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微生物を愛でたいのだよ!  作者: まいまいഊ
2-b『頭からキノコが生えて冬人夏草になると仮定したとき、それはそれで楽しい菌生がおくれそうだと夢想する』
55/59

55・マイゴのキノコは、ハラペコキノコ。(2)

 道とは言えない木々の間をすり抜けて、森の奥へと進んで行く。どこも同じに見える森の風景は、一分も歩けば素人には帰り道がわからなくなる。妖精たちの案内が無ければ、間違いなく遭難しているだろう。


「あ、そろそろ。あかいの、あるトコロ」

「よってく? よってく?」

 先行する二人の妖精たちが振り返る。

「寄っていこう」

 昨日も行った場所であるが、落ち葉はあるに越したことはない。


 オキシは葉を適当に袋に詰め込んだ。

「これくらいあれば、キノコは喜ぶだろうか」

 森の家へ持って行き、そこにいる「巨大キノコ」にあげるのだ。そのキノコは落ち葉、特に紅葉したものを好むらしい。それを知り、キノコに会いにいくのに、土産の一つも持って行かないなど、オキシには考えられなかったのだ。


「それ、おみやげだったの?」

 ロゲンハイドは言う。普段はおおよそ、そのような気遣いなどまったくしないオキシが、である。しかも、その相手がキノコだというのだから、二重の意味で信じられないことであった。


「そのとおり。でも、一番良い葉は僕がもらう」

 基本的にはキノコへのお土産とはいえ、やはり良い葉っぱは自分の手元に欲しいのである。


「だいなしー」

「きゃはは。さすがー」

 自分の欲望に忠実なオキシを見て、妖精たちは腹を抱えて、大喜びだ。木の根の凹凸を利用して、複雑な軌跡を描いて器用に転げまわっている。


 そんな妖精たちを無視し、オキシは続ける。

「そうだな、例えば……これ、もらおうかな」

 葉の一部が変色しており、肉眼でかろうじて判別できる程度のカビが生えていた。


「それ。いちばんイイ、ちがーう」

「きゃはは、アナあいてるー」

 妖精たちは、オキシの選んだ葉が予想とは異なったので、ますます笑いのツボにはまっていた。

 ちなみに、オキシにとっての良い葉というのは、ご想像の通り、分解が進みかけたもののことである。



「あ、これも、もらっておこう」

 何も、一枚だけとは言っていない。

「切りがないから、もうやめてー」

 ロゲンの切実な言葉が飛び出る。昨日の落ち葉拾いでも、悩みに悩んでいたのだ。放っておけば際限なく選び続けることを知っていた。




「これ、あげる。ぼろぼろ、ない」

「まっか、まっか」

 妖精たちは木に登り、わざわざきれいな葉を枝ごと取ってきた。


「おお。その葉っぱはキノコにあげよう。その方がいい」

 葉に大きな損傷がないとみると、興味をなくし、袋へしまった。


「これ、あげちゃうのー?」

「せっかくの、とれたてなのにー? へんなのー」

「変なことはないよ。食べるところが多いから、キノコはきっと喜ぶ。誰かの食べかけよりも、食べるところが多いほうがいいに決まっている。そうだろう?」

「たしかに、たべかけ、いやー」

「ねーねー。でも、だれが、むしゃむしゃ?」

「だれも、たべない。かってに、なくなる」

「そうそう、かってになくなる。たべかけ、ちがう」

「なにも、いなかった」

「いみわかんなーい」

「きゃはは」

 肉眼では見えない微生物が、落ち葉の分解をしていることを妖精は知らないので、そう思うのも仕方ないことであった。


「さて、お土産もできたし、出発しよう」

「はこぶの、てつだうー」

 キノコへのお土産を携えて、オキシ一行は森の廃村へと向かうのだった。

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