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メインエピソード1【汚名返上、名誉挽回、雪冤晴恥】②

終業を示す鐘が鳴り響き、そこかしこでペンを置く音がする。

周囲を見渡せば、伸びをする部下や同僚の姿が映る。

ギルド職員とは言え内勤なので、体を動かす機会が少ないのと、同じ態勢を長時間続けている為、どうしても凝りが発生する。

現代日本に居た時の消炎鎮痛薬が懐かしい。

自身の作業をキリの良いところまで仕上げると、ペンを置き、首筋と肩に手を置く。

25歳の体になり、若さが溢れているとは言え、肩凝り、腰痛は労働者に等しく訪れる。

肩と腰を軽く揉みしだき、帰宅準備を始める。

まだ業務を行っている者に、後5分以内に終わらない場合は明日に回すよう指示する。

常態する残業はストレスや疲労を蓄積するのみで、短期的には効率が上がっても、中・長期的には効率が下がるのだ。

5分後、課内全ての人員が退出したことを確認し、鍵を閉める。

鍵を内動者窓口に返却後、俺は石パンを齧りながらギルドを後にした。


翌日、いつものように出勤し、内勤者窓口で鍵を受け取ろうとする。

俺の出勤時刻は定時より30分程早く、人がいない静かな室内で、熱い茶を飲みつつToDoリストを確認することを日課としている。

鍵を受け取ろうと知ると、守衛より既に渡してあると回答があった。

自分より早く出勤するのは誰だろう?と疑問に思いながら課の扉を音もなく開けると、書類棚の方向に人影が映る。

そこには、いつも出動時間ギリギリに出勤している主任で、書類棚を漁っているのが見えた。

何をしているのか問いかけると、驚きと焦りを併せたような表情で、お前には関係無いと言い、書類を戻して自席についていた。

多少違和感を感じたが、そこまで気にする必要は無いかと意識から除外し、Todoリスト確認に入った。今日も石パンを齧る一日が始まる。


定時後、部下に夕食の誘いを受ける。金欠だから奢れないぞと言うと、わかってますって!と笑顔で返された。やはり舐められているのか、少し悩む。

夕食では一番安い定食を頼み、部下の相談を受ける。前払い制なので、後勘定時のご馳走様でした!の強制奢りは発生しない。

部下はアルコールが入った所為か、常日頃の愚痴不満をこれでもかとぶつけてくる。

「最近なんかおかしいんですよね。何年も前の報告書を探させられたり、在庫の入出庫履歴を提出させられたり」

酔っぱらった部下は、突発的に指示される命令により、自作業が滞っていることを吐く。

「おかしいじゃないすか。何で命令系統守らないんすかね。大したことじゃないなら自分でやればいいのに。作業量多くて遅延のリカバリ出来ないすよ」

赤ら顔で机に突っ伏す部下の言葉に違和感を覚える。命令系統?作業量が多い?目の前の部下に、そのような指示を与えた覚えはない。

そのことを問い合わせると、眠たげな瞳のまま呟く。

「あぁ…主任す。主任補佐には話通しとくって言ってたすけど、聞いてませんでした?主任えばりんぼだから命令されても腹立つんすよね」

そこまで言うと部下はぶつぶつ言い、いびきをかいて寝てしまった。

人間は定期的に愚痴不満を吐露しないと、ストレス過負荷で鬱になる。そうしたらそこまでかけた人員育成のコスパに見合わない 。

愚痴不満を聞くことも仕事のうちと割り切るが、部下の言葉に薄ら寒いものを感じていた。


漠然とした不安と違和感を抱えたまま変哲のない毎日が続いていた。

感じていた違和感が薄れ始めたころ、課長から呼び出しを受けた。

指定された会議室に臨むと、そこには大量の書類と、課長のほか、係長、主任と上司達が勢揃いして待っており、嫌らしい笑みを浮かべていた。

「さて、君は何故ここに呼び出されたか、理由を把握しているかね?」

係長は叱責する態をとろうとしていたが、歓喜の感情を隠し切れていなかった。

把握していません。何のことですかというと、主任が横から大声で口を挟んできた。

「在庫数の改竄!冒険者へ渡す報酬額の減額!長期間に渡る不正の証拠がここに揃っているんだぞ!」

そういうと、積み上げられた書類を指差す。

主任が指す先には、ギルド管理となっている回復ポーションの入出庫管理簿と、納品物とクエスト内容より算出される報酬管理簿が積み上げられていた。

「レオン君、君が優秀なのは知っているが、これは横領に値するよ。課としてもこのような不祥事は表沙汰にしたくはないのだよ」

課長は係長、主任の言い分を信じ、俺の有責である物言いをする。

「どうだね、損害賠償額はかなり大きくなりそうだが、いままでの君の功績に免除し、懲戒免職ではなく、依願退職扱いにしてあげよう。ただし退職金は損害賠償の相殺で出ないがね」

無理矢理に退出させられ、背中越しにあざ笑うような声が降ってきた。

「三日後には部長を経由し、ギルド長に報告する。それまでに引継ぎと私物整理を済ませていくように」

会議室には上司三人が残った。


呆然とした俺は、たった今起きたことを理解出来なかった。

なんだこれは。なんだこれは。なんだこれは。なんの茶番だ!!

そして、徐々に怒りが込み上げてくる。

横領だと!?ふざけるな!!!

俺がどれだけコストをかけたのか、知っていて言っているのか!?

お前たちは、たった今、明確に俺に敵対したな!?

懐の石パンを取り出し、大きく噛み千切り、瞳の色を緑色に染め上げる。

思い知らせてやろう。何故俺が「古今無双の金庫番」と呼ばれているかをな!!!

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