【分からない事だらけ】004-2/2【葉矛】
さてさて、今回は前回より長いです!
……いつも一気にどばっとかいちゃって、『この文量どうすんだオレ……』ってなるんですよねぇ。。。
2分割した後半です。
どうかお楽しみください。
【個体ノ武器】
【雅木葉矛】-00-4-2/2----分からない事だらけ
「……それで雅木君。」
---それから。
廃墟から移動して十五分後。
「ボクはお腹すいてないし、軽く菓子パンかなにか頼もうと思うけど。……君は何がいい?」
「……オレンジジュースでいいです。」
縮こまって謙虚に答える。
凪さんはお腹が空いていないにしてはなかなかヘビーなものを頼むんだな。
「敬語禁止。」
人差し指と、中指でびしっと僕の眉間を指しながら、彼女はそう指摘した。
僕は、いや僕たちは、駅周辺にあるファーストフード店に移動していた。
午後4時半程になろうとしていた。
稀鷺等の部活のある面々はまだ下校していないんだろう。
……それにも関わらず、平日でもファーストフード店はそれなりに賑わう。
周囲を見渡せば、僕と同年代程の学校帰りらしき生徒を見かける。
この時間帯にこんなところにいる様な、そういう人は大きく分けて二つの部類に分けられる。
まず一つ目は、大人しげで人に意見出来そうに無い……。学校でも目立たって無さそうなタイプ。
悪く言えば虐められっ子だったり、存在感の無い人だったり。
……分類するなら僕はこちら側の人間だろうね。
二つ目。
髪を染めたり制服を崩して着ていたり。学校でもいろいろな意味で目立つタイプ。
偏見かもしれないが、僕はこういう人たちはちょっと苦手だ。
怖いんだよね……。なんか……。
でも、多分こういう人たちは僕以上に人生を満喫しているんだろうなぁ……。
上記二つ。それと他に、どちらにも属さずに関係なくいるのが『リア充』だ。
2人組の男女は時と場合を考えずにその場でいちゃつく物だ。特に僕と同年代のヤツ等にはその傾向が強い。
簡単に周りを見ただけで、三組くらい目に入って来た。
コイツラ、こんな時間になにやってんだろうね。
2人揃って仲良く部活サボリですか。それは結構。
……部活行けよ。
……宿題やれよ。
……帰れよ。
……寝ろ。
僕だって平日は部活やっていないけど、それは平日の間は大半の日がバイトで埋まっているからだ。
食費とかはある程度自分で稼がないと自由がない。
僕みたいに別に家を借りて済んでいる様な人間は特にそうだ。
おこずかいではとてもじゃないが何かとお金のかかる高校生活を賄えないのだ。
……今日はバイトも休みだった。
こういう日は本来なら家に直行して寝ている。
暇だからと言ってこういう店に立ち寄ったところでいい思いをする事は少ないのだ。
僕はいつだって賢い選択をするのだ。
……じゃあ僕は、なんでここに来ちゃったんだろう。
「……凪さん、どうしてここに来たの? まだアイツ等が来てるかもしれないじゃない? 食事なんて場合じゃ無いんじゃ?」
注文を取り終わって頼んだ物が出て来るのを待つ。
僕としてはのんびり何かを待っている気分じゃなかった。
僕はオレンジジュースを、彼女はぶどうジュースとパンケーキを頼んだ。
こうしてジュースが来るのを待ってる間でさえもどかしい。気が気でない。
常に動き回っていたかった。
町中を歩き回っていれば捕まらない様な気がしているのだ。
……というか、この場の雰囲気が嫌でさっさと出て行きたかった。
五月蝿いしいちゃつくしムカつくし!
「まぁまぁ雅木君。そうやって焦っても人生いい事は無い。落ち着く事も必要なのさ。」
凪さんは、この非常時でもとても落ち着いている。
……なんか、凄いなぁ。
ちょっと感心してしまう。
男子である僕が取り乱しているのにどうしてそんなにのんびりと構えていられるのだろうか。
僕が心配し過ぎているだけなのだろうか。
なんだか少しだけ恥ずかしくなった。
---さて、注文した料理が来た。
”当然”ここは僕が品の乗ったトレーを持つ。
「あ、あそこ。席空いてる! 座ろうよ!」
「う、うん。」
凪さんは空席を見つけると嬉しそうにぴょこぴょこと跳ねた。
その拍子に長く束ねた緑髪が揺れる。
……ふと、思わず見遣ってしまったのだが、決して悪意はないのだが……。彼女の胸元は全く”動じなかった”。
言われるがまま、しかし躊躇いがちにトレーを席に置く。
……うん。ちょっとだけ緊張している。女子と1対1であるこの状況は僕としては修羅場同然だ。
しかし、今のコトの重大さの余りにそれを気にする余裕すらなかった。
ここにきてやっと余裕も戻って来たかな。心持ちも落ち着いて来た様に思える。
そして椅子に座った時、初めて自分がどれだけ疲れていたかを知った。
------極度の緊張状態。
------ぶっ続けでの危険回避。超展開。
------この三日間の出来事から来る、警戒心。
------そして何故か高揚感。
その全てが押し寄せて来た。
座ったとたんに余計に足が笑い出した。
先程歩き始めてからはそれは止まっていたのに、こうやって落ち着いたとたんにまただ。
意識してもいないのにため息が出た。
体から力を抜けた。
疲れている時に力んでも持続は出来ないからね。
今は身体がしたいようにさせる。無理なくなるべく自然体でいる様に身を任せた。
ここまでどれだけ体を強張らせていたのだろう。
溜まった疲労感が押し寄せて来ている。
暫くここから動きたく無い。立ちたく無い。座っていたい。
「一息、つけたかな?」
そう僕に語りかけながら凪さんが目の前の席に座る。
「あ、うん。大分ね。でも暫くは動きたく無いよ……。」
彼女は笑った。
自身の頼んだパンケーキを一つ摘む。
ちなみにパンケーキは5個入りだ。
「暫くは動かないから、今はゆっくりしてるといい。どうせ五時まで動けないからね。」
凪さんは、パンケーキを美味しそうに頬張っている。
僕もオレンジジュースで喉を潤す。
……ただのオレンジジュースなのだが、普段飲むより美味しく感じる。
口の中が完全に乾いていた。
気にもしなかった事だが、かなり喉が渇いていたみたいだ。
一回口を付けただけで、半分以上飲んでしまった。
「五時になにかあるの?」
もっとジュースを飲みたい誘惑をなんとか抑えて、ストローから口を離した。
この調子で飲んでいたらここを出るまでにもう一度注文に走らなきゃいけない。
「五時までボクに付き合ってくれたら分かるさ。それよりも。」
彼女は少しだけ、身をこちらに乗りだし表情を変えた。
その上で周囲を見渡す。
彼女は至って真剣そうに。
……躊躇いがちに口を開いた。
「自分が狙われた訳。なんとなく、分かるよね?」
------僕が狙われた訳。
分かる気がする。
分からないとダメなんだ。
狙われたのは僕なんだから。
心当たりを考えろ。
……当然ながら、心あたりなんて三日前しかない。
他に僕が狙われたりする理由など、思い浮かびもしない。
「僕が、ツバサさんが戦ってるのを見た、から?」
……真剣そうな彼女の表情を目の当たりにした僕は、その表情、雰囲気に呑まれかけたが、なんとか呟くように口にした。
「ん、そう。だいたい正解。」
もう一つパンケーキをついばみ、彼女は続ける。
表情はそのままに。
パンケーキを食べる少女の顔としてはあまりに深刻そうだ。
行動と表情が不釣り合いだ。
それはシュールではあるが、笑えない。
それだけコトは深刻なのだ。
「夜に外に出歩いている高校生なんて、そうそういないと思ったんだろうね、姉さんも。見られてるなんて考えてなかったって言ってた。」
なんと返して良いものか。
それは、僕を責めているのだろうか。
『見られた』って言ったって、僕は悪気があった訳じゃない。
それは、だって。
『なんとなく』だったんだよね。空いてる扉があったら覗いちゃう感じで……。
出来心だったんだ。
もちろん、そんな言葉を話す気にはなれなかったけど……。
言い訳しても見苦しいだけだ。
……本日二度目の言い訳はしない。
先程、この件に関する言い訳をしてなかなかに苦しい思いをしたばかりだ。
「……話しを変えるけど。」
なにも言い出せずにいると彼女の方から話題をそらしてくれた。
もう少し頑張ろうよ、僕。
「アイツ等って一体誰だと思う? こうしてボクや君、姉さん。特に有名人でもない一般市民を狙う奴らがどういうヤツなのか、ちょっと考えられるかな?」
奴らの正体?
……僕が知る訳が無い。
ウェザードがどうの言ってたけど。
それだけじゃ一体アイツ等が何がなんなのか決めつけれる訳ない。
……確定は出来なくても予測は出来る?
「……分からない。けどなんか、警察関係者みたいなこと言ってたんだけど……。」
あの時。とっさに僕は奴らのその発言を否定した。
……頭の中で。
アイツ等の言葉は信用なんて出来なかったけど、仮にもし本当に警察関係者だったらどうなのだろうか。
だとしても胡散臭かったのは事実だし、印象だけは僕の中でも変わらないだろうけど。
……急に頭に浮かんだ疑問は僕を不安にした。
仮に、本当に警察とか国の機関だったら……?
「フフッ。それは面白いことを言って来たね。だが、それはないさ。」
僕のネガティブな思考を断ち切ったのは凪さんだった。
彼女は口からストローを離し、ぶどうジュースをトレーに戻すところだった。
そのまま続ける。
「仮にアイツ等が警察とかそういう機関だったとして、連行対象が抵抗したからっていきなり銃撃つ様なヤツは即刻クビだろう? 相手は少年な訳だし。」
……確かにそう、なのかな?
少なくとも、この言い分は僕に対しては説得力のある説明だった。
……僕のイメージでは日本警察はそこまでアグレッシブでない。
「それに君は気がついてなかった様だけど……。さっき逃げていた時、奴等は駅前で人ごみに紛れようとしたその時点で間近まで迫っていた。人目を気にせず仕掛けれる立場だったら町中で仕掛けてきたさ。」
「そ、そうだったの?」
驚きを隠せない。
僕だってそこそこに後ろを気にしながら逃げてたはずなのに……。
いや、凪さんを見失わないので一生懸命だったけど。
……それにしたって全く気がつかなかった。
「……ん、それはそうと休めたならちょっと移動しない?」
急に彼女は切り出した。
なにやら、周りをキョロキョロと見渡している。
「ここに来ようってのはボクの提案だけどさ、なんか落ち着かなくて。」
僕は全くそんな事無いのだが。凄くリラックス出来ているのだが。
そういわれてみて僕も周りを見渡す。
------ふと、僕と目があった人がいた。
目があってすぐ、視線をそらされたが間違いない。
東紅葉高校の男子生徒制服。
その人に見覚えがある。
名前も覚えている気がする。
確か和弥君、だっけ?
彼は稀鷺と同じクラスのはずだ。
直接話したことは無いけれど……。
彼はどちらかというと『前者』に分類される人間だ。
話したら仲良くなれたりしてね。
「……五時にはまだ早いけど、そろそろ移動してもいいと思うんだ。大分、時間は潰せた。」
そういって席を立つ。
僕は和弥君からは目を離した。
「移動って、今度は何処に行くの?」
彼女がトレーを持とうとしたので、素早く僕が持ち上げた。
こういう場面で女の子に後片付けをさせる程世間知らずじゃない。
……僕もなかなかの紳士だな。うん。
自画自賛し、満足して立ち上がる。
そして身体の状態を確認する。
大分休めた様だ。もう足も笑ってない。
忘れ物も無い。
喉も大分潤っている。
口は乾いていない。
この短時間の間に身体は凄く休まった様だ。
凪さんと話してリラックスして過ごせたのもあるだろう。
「姉さんのところにね。もしこういう様になったら必ず来るようにって言ってた。」
こういう様にってのは、多分僕がこうして『襲われたら』ってこと?
翼さんは僕が攻撃されるのを分かっていたのか?
「……そういう事だから。もうちょっとだけ付き合って貰うよ、雅木君?」
考えるまでもない。
僕は彼女について行く事にした。
それ以外に選択肢が浮かばなかったのだ。
さてさて、12話分書いて過去を振り返ると、どうにも私の表現力の乏しさが目立って来ていますね……。
ちょっとお恥ずかしいです。。。
宜しければ、評価や感想をお聞かせ下さい。
励みになりますし、より良く改善出来る切っ掛けにもなるかと思うので、是非積極的に宜しくお願いしますです!