。エレベーターは動きません。」

 担当者はしてやったり、と言った顔をこちらに向けて来る。

男のそんな表情に需要は無いよ。

仕事が速いのは認めてやるが。

俺はそっぽを向いて、その先に敏生が居た。


「敏生、お前はここに居てくれ。問題が起こったらそれに対処して欲しい。」

 指示を出しておこうか。

何も言わずにここを出たらついて来てしまいそうだ。

戦闘になることも考えられる。

戦闘が行われているところに非戦闘委員が居ては、普通に危ない。


「分かった。僕はのんびりここでサボってるよ。」

 ……オレ以外の何人かが居る前でその発現は迂闊だと思うぞ、敏生。

オレは踵を返し出口に向かった。

アイツはここに居れば安心。

恋葉姉妹も流石にここまで深追いはしてきまい。




 ------、さて。ここでやるべきことはやった。

後はアイツ等を追いつめるだけ。


 俺は非常階段に向かう。

楽な仕事だ!

オレは非常階段を昇って6階に行き、出入り口で待ち構える。

下に降りるには非常階段以外に手段は無いからな。

 すると理子に追いかけられて逃げてくるレンヨウを挟み撃ちに出来る。

そうしたら後は簡単。

縛って研究室にどーん!

任務完了。騒ぎは治まり俺の給料は上がる。

理子が上機嫌になるのでなんとか機嫌を崩す。


 ああ、実に平和的終幕だ。

後は敏生達の出番だろう。

勝手に研究なりなんなりすればいい。


 彼女等レンヨウもそれで良いのではないだろうか。

実験が終わったら(監視付きとは言え)元の生活に戻れて二度と黒服に追われることは無い。

実験の後、ウェザードは世に戻して(・・・・・)いるのだから。

皆幸せになれる最高の終わり方じゃないか。


 やはり余裕だな。

あまりに余裕がありすぎて、道中カンコーラを購入してしまう程だ。

先程から続く過度な緊張感を紛らわす良い材料になってくれた。

仕事中に飲むコーラは旨い。




 ……ただ、疑問もある。

コーラから口を離したオレは、唐突にその疑問について考えだした。

前々から気になっていたことだ。


 前々から思ってはいたんだが、実験って”具体的には何やってるんだろう”な。

凄く気にはなる。

『他の班の行動や活動内容は基本的には把握出来ない』からな。

理子はそんなの無視してズガズガ他班に探りを入れて来るが、アレはアイツがマナー違反なだけだ。


 確か、能力の強さの研究とかって言ってたっけ……。

レンヨウナギの、マルチタイプの能力、威力の測定でもするのだろうか。

力の強さなど測って新しく分かることがあるのか?



 ……やめだ。

オレが考えることじゃない。

与えられた役割をこなす。それだけでいい。

疑問に思うのはいいことだが、それで立ち止まっていてはどうしようもない。

オレはからのコーラ缶を握り潰した。


 ------、非常階段についた。

4階の社員達はせっせと下に向かうが、その中を飛び抜けオレだけは上に向かう。

5階以上の階からは誰も降りてこない。

何故ならことの次第を知っているからだ。

理子の部下は情報伝達係でもある。

既に上の階には情報が行き届いていて、警戒中真っ只中だろう。


 誰も上からは降りてこない。

そう思って、ひたすら階段を上っていたんだが……。

5階の扉に迫ったときだ。

……その扉が開いた。


「------ともかく、下に行こう。誰も居ない今こそがチャンスなのだからな。」

 聞き覚えのある声がした。

ことの次第が分かった。


 泣きたくなるな。

そうか。やっぱり俺の責任か。

菊地聖樹。少し信用し過ぎたかな。

こりゃ、裏切られたな。


 ヤツにはカードキーを渡してある。

この階を歩き回れるのも当然だ。

情報を把握させる為に無線機も用意した。

それを使えば6階の味方にパスワードのコードを教えることも出来ただろう。

どうせ、一般人には絶対に聞こえてないと油断したヤツが通信中にポロッたんだろう。


 消去法で考えても、アイツが裏切ったことは明らかに思える。

他に条件に該当する人物がいないのだ。

『レンヨウと接触している。』

『5階層を歩き回れる。』

『パスワードを知り、他のメンバーに知らせることが出来る。』

『ここ数日オレの目が届いていない。』

さて、全てに都合良く当てはまる人物を考えると、やっぱりアイツしかいない。



 犯人が分かったとたんやるせなさがこみ上げて来た。

怒る気にもなれない。

完全にオレの判断ミスだ。

判断を誤ったからこの事態までことが発展した。

聖樹という人物を信用し過ぎた。

オレはコイツが身の安全を考える限り、絶対にオレとは敵対しないと考えていたんだが……。


 この後責任問われるんだろうなぁ。

それを考えると怠くなる。憂鬱だ。

だが、いくらやるせなかろうが怠かろうがコレはオレの撒いた種だ。

自分でケリをつけねばらならない。

義務感に苛まれオレは”処理”を開始した。


「こんにちわ、裏切り者さん。」

 オレの声に反応して向こうがこちらに気がついた。

構う物か。ここはこっちの本拠地だ。多少派手でも構わない。

素早く懐から拳銃を取り出し、引き金を引いた。

うわああああああ!!!

前の話しUP忘れがあったああああ!!!

明日の分はそれのUPで勘弁して下さい!ごめんなさい!

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