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メインエピソード1【汚名返上、名誉挽回、雪冤晴恥】①

自席で石パンを齧り、瞳の色を青に染めながら、書類を確認する。

瞳の色の変化は、「俺」がレオンとして生きていく中で、極限状態の生存本能と闘争本能によって発生したスキル「カロリーコンバータ」が発動している象徴だ。

スキルは先天的なものもあれば、後天的に発生するものもあり、取得や発生に関する条件は明確になっていない。

剣を振るう速度や魔法を詠唱する速度が上昇したり、身体が鋼鉄のように硬くなるスキルも存在するらしい。

俺のスキル「カロリーコンバータ」は、情報の演算、整理、最適化など、情報処理能力を高めるものだ。

しかし、スキルにはデメリットもある。行使により体内のカロリー消費が行われるからだ。

俺の持つスキルも例外ではない。高めた能力に比してカロリーが消費される。

俺のスキルは他者と比してコストパフォーマンスが悪いようで、常に空腹感が付きまとう。

消費したカロリーを回復させるには、飲食による摂取が必須だが、胃袋に入る量には限界がある。そのため、効率的な飲食を行うことが重要となる。

そこで石パンという食べ物がある。「簡易携帯糧食1型」が正式名称で、行軍中の緊急糧食や、災害発生時等の避難物資としても扱われる、非常に優れた食品だ。

含有されるカロリーや栄養価、そして保存性に優れ、なによりも安価。

この石パンを食することで、スキル行使により消費したカロリーを効率的に補給できるため、スキル行使前のカロリー補給としても常用している。

ただし、この石パンには重大な問題がある。

機能性(カロリー、栄養価、保存性、安価)に特化した食品であるため、その味と食感が恐ろしく悪いのだ。

好んで食べる人間は皆無で、俺以外のスキル行使によるカロリー消費量では、石パンを食する必要が無い。そのため、ギルド内の配給物として貯蔵されているものも、ほぼ期限切れとなり廃棄されているのが現状だ。

俺は期限間近の石パンを自費購入し、効率的なカロリー摂取を行い、今日もスキルを行使して業務を推進している。

この先の未来で、誰かの命を取りこぼさない為に。


書類に走らせていたペンを止め、呼びかけられた方向に顔を向ける。

「この書類に記載されている納品報酬額と、こっちの書類に記載されている納品報酬額、品目も数量も一致しているのに報酬額が違うんですけど、どういうことですかね?」

少し砕けた口調で俺に話しかけてきたのは、同課内の部下だった。

砕けた口調は親しみを込められているのか、それとも舐められているのか。前者だと思いたいが。

現代日本に居た時には厳しく身につけさせられたビジネスマナーは、こっちでは慇懃に映ることもある為、他者には細かく言わないようにしていたが、それが原因だろうか?

それはさておき、提示された資料を、瞳を青くし確認する。

「同品目でも市場相場によって変動する」

俺は一枚目の書類を手にして説明する。

「こちら納品時には対象物が不足傾向であった為、買取価格の上昇が発生して報酬額が増額となっていた」。

次に、もう一枚の書類を手にして続ける。

「一方、こちらの際には対象物や数量は同じだが、市場では過剰傾向であった為、買取価格の下降が発生し、最低報酬による計算となった」

俺は書類を並べ、両書類の日付欄を指差す。

「同品目、同数量で価格が異なることに着目することは良い観点だ。さらに日付による差を考慮し、納品物買取年鑑で月次平均額を計算するようにすれば、より良くなるだろう」

そういうとレオンは書類を部下に返してペンの動きを再開させる。

部下は、一礼すると自席に戻っていった。




部下は自席に戻ると、何人かが部下に集まり、声を潜めて話し出す。

「まじかよ。確認にほとんど時間かけてなかったぜ。なんで日付だけで買取価格の上昇、下降までわかるんだよ」

「ほんとだ。見ろよ年鑑のこのページ。この月とこの月、確かに差分があるぜ」

「全部データが頭に入っているのかね?」

「スキル効果、って本人が言ってるのを聞いたことがあるぜ」

部下達は書類と格闘しているレオンに視線を向ける。

「25歳で主任補佐だろ。エリート街道まっしぐらだよなぁ」

「厳しいけど威張ってこないし、わからないことはキッチリ教えてくれるから親しみやすいしね」

「顔立ちだって精悍だし、体型もスマートで、身繕いだっていつもキッチリしてるしなあ」

「仕事が出来て、顔も体も良くて、おまけに親しみやすい。完璧超人じゃねぇか」

部下達は再度レオンに視線を向ける。視線の先のレオンは、格闘していた書類にひと段落がついたようだ。石パンを齧っては顔を顰める。そしてまた次の書類との格闘を始めていた。

「「「「あれさえなけりゃねぇ」」」」

部下達は異口同音でレオンの行動を残念がる。

仕事ぶりや人間性は、とても尊敬出来るのだが、とてつもなく不味い石パンの常食性を持つレオンを残念がるのは、もはや経理課内だけではなく、ギルド職員大半の共通認識だった。

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