【とにかく、今は分からない!】005-1/2【葉矛】
どうにも心理描写って書き辛くて……。
書けないものにチャレンジした結果がコレです!
お見苦しいものですが、どうか見てやって下さると嬉しいです。
【個体ノ武器】
【雅木葉矛】-00-5----とにかく、今は分からない!
さて、なにから話そうかな?
まぁ、長引かせても仕方ない。
結果だけ先に言わせて貰おうかな。
---僕は今、”恋葉 凪”の家にいる。
横に凪さん、目の前には翼さんが椅子に腰掛けて僕と向かい合っている。
翼さんと机を挟んで互いに無言で時間を過ごす。
翼さんは掌に収まるサイズの本、多分小説だろうか?
それに目を落としている。
先程からこちらに見向きもしない。全く相手にされていない。
……僕は何故呼び出されたのだろうか。
そもそも呼び出される理由などあったのだろうか。
そうやって考えてしまう程に彼女はこちらに興味を示さなかった。
彼女の外見的特徴は三日前あった時から変わらずだいたい同じだ。
違いを述べるなら、今の彼女は眼鏡をかけている。
やっぱり、こっちが僕の知っている方の”レンヨウさん”だ。
無言で本を読んでいるだけだが、その姿はなんだかそれっぽくて様になっていた。
……それはそうとだ。
……心境を話すと、僕は今すぐにでもここを離れたい。
先程からそんな衝動に駆られている。
この無言の空間にいる意味などあるのだろうか?
この2人は姉妹、家族だ。
そんな中に僕なんかが立ち入ってていいんだろうか?
……とても気まずい。
気まずい”だけ”だ。有益なことなど何一つ無い。
明らかに僕だけこの場ではアウェイな存在になっている。
------、今から40分程前の話しだ。
駅前から移動した僕たちは、まっすぐ僕の家に向かった。
……と思った。最初は。
方角的にはそう考えられた。
公園に向かったのかとも考えたけれど、そこは通り過ぎたんだ。ちなみに公園にはもう誰もいなかった。
ちょっと考えれば判る事だが、凪さんは翼さんの妹さんな訳で、僕の家の場所を知ってても違和感は無い。
翼さんは先日、僕を家まで送ってくれたのだ。
だから翼さんが僕の家を知っているのは普通のこと。
そういう様に考えるのが普通な状況だった訳で、尚更そう思えたのだ。
……それで、間違いに気がついたのは僕の家を通り過ぎたところから。
場所を間違えたのだろうか?
目的地を知らされていなかった僕は一瞬だけそう思った。
凪さんにはただ『姉さんのところに行く』とだけ伝えられていたんだ。
今にして思えば『自分の家に美人な先輩が訪ねている』などと少しでも考えた自分が恥ずかしい。
僕の家を通り過ぎた直後、その時僕は呼び止めようとも思ったのだが、彼女は悠々と僕の前を先導する。
だから何も言わずそのままついて行くことにした。
先導している彼女はとても堂々としていて自信に溢れている様に見られたのだ。とても頼れる。
結局、彼女は場所を間違えてなどいなかった。
もう察しているだろうが、僕が案内されたのは彼女こと”恋葉 凪”の家だったんだ。
彼女の家の場所は僕の家からそれほど離れていなかった。
具体的に言えば5分程。
僕の家から歩いて5分で着ける距離にあった。
彼女は僕の家と同じように仮住まい、正確にはアパートの一個部屋を借りて過ごしていた。
僕はよく思うのだが、学生が住むにはコレくらいで丁度いい。
部屋は小さくていいし、いろいろとごちゃごちゃとあって無駄にだだっ広いのも考えものなのだ。
……のだが、それにしても彼女の部屋に無駄なものは一切無い。
周囲を見渡して目に入る物体は---・
勉強用の机。
キッチン。
押し入れ。
椅子。
料理などを食べる為に多用されるであろう、机。
どうやら別の部屋は無い。
トイレと風呂を覗いてだ。
あ、それと小さいテレビが部屋の隅に置いてある。
凄く生活感が出ている部屋だ。
……建物自体が古い印象を与えているためか綺麗な部屋とは思えない。
だが掃除などは行き届いており、レンヨウナギという人間の生活力が伺える。
その他にはベランダがある。
物干竿があるが、今は洗濯物も何も……。
「ちょっと雅木君? 何を見てるのかなー?」
椅子から飛び上がりそうになるが、なんとか堪えた。
隣で凪さんが目を細めてこちらを見ている。
何食わぬ顔で”ベランダに何かあるか”なんて見ていたのだ。
そういうことに関しては、全く意識してなかった……!
「い、いや、なにも。なにも見てないです。ホントに……。」
「……ふぅ~ん? ま、いいけどね。」
彼女はわざとらしく声大きめに発し、僕から視線をそらす。
それから自身の姉に向き合う。
……助かったとは思えないんだけど。……今の反応は。
ベランダに何も無かったからこれで済んだのかもしれない。
ラッキーだと思うとしよう。
……ん? ベランダに”何か”あったらそれはそれでラッキーだった、かも?
---自分の頬を軽く抓った。
何を考えているんだ僕は……。
「それで姉さん?姉さんの予想通りこうなったけど。話しがあるんじゃないの?」
無言を断ち切って凪さんが、話題を切り出す。
時刻は五時半になろうとしていた。
ファーストフード店を出たのが、さっきも言ったかもしれないが今から役40分前のことだ。
そしてここについたのはだいたい15分前。
家についた時点で既に翼さんが家に上がり込んでいた。
その時から翼さんは手に持った本に目を落としていて、こちらを見ようとしなかった。
凪さんにいわれるまま椅子に腰掛け、会話も無く今に至る。
つまり僕は15分間の間、全くの無言で過ごしていた。
同じ学校に通う二人の女子生徒と一緒に。
……仮にコレをリア充だと言う人がいたら僕は認めない。認めたく無い。
リア充はそんなものじゃないはずだ!
もっとこう、なんというか、暖かいものでなければならないハズだ!
……きっと妙に意識し過ぎなのはきっと僕だけなんだろう。
恋葉姉妹は全く動じていない。
もうちょっと落ち着けよ、冷静になれ……。
僕がここにいる理由は割と悲劇的なものなのだから。
「……そうね。話しがあったから、わざわざこうしてナギの家を訪ねたの。」
読んでいた本に枝折を挟み、こちらに向き直る。
その際に彼女が行った動作一つ一つに、なんというか気品みたいなものを感じた。
それ等はさりげない動作だった。
眼鏡の位置を少し直し、目にかかった前髪を手で直し。
そういった何気ない動作一つ一つを注目して見てしまった。
……言っておくけど下心とか、全く無かったからね。
そういう目で見ていた訳じゃない。ただ鮮麗されたその動作、姿にちょっとだけ……。
「まず、雅木君。」
いきなり名前を呼ばれて、びっくりした。
椅子から落ちそうになるのをなんとか堪える。
彼女は背筋を伸ばしてこちらを向いていた。
「貴方に謝っておきたい事がある。巻き込んでしまって、本当に申し訳ないわ。」
そういってまず彼女は頭を下げた。
そしてこちらを向き直る事無く、頭を下げたまま続けた。
「あの時間帯。まさか誰かいるとは思わなかったの。私の不注意で巻き込んで、本当に御免なさい……。」
僕は慌てて反論しようとした。
なにも悪く無い、そう思った。
覗き見したのは自分なのだ。
「そんな事ないです! 僕が、僕がただ……。」
好奇心に負けて------。
そう続けようとしたが、翼さんに手で制された。
顔を上げ、手に持った本を机に置いて、彼女は立ち上がった。
「いえ。これは完全に私の不注意なの。自身がウェザードだってバレたく無いなら、私たち自身が気をつけなければならないのに。ナギも。私のせいで雅木君に正体をばらしちゃって。御免ね。」
凪さんは特に気にする様子も見せなかった。
左目を軽くつむり、軽くため息をついてみせた。
しかし表情は至って明るい。
「ま、しょうがないでしょ? 元々、姉さんが狙われたのだってボクのせいな訳だし?」
翼さんが立ち上がったのは、どうやら飲み物を取る為だった。
グラスを三つ。それと大きめのお茶入りのペットボトルをそれぞれ取り出し、席に持って来る。
「そうは言ってもね。……そもそも、それの真偽は定かではないのだし……。雅木君、ナギからどれくらい聞いた? 彼等の事を。」
彼女は、ペットボトルのフタを開けた。
三つのグラスにそれぞれ大体同じ量のお茶を注ぎながら僕に話しかけた。
それぞれにお茶を振る舞う。
僕の前にも一つグラスを置いてくれた。
「あ、ありがとうございます……。」
素直にグラスとお茶を受け取った。
そのまま一口飲む。
……今日は沢山走った。
ここまで緊張感を持ちながら走ったのは初めてだ。
お茶を飲んで改めて確認したが、僕は大分喉が乾いていた。
このお茶はありがたい……。僕の口の中の乾き、喉の渇きも大分潤った。
いろいろあった後だとこういうお茶などのさりげないものがとても素晴らしいものに感じる。
大げさに言っている様に聞こえるかもしれないけど、これは本心だ。
「……なにも具体的には説明してないよ。姉さんの口で、1から説明してあげた方が良いと思うけどな?」
僕が答えるまでもなく凪さんが答える。
一応、僕も分かる事はあるんだけど……。
最初から同じ話しを聞くのか……?
……あぁ、また一から聞くのも良いかもしれない。
状況が状況だ。
何かを見落としているかもしれない。
一度状況を整理しようと考えて、僕は敢えて何も言わなかった。
「……分かった。じゃあまず、雅木君? 奴らが狙ってるモノ、なんとなく何なのか分かるんじゃないかしら?」
翼さんが口を開く。
僕はそれに頷く。
流石に鈍くてもそれくらい予想出来る。
狙っているもの。
それは------。
「ウェザード、ですよね?」
今度は翼さんが頷いた。
……翼さんを襲っているときも奴らは『魔術師』って言葉を使っていた。
最近話題に上がっているからってのもあるだろう。
僕の頭に浮かんだのは『ウェザード』の存在だった。
凪さんがさっき見せた氷。
アレもきっとその能力なんだ。
彼女の反応を見てから、僕は続けた。
「僕はウェザードじゃないけど、翼さんが戦ってるところを見たから、それを見た僕を消そうとした。……ってことでしょうか?」
そこで一度息をついた。
そして、自分が言った事の重大さに気がついたのだ。
先程まで、僕はあまりにも能天気だった。
凪さんと翼さん。
2人の女子と同じ空間にいて、少なからず浮かれているところがあったかもしれない。
けど、少しだけ冷静に考えてその感情は消し飛んだ。
自分の言ったことの意味が、どうにも引っかかったのだ。
危ない目にあっているのは分かってる。
だけど、どう危ないんだ? 僕は?
……僕が”消される”?
『……消そうとした……? 消される……?』
この自分で放った発言で、自分の状況を改めて思い知った。
僕は今、なにを言った?
---もしかして僕は、命を狙われたのか?
”消される”って……。
それって? どういう意味?
------消す?
------殺す?
------死ぬ!?