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個体ノ武器  作者: 雅木レキ
【巻き込まれた者:雅木葉矛】
11/82

《本人の思い》003-#1/2(2-2)《凪》

2分割で書いていたモノの片方をまた2分割にする……

あぁ……頭がこんがらがりそうだw


考えて書かなきゃなぁ…

【個体の武器】

【恋葉凪】-00-3-1/2-2/2----恋葉 凪 《本人の思い》




 ------さて、引き受けたのはいいが、これは結構骨の折れる仕事だった。

 朝。授業中。昼休み。また授業中。

 周りに感づかれないように彼を『監視』する。

 ボクの『監視行動』に気づいた人間がいたら間違いなく『彼に気がある』か『変なヤツ』扱いを受ける。

 多分それは間違いない。

 女子が特定の男子を凝視してたら間違なくその扱いを受ける。印象を与える。

 ……そうなるのは避けなければ。

 何故かは分からないが、彼に感づかれるのはあまり宜しくない気がした。

 何故だか分からない? いや、冷静になれ。

 理由を付けるのは簡単だ。例えば……。


 学校内の《超》優等生。『恋葉 翼』。その妹の不信な行動。授業中常時男子生徒をガン見とか、学校内のちょっとした噂くらいにはなるかもしれない。

 単純にそれはヤダ。ボクだけじゃなくて姉さんにも迷惑がかかるかもしれない。

 それに『雅木葉矛』本人にバレてしまった場合、彼はボクを意識し避けていくかもしれない。

 監視し辛くなるし、あまり交流は無いとはいえそれは単純に傷つく。


 ……ダメだ。

 理由付けてもなんだか納得出来ない。

 どうしてだろうか。

 なんだか、どちらも理由として当てはまらない気がする。

 どうしてだろう……。

 モヤモヤする。

 ……もうこの際理由は関係ない。考えたかったら時間のある時に考えればいい。

 とにかく、気がつかれない様にする。それでいいじゃないか。


 彼に気づかれないようにするなら周りの人間にはもっと注意しなければならない。

 周りの人間に気づかれたら監視がしづらくなる。

 周りにバレればその場合、彼本人にもすぐ簡単にバレてしまうだろう。

 理由はともかく、ボクはバレたくない。

 だから必然的に彼を盗み見る様な形で監視する。

 ……何故だか。

 下心など無いのに少しだけ自分が恥ずかしくなる。

 しばらくこんな日々が続くんだろうか。

 彼を助ける為の行動なのになんだか凄くイケナイ事をしている様な気分になる。

 ……ちょっと憂鬱になる。



 ---監視のつもりがだんだんと『観察』になる。


 授業中__。

 ……ところで授業中見てる必要はあるんだろうか?

 流石に気にし過ぎじゃないかな? 奴らだって学校では仕掛けて来るまいに。

 いや、初日だけでも厳重に監視しておいて損は無いだろう。損は無かった筈だ。

 相手の出方が分からない以上、慎重になるのは悪い事じゃない。

 そう理由を付けてずっと見張っている訳なのだが。

 途中からただ見ているだけではなく、彼の特徴というか動作というかを気にし始めた。

 ボクにとっては目の端に映ってただただ印象の薄い存在でしかなかった彼だが、じっと見ていると新たに気がつく事は多い。


 例えば彼は授業中シャープペンシルをノートに立て、絶妙に動かしながら目を瞑り眠る事が出来るのである。

 今日の二科目目に確認した。

 ある意味凄い能力だ。あれでは教師も彼の居眠りに気がつかないだろう。

 彼の友達の蒼希君は、よく彼を『ネボスケさん』と呼んでいる。

 ネボスケもあそこまでいけば大したものだ。


 昼休み__。

 食事中見張るのは結構大変だ。

 彼は毎日違う教室で蒼希君と食事をする。

 ボクはと言えば、いつも教室で食べている。

 迂闊に普段と違う行動を取る訳にもいかず、どうするべきか悩んだ。

 結局ボクは『授業中に気づかれない様に高速で早弁を行う』コトで、昼休みの間完全に時間を自由に過ごせる様にし監視を続行した。

 早弁って結構大変だった。

 好き好んでコレをやっている人の気が知れない。

 この時間にも彼を見ていて気がつくことは多かった。

 稀鷺君のクラス、その教室の前でなるべく目立たない様にうろちょろとしながら彼を観察した。

 例えば彼は一見暗そうな性格に見えて、食事中の友人の口から食べ物を吹き出させるくらい面白い事を言えるのだ。

 物理的に衝撃を加える事無く、発言だけで蒼希君が吹き出す程の笑いを取った。

 話しの内容までは聞けなかったが。

 ボクは彼に少し暗い印象を持っていたが、間違った印象だったかもしれない。



 その他に気になった事は……。


 ……彼はよく、どこか遠くを見ている様なぼうっとした表情をする。

 今日一日、だいたい他の人と喋っていない時はそういう表情をしていた。

 外を見ながら何気なく空を見て。

 そのお陰でボクが見ている事に気づかなかった様だが。


 ……思い返せば、彼が姉の戦闘を見たのは3日前だ。

 多分、その事について考えているのだろう。

 彼もなんとなく、自分の身に危機が訪れるかもしれない事を分かっているのかも。

 なんというか本能的に?

 ……これじゃまるで動物の観察結果とその感想みたいだな。

 彼に失礼だ。


 ふと思ったのだが。

 姉さんは彼に最初からボクの事を教えるべきだ。

 こんなこそこそと他人を盗み見たり、ボクの主義に反する。

 彼が把握していれば、すんなりと話しかけて……。


 ……いや、駄目か。

 仮に何も起こらなかった場合、彼はボクが『ウェザードである』事。

 ボクに監視されていた事、そもそも自身が狙われている可能性があったことを知らなくていい訳だ。

 彼にしてみれば、その事を知った場合常時意識してしまうだろう。彼もボクもきっと疲れる。

 それに教えるのはかえって危険かもしれない。

 このまま何も起こらなければ、彼は全く巻き込まなくてすむ。

 何も起こらなければいつか先日の事は彼自身が忘れるだろうし、もしくは夢か何かだと1人合点もするだろう。

 多分、その可能性……。

 彼を全く巻き込まないで済む可能性があるからこそ、きっとボクはこそこそと感づかれないように気をつけているのだ。

 ボクの骨折り損。姉さんの被害妄想。それですむならいいじゃないか。

 多少ボクの苦労が増えたとしても、それで1人が救われるなら大したことだ。



 ---そうして迎えた放課後。つまり今。

 ……やってしまった。

 見失った。……彼を見失った。

 あり得ないくらい素早く彼は帰っていった。

 そんなに早く帰るなんてボクの予想には含まれていなかった。


 学校が終わるや否や、ボクはとりあえず学校内の姉を捜した。

 今日の状況をひとまず伝えたかったからだ。

 その行為に深い意味は無く、本音を言えばただ少しだけ姉と喋りたかっただけだ。

 ちなみに雅木葉矛と言う人間は帰り道1人で帰る事は多いものの、放課後しばらく部活前の蒼希稀鷺と話している事が多い。

 急がなくても大丈夫だと考えた。

 むしろ、どうせ彼が速攻で帰らないのならしばらく時間を潰す必要がある。

『蒼希との会話が終わるまで近くでただ待機。その後彼の尾行。』

 そんな怪しい行動を取れば一発でバレる。いくら鈍感でもバレる。少なくとも絶対周囲にはバレる。

 いくら彼の家と方角が同じだとしてもだ。

 ボクの家は学校から見た場合、雅木君の家からもう5分程歩いたところにある。

 だが同じ方角に帰るにしろ、ボクはいつも彼と一緒に帰ってはいない。

 突然そんな行動をしたら悪い意味で目立ってしまう。

 目立つのは極力避けたい。


 結果的にこの判断は甘かった。

 時間など潰している場合じゃ無かったのだ。

 今日の彼は蒼希君と話す事も無く、学校が終わってから速攻で帰っていったのだ。

 学校で10分程姉さんを捜したんだけれど、そちらも結局見つからなかった。


 校門の辺り。

 ……ここで蒼希君と雅木君が喋っている予定だった。

 しかし、それはボクが勝手に立てた予定だ。

 それはあっけなく覆された。


 自分の考えの甘さに舌打ちした。

 冷静に考えろ。

 授業中のあの様子で、明らかに3日前の事を考えていたあの様子で、いつも通り放課後学校でいつまでも喋っていると何故考えたんだ。

 すぐ帰るという選択肢も十分予想出来たはずだ。

 ボクは予想しなかった。ボクは想定しなかった。ボクは姉を捜してた。

 逐一報告する必要は無かったはずだし、報告するにしてもメールでいいはずだったのに。

 ……酷い失態だ。彼になにかあったら姉の思いを無駄にすることになる。姉の期待を裏切ることになる。


 走って追いつけるか? 

 追いつかなきゃ。姉に応える為にも。彼を助ける為にも。

 自分は頼られたんだから。

 勿論、追いかけた先に居る彼が『誰か』に襲われていたり、その確立は低い。

 多分無いだろうとは思う。

 そもそも彼が危険かも知れないというのは姉の予想だ。姉は優れた人間だが未来を予知出来る訳では無い。

 ただの予想だ。妄想とも言える。だから見積もりは甘くても良いハズだ。


 それにいくら戦闘行動を『見た』からといって一般男子である雅木君を即刻消す為に行動を起こしたりするとは思えない。

 そう思うのにも当然根拠はある。奴らはいろいろ問題を抱えている。

 姉によれば、奴らが行動するとき、『世間が賑わう』様な事柄や行動は極力控える傾向にあるらしい。

 そういう行動は必要最低限。

 そして行った場合『モミ消される』。

 それもある程度までらしいが。

 奴らが起こしたと思われる事件もいくつかテレビ報道されている。

 姉が調べたところ『出来事を世間から消す』のにも段取りや手間がかかっている様である。

 だから、いくつか『消しきれない』出来事が出て来る。世間に隠しきれないところが出て来ている。

 面倒な手間をかけてまで奴らは自らの存在を世間に広めたくないらしい。

 そして今回の事を考えるが、人間1人が『消える』なんて結構な出来事だろう。

 彼等はリスクを負ってまで『一部のみを見た男子高校生』を消すだろうか。

 男子高校生は奴らを怯えさせる程の発言権や影響力を持つだろうか。

 仮に雅木君が、例えば誰かに見た事そのまま話して広め始めたとしたらそれを確認した後に『もみ消して』しまえばいいのだ。

 ……少なくとも、少しくらい間があっていいはずだ。

 速攻で消す意味はないだろうに。

 速攻で消されたら困るのだ。ボクが。

 とにかく、雅木君が危機に陥っている可能性よりなにも無く普通に帰っている可能性の方が高い筈だ。

 少なくとも姉はそういっていた。

 なにも今から気を重くする事は無い。

 走っている限りボクはいつか彼に追いつくのだろう。

 そしてなにも気がつかず、なにも知らず歩いて帰っている彼を見つけ安堵のため息をつくのだ。


 ……それも甘かった。

 予兆だった。

 お約束だった。

 間違いなくボクの考えのせいで事が悪く運んでいる。

 そうとしか思えない……。

 学校から正確に何分とか、そんなことは数えてはいなかったけれど。

 帰り道の公園の前に黒い高級車が停まっていた。

 中に黒いスーツを着た男が”3人”。

 揃って公園の中を見ている。

 間違いない。『奴ら』だ。


 この公園は姉さんが雅木君に『見られた』場所だ。

 ちょっと想像すれば用意に予感が出来る。

 なにが起きているか想像がつく。

 あー、気が重い。

 ……いや、最悪の事態を想像するのはまだ早い。まだそれは想像の域を出ない。

 希望をもて。

 そう、もしかしたらこの黒服達はちょっと息抜きしているだけかもしれない。

 雅木君は公園に入っていない。

 そして雅木君とは全く関係無しに、黒服はきっと疲れているから休んでいるのだろう。

 まだ雅木君が関係しているとは限らない。気楽に気楽に……。

 車の中の男たちに見つからない様に気をつけて公園を覗き込む。


 ……やっぱり甘い。甘かった。

 公園内に1人の黒服が居る。彼はベンチに向かって誰かと話している。相手は東紅葉の男子生徒。制服で分かる。

 絶対『雅木 葉矛』だ。間違いない。この場にいる可能性のある人間に他に候補がいない。

 手の平で顔を覆い俯く。

(どうして、こんな……!! )

 状況を確認したボクはすぐには彼の元に向かわず近くの電柱に身を隠した。

 今車の中の男たちに見つかるのは宜しくない。


 ケータイを取り出す。

 まず姉にメールをするんだ。

 交戦する事になるのは目に見えている。

 今のあの状況の彼を助ける為には、ボクの方から仕掛ける必要がある。

 言われた通り姉に連絡するべきだ。


 ……、……。

 ……、……。

 ……、……? 

 ……、……?? 

 ……、……!!? 


 イライラする……!

 考えてみればボクは殆どケータイなんて使わない。

 なんで持ってるか分からないくらい使わない。

 通話料金プランを一番安くしていても絶対にオーバーしないくらい使わない。

 パケット代の上限が無制限になる特殊な契約をしない方が安く済むくらいになにも使わない。

 そしてメールなんて打つ機会も少ない。

 手こずる、手こずる……!

 そうこうしている間に雅木君の無事である確立は、どんどん下がっていく。

 あぁー!この!!


 声を抑えるのに必至になる。

 ボクは今日一日ずっと雅木君を監視し続けていた。

 慣れない事をしてかなり疲れている訳だ。

 重ねてイライラする。

 メールを打つのがこんなにも苦行だとは!

 何故、今時の同世代の、それも女子はこんなモノをあんなに沢山書き続けていられるのだろうか!?

 理解が出来ない!

 なんとか声を上げる事無く、全文書き上げた。

 恐る恐る画面に書いた文面を見直す。

『今 下校中 雅木 あぶない。 家 行ってて』

 ……多分、伝わるって。

 伝わらない事は無いって。うん。

 ……送信した。

 送信ボタンを押した瞬間、姉も殆どケータイを使わない事に気がついた。

 彼女は人付き合いはいいのだが『ほどほど』なのだ。

 メールはだいたいPCで行うらしいし。

 それも時間がある休日だけだ。

 そして今送ったのは携帯のアドレスである。

 ……知るか。もう知るか。ボクはメールを送った。姉さんに知らせた。


 姉さんは伝える手段を指定しなかった。

 メールを見なかったら、内容が分からなかったら、流石にそれは姉さんのせいだ。

 ボクは知らない。

 メールを書いたイライラを抑えながら、ボクは公園の中に駆け込んだ。

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