メインエピソード2【盤上の改革、監査チーム発足】②
やることが多い。
主任としての通常業務に、監査チームとしての業務。これらを定時内で済ませる必要がある。
優先順位をつけよう。振れる作業は部下に回し、承認や指示を待つ必要となる作業は上層部に任せる。空いた待ち時間中に、自業務を行う。
スキルも万能ではない。そうしないと、俺自身もキャパオーバーで倒れることになる。
優先度:高、監査チームの体制作り。
監査チームとして発足するために、上に確認を行おう。整理した内容で上と擦り合せを行い、基準を明確にしてもらう。
監査体制を整え、それから監査に入る。当然のことだ。
監査には時間がかかるものだし、それだけをしていれば良いものではない。
必要な時に、必要なことを行える体制を事前に築いておくことで、以降の監査時に同様の作業を省くことが出来る。
メモした内容を整理し、上が判断出来るのみ出来るようなフォーマットにする。
結論を提示し、何故こういう結論になるのかを簡潔に記載する。それにより上がこちらの報告内容を把握するための時間を短縮させる。
この手間を行うことにより、上も把握しやすくなり、俺も他に対して説明しやすくなる。現代日本に居た時に身に着けたビジネススキルは、この世界でも有用だ。
瞳を青に変え、カロリーコンバータ・ライトを発動させる。
監査のレベル、範囲、タイミング。基準を設ける必要がある項目に対し、精査、最適化を施す。
消費カロリーを補うために石パンを齧り、不味さに顔を顰めながら、フォーマットに落とし込む。あとは上に報告して、擦り合せを行おう。
それまでに、対応メンバーの選定だ。
目星のつけている彼の他に、数人は欲しい。欲を言えば、経理課の直属部下を引き入れたい。
彼らの能力、性格は把握済であるし、先の問題の際の指示においても、十全な働きをしてくれた訳だから。
まぁ、優秀な人材はどこでも取り合いになる訳だが、メンバー選定の権限を使用して、是非参加させたい。
最終的な招集は上との擦り合せ後となるが、今のうちに根回しした方が動きやすくなる。
頭の中で選定したメンバーに対し、どのように勧誘するかを考えておこう。
優先度:中、部下への指示出し。
素材買取における価格調整を行うため、市場流通量の確認をさせる。
多く流通しており、余剰傾向ならば買取価格を下げる必要があるし、流通しておらず、不足傾向ならば買取買取を上げる必要がある。
しかし、突発的な上昇や下降は、不要な混乱を招く恐れがあるため、前年度及び直近3ヶ月の流通量より、買取価格を決定させる。
流通量の確認対象となる素材は多岐にわたるため、常に確認をする必要がある。
これは、俺一人が把握しておけば良いことではなく、経理課全体、ひいては受付も交えて共有が必要な内容となる。
最終的な価格決定は上の承認が必要となるが、各々が意識しておくことで、買取価格の最新情報がアップデートされ、冒険者に対する正確な情報提供が可能となる。
冒険者に対し、正確な情報提供をすることで、提出される素材の種類や状態が市場要求とマッチする。すると、冒険者、ギルド、市場に三点が良好な経済関係が築かれることになる。経済関係が良好ならば、懐も温かくなり、モチベーションも上がる。とても良いスパイラルだ。
勿論、楽しよう、誤魔化そうという不届き者はゼロにはならないが、自身が持つ情報を最新にすることで、防止出来るようになり、結果としてそれが効率良い業務となる。
申請する買取価格の値、値を決定するための根拠を、数字で示す。
数字は嘘をつかない。まさにこのことだ。
但し、膨大な数字を扱うことになり、精査、最適化を行うことが必須になるため、俺のスキルが八面六臂の活躍をすることになる。
常に空腹と戦い、石パンを手放せないのが恨めしい。
優先度:低、通常業務。
待ち時間の間、経理課主任としての通常業務を熟す。
主な業務は提出されたクエストの内容チェックと OJTとなる。
冒険者はギルドが展開したクエストを受注し、結果を報告してくる。
結果内容に応じた報酬を支払うことになっているが、報酬の内容が規程に治っているかをダブルチェックする。
本来受付のみで実施していたが、経理課を交えてチェックすることで、誤記や記載漏れと言ったヒューマンエラーや、受付と冒険者間の癒着を防止出来るようにしている。
主任としては、受付と経理課の担当者が作成した報告書を確認し、不備が無いかの精査と、 管理・統合を行う。そして取り纏めた内容を上に報告することが主業務となる。
また、OJTを施し、新人及び未経験者に対する業務指導を行う。これにより、効果的かつ効率的な育成を行うことが出来る。
自身の知識や経験を、身振り手振りを交えて直接教え込むことが可能で、なおかつ実際に試させた際の不明点や失敗点をその場で解決することが出来る。
トレーニング結果をレポートに纏めさせ、ノウハウの蓄積、マニュアル化による業務品質の均一化が望める。このノウハウ蓄積とマニュアル化により、次のOJTを他に任せることが出来るようになる。
組織とは、一個人に依存するのではなく、全体でカバー出来る体制を作りあげることが理想だ。
持続可能な安定性を定着させること。リスク分散を考えること。公平性や透明性を持つこと。 やることを考えれば枚挙に暇がない。
何故彼らはこういうことをやらなかったのだろうか?初期コストはかかるが、ランニングコストを考えればどう考えても導入すべきだったと思うのだが。
恐らく、導入することによるランニングコスト削減のメリットよりも、初期コストにかかる人件費、つまり自身の作業増加のデメリットばかりに目が向いて、導入を渋ったのだろう。
私腹を肥やすことにのみ、労力を費やしていたんだろうな。そんなことをつらつらと考えながら、提出されるクエストの結果報告に目を通し、OJT 計画を立案していく。
ちらりと時刻を確認すると、定時間際であることが分かる。時間は有限だ。空いている時間は効率的に使用せねば。瞳の色を青に変え、石バンを齧り、書類捌きを加速させるのだった。




