メインエピソード1【汚名返上、名誉挽回、雪冤晴恥】④
暗い会議室の中を、青の瞳のまま、一歩一歩進む。焦るな、逸るな、落ち着け、静まれ。
暴れ馬にいきり立つ心臓を宥めるために、数回深呼吸をする。
ろうそくの僅かな明かりを頼りに、机に積まれた書類の束に向かう。これが俺を陥れたモノか。抑えていた苛立ちが顔を覗かせようとするが、深呼吸して抑える。
数字が悪いんじゃない。数字は嘘をつかない。数字を使って事実を捻じ曲げようと人間が悪いんだ。
俺は積まれた在庫管理台帳と、報酬額管理表を確認する。
…カロリーコンバータ…
スキル「カロリーコンバータ」を使用することにより、時間の流れが遅くなるような感覚が起きる。この感覚の中で積まれた書類の不明点を洗い出す。情報処理能力も格段に上がっているため、すさまじい速さで書類をめくる事になる。
石パンをかじりながら、不明点をメモし、考えを整理する。
奴らの狙いは、俺を陥れ、経理課内の不明を全て押し付けることだ。
課内の不明とは、書類確認により判明した、管理在庫の不一致と、支給報酬額と規定報酬額の差分だろう。
課内で判明した損失の責任を全て俺に押し付け、クビにしたので責任取らせましたよ、という解決法を取りたいんだろう。判明した、というよりバレそうになったから、俺をスケープゴートに選んだんだろうな。コスパタイパで動いてるから、旧態依然の奴らには目障りだったんだろう。
では、何故損失が発生したのか?あるべきでは無いが、単なるヒューマンエラーならば再発防止を講じる必要があるが、今回は俺に責任の押し付けを行っている。
このことから、この損失は過失ではなく、故意となる。つまり、そういうことなんだろう。
不明点の要点は大きく二つ。
一つ目の不明点は、特定日に保管されていたはずの回復ポーションが足りて居なかったために、特別会計より代理購入した、となっていること。
二つ目の不明点は、特定日に納品物が提出された際、市場価格に応じた報酬を支払って居なかった、ということ。
回復ポーションの在庫数の不一致は無かったはずだが、管理簿上の記載はそうなっている。
となると、本来は不足していなかったポーションを不足しているように見せかけ、特別会計から補填し、その額を懐に入れてた、ってことか?
最低保証とした納品物にしても、年鑑を見れば過剰供給により、最低保証を下回っていた時じゃないか。実際の支払いは最低保証額として、帳面上は多く支払っているように見せかけて、差分を懐に入れてた、ってことか?
俺たちの誇りは、事務屋と蔑まされても、数字と戦い、正しく記録し、公正な判断を導き出すことじゃないのか?
俺たちだけじゃない。冒険者が命がけで得てきた納品物に対し、公正な判断を行わないのは、冒険者の誇りも蔑ろにする行為だろう!
瞳の色を黒に戻し、石パンの残りを全て頬張り、天井を向く。
許せない。許さない。この報いは、必ず受けさせる。
俺は、会議室から出ると、待っていてもらったフードの人物に鍵をかけてもらい、ギルドを後にした。




