メインエピソード2【盤上の改革、監査チーム発足】①
横領の汚名返上して数週間が経過した。
俺は主任補佐から主任へと昇格を果たし、新たに発足した監査チームのリーダーとして忙しくも充実した毎日を送っていた。
…借金に追われ、石パンを齧る以外にやることが少ないことを充実している、と言えればの話になるのだが。
主任補佐から主任へ昇格により、やることが大幅に増えた。
というのも、史料編纂室にいる元主任のやっていたことは、基本的に下から上がって来た書類の確認と承認、及び係長への提出がほとんどだった。
さらに、彼は冒険者との応対を部下に対し、何事も経験という名目で押し付けていた。
そのため、応対業務にも注力せざるを得なくなっていた。
主任昇格当初、業務の回し方に唖然とした。
そも、経験させるというのであれば、どのような業務内容に対し、どのような手順を持って、どのように対応していくのかが重要になる。
ノウハウやマニュアルを持たない部下に対し、彼はやれ、と言うだけだったようだ。
分からないことが多すぎて、本人はパニック。
忙しい中、不明点を聞いてこられて、他の応対業務者は集中力が落ちる。
段取り悪化により精算が遅れて、冒険者はストレス。
これではギルド全体が負のスパイラルに陥り、モチベーションも上がらない。
どげんかせんとあかん。効率が悪すぎる。なんだこれは。
俺が今までやってきた効率化とは、なんだったのか。
一つの部署の中で効率化を図って良い気になっていたのか。お山の大将もいいところだ。
下から見えることもあれば、上から見えることもある。
気付いた問題点をメモし、俺は業務改善と効率化に全力を尽くした。
その話はまた別の機会に語ろうと思う。
監査チームの発足についても、忘れてはいけない。
あの日、部長より監査チームの発足を指示された後、どうするかを考えていた。
…マルコに対する利息返済があったため、思い出したのは翌日朝になっていたが。
まず、どのレベルまでを監査対象とするのか。大規模な不正は言うに及ばずだが、誤記や記述漏れなども対象にしていたら、時間がいくらあっても足りない。
次に、どの範囲までを対象とするのか。部署問わず、ギルド全体を対象とするのであれば、こちらも時間を多大に要することになる。
また、監査を行うタイミングについても、検討が必要だ。不定期に行うとしているが、一回行って終わり、とするのならば、チームとして発足することに意味が無い。
どれくらいのスパンで、不定期の監査を行うのか、擦り合せが必要になるだろう。
そして最後に監査メンバーの選定。これが一番重要だ。
監査は不定期に実施することになるので、通常業務も並行して実施する必要がある。
そのため、メンバーには通常業務と監査業務を並行出来るだけの能力を持っていることが望ましい。
心当たりの人材が一人しかいないのがもどかしい。彼には是非とも参加して欲しいものなのだが。
要点をメモし、通常業務に戻る。齧る石パンは、いつもよりも不味い気がした。




