メインエピソード2【盤上の改革、監査チーム発足】③
結論から言うと、監査チームの発足に暗雲が立ち込めていた。提出した草案に対する回答が、だいぶ骨抜きになって返ってきた。
監査するレベルも、範囲も、タイミングも、全て御座なりだ。
不祥事が発覚したことに対して。遺憾です。反省します。監査チームを発足し、再発防止に努めます。
おい、ふざけんな。現代日本か。所詮ポーズだったってことなのか?
…いや、まてよ。部長の態度を見た限りなら、恐らくシロだ。ギルド長だって、クロには見えなかった。ということは?
考えられるのは二つ。当人達の考えが変わったか、対抗勢力の圧力によって変えざるを得なかったか、のどちらかだ。
恐らく、今回は後者だろう。でなければ、自身に対して禊ぎを行う必要がない。
俺は、答え合わせを行うために、彼の元に向かっていった。
「レオンさんの言い分はわかる。これは明らかに圧力がかけられていると見るのが正しい」
答え合わせに向かった先で、ちょうど昼休憩の時間になったため、目的の彼と共にギルド食堂に向かった。
彼は、資材管理部主任のビリー。今回の監査チームに招聘したいと考えていたメインの人材だ。
先日の横領疑惑を払拭する際に、証言収集に力を貸してもらい、その力には目を見張るものがあったからだ。
ビリーは、日替わり定食を頼み、俺は懐の石パンで済ます。
空いている端席に座り、周囲に人が居ないことを確かめつつ、声を潜めながら意見交換をする。
「そもそも、監査チームを発足する、という発想自体が今まで無かったことかがおかしい」
食事を終え、お茶で喉を潤しながら、しみじみとビリーは語る。
「そりゃ、素材の棚卸しなんかはある程度行ってるさ。だがね、そんなものは、やろうと思えばいくらでも誤魔化せるのさ」
お茶を飲み干し、残念そうな顔を向けてくる。
「レオンさんに向けられた捏造は、氷山の一角だと思っている。だからこそ、圧力をかけて監査を御座なりの内容にしたいのだろう」
ビリーの考えは、俺の推測と合致していた。
「おそらくだが、ギルド長達に圧力をかけていると思われる連中は、直接的に、または間接的に不正に関わっているんだろう。先に続き、不祥事が明白になれば自身の立場が悪くなるのだからな」
俺は石パンを齧りながら、瞳を青に染め、カロリーコンバータ・ライトを起動する。思考速度が加速し、とある仮説に行き着く。
「…私腹を肥やすことだけが目的では無かったとしたら?」
俺の呟きに、ビリーが反応する。
「レオンさん、それはどういうことだ?」
ビリーの問い掛けに答えず、俺は思考を整理するために思いついたことを口にする。
「圧力をかけた、ではなくかけざるを得なかった、と考えれば…」
「私腹を肥やす必要はあったが、能動的では無く、受動的であるのであれば…」
「長期間に渡り監査機構が作られなかったのは、ギルドよりも、さらにその上が必要としていない…」
ぶつぶつと呟く俺を、不安気にビリーは見つめてくるが、思考を止まらせないよう、黙っている。
「助かりました。監査チーム発足の暁には、招聘申し上げますので、その際には是非」
考えが纏まった俺は瞳を黒に戻し、ビリーに礼を言うと、返事を待たず食堂を足早に去る。
そして、最後の裏付けを取るために、会いたくない彼らの元に向かっていった。




