【分からない事だらけ】004-1/2【葉矛】
またまた2分割。
そして非常に切り方が……。
前半は今までで一番短いレヴェル!
【個体ノ武器】
【雅木葉矛】-00-4----分からない事だらけ
「さて、雅木くん? 出て来ていいよ?」
戦闘は終わった様だ。
気がつくと辺りには建物内には静けさが戻っている。
……周囲の状況を見る。
戦闘が起こる直前と殆ど変わらない。
強いて変わっているところを言うのなら、氷で出来た剣がいくつか落ちている事。
折れた警棒が落ちている事。
それと(銃を持っていた方の)黒スーツの男が倒れていたところに血溜まりが出来ている事。
敵対していた二人組は既に撤退した後だった。
警棒を持っていた方の男は、剣が突き刺さって気絶して完全に動けなくなってしまった相方を担ぐと無言で出て行った。
その様子を彼女はただ見ていただけだった。
「あ、あの……。」
「姉さんみたいには、やっぱりいかないな……。」
二人が出て行った出入り口を見やっていた凪さんは、そういってこちらに向き直る。
凪さんは頬を擦っていた。
距離があって気がつかなかったが、よく見れば頬に一筋、切り傷が出来ていた。
「ナギ、さん?その怪我……」
彼女はため息をついた。
少女は手の甲で傷をこすって血を拭う。
傷は浅くて、強い痛みこそ無さそうだったけど……。
「一発ね、思いもしないタイミングで撃たれたときがあった。あれくらいなら避けきれると思ったんだけどな……。」
肩を竦め、力なく笑う。
その表情は、ちょっと脱力した感じだった。
アレくらいって、銃を向けられたってのに随分とあっさり言うんだな。
……さて、僕は何処からツッコめばいいんだ?
生身で弾丸をかわしたところ?
氷の剣を作ったところ?
……それとも一人称?
いや、それより知りたい事がある。
「僕を助けて、くれた?」
そう。
それが重要だった。
唐突過ぎる展開。突然の危機。
彼女が一体どういう事を考えて僕を助けてくれたのか分からない。
だけど、僕を助けてくれたのは事実なんだ。
「本当、えっと、どうして助けてくれたのか分からないけど……。とにかく助かった。ありがとう。」
「そうやってめんと向かって言われると、ちょっと照れくさいかな。」
凪さんはニコリと笑みを見せる。
「君を助けたのは姉さんに言われたからなんだけどね。お礼は嬉しいけど、それは姉さんに言ってあげてよ。」
……そうだったの?
考えてみれば同級生の女子生徒が僕を助ける為に戦うなんて、出来すぎてるとは思ったけど。
ちょっとだけ、夢を見た……。
---いや、待てよ?
「つ、翼さんが僕を助ける? なんで?」
「そりゃボクが聞きたいくらいさ! こっちにだって分からない!」
彼女は心底不思議だと言う様な顔をしてこちらを見やる。
だが、暫く見合って急に納得したように頷いた。
「---まぁ、なんとなく分かる気がするけどね。」
「……へ?」
ぼそりと呟いたその言葉を、僕は聞き取れなかった。
聞き返そうとしたが、
「いや、なんでもない。気にしないで。」
彼女は左手をひらひらとふり、そう言った。
結局聞き返す事は出来なかった。
「それより、今はちょっとだけ移動したいんだけど。いつまでもここにいる訳にもいかないでしょ?」
背伸びをして、近くの氷製の剣を手に持ちながら彼女は言った。
……また移動するのか。
必要な事なのは分かってるし、つべこべ言える立場じゃないのは分かってるけど、足が笑ってて歩きづらいんだ……。
目の前でド迫力の戦闘があって平然としてられる方がおかしいんだ。
その点で言えば僕の感性は正常に働いていると言えるだろう。
「わかったよ。それで今度は行き先を教えてくれるのかな?」
手の中の剣を砕いてただの氷の破片にしながら、彼女は答えた。
「ああ、歩きながらで良ければね。」
……ちなみに彼女は氷の剣を素手で握りつぶした。