第6話 まさかの遭遇!?ノースシャドウ!
オレの名前は神牙ハルキ!今週は楽しいことがあったから、あっという間な1週間だったぜ!でも、まだまだイベントはある!今日はバーストギアクラブのメンバーで集まって、特訓をするんだ!楽しみだぜ!
土曜日!今日は児童館に行かず3人で集まって特訓をするため、まずは公園に集合ということになっている。
「いやー、ブレイジングファング!楽しみだな!特訓!」
「ああ…だが、公園に集まって何をするんだ?鉄棒でもするのか?」
「それアイナに言ったけど、公園、集合、9時。しか言われなくてさ~」
「ほう…」
オレは軽くアイナのマネをしてブレイジングファングに伝える。現在8時50分。もう少ししたらアイナかショウ、もしくはどっちもが来るかもしれない。
「バーストギアやんのかな~、でも体力大事って言ってたから、本当に公園で遊ぶだけかもだし…。てか、公園にバーストフィールドないんだから、ここに集まってみんなで児童館に行くとかありえそうだよな…」
「それも一理あるな…」
ブレイジングファングと2人で悩んでいると、後ろから足音が近づいてくる。この足音は…。
「ショウ!」
「残念、アイナ」
「あー!外したーっ!」
後ろにいたのはいつも通り、黒い手袋をしているアイナだった。足音で当てられなかったのは残念だ。
「ショウはいつぐらいに来るかな~」
「もうすぐ…」
遠くから声が聞こえてくる。声の方向に見ると、ショウがこちらに走ってきていた。
「神牙ー!出雲ー!遅れたー!」
「まだ1分あるぜー!」
「…遅い」
走って近づいてきてはいるものの、スピードが遅いような…。
「はぁ…はぁ…悪いな…。母さんの説得に時間がかかったんだ…」
「説得?」
「いつも土曜日は児童館に行くのに、今日は児童館じゃなくて公園に行くから、っていう理由で怪しまれてな…アイナが来てくれて助け舟になってくれたんだけど、走っていくんだよ…しかも公園の場所わからないから迷子になりかけるし…」
「そ、そうなのか…水、飲むか?」
「ありがとう…」
オレは肩から下げていたショルダーバックから水を取り出し、ショウに渡した。
「アイナ、ショウの家行ってたんだ…」
「一緒、行こうと、思った。でも、遅刻する、思った。だから、走った」
表情を崩さず、アイナは答える。アイナらしいかもしれない。
「置いてかれたのは不本意だったけど、家に来てくれたのは本当に助かったよ…ありがとな」
「うん」
ショウが息を落ち着いたのを見計らって、アイナは背負っていたリュックから水色の大学ノートを取り出した。
「今日は、現場、見に行く」
「現場?」
「そう。バーストギア、公式大会、会場、行く」
「会場!?」
アイナはノートをペラペラ開いて説明するような素振りを見せたが、ノートをショウに渡し、説明を丸投げした。
「…これ全部説明しろって?」
「そう。アイナじゃ、説明、難しい」
「じゃあ誰が書いたんだよこのノート…」
ショウは文句を言いつつも、ノートを読む。公式大会についての説明なら、公式大会のことをオレより知っている2人が適任だと思うが、2人の中でもどちらがより適任かというものが存在しているのだろう。…アイナが説明をめんどくさいと思っただけだと思うが。
「うーんと、まず会場はショッピングセンター。高校に少し近いところだね」
「へー…じゃあ、今日はショッピングセンターに行くのか?」
「うん。行く」
「…神牙、忘れちゃいけないけど、公式大会は来週だからね」
「おう!来週!…来週!?」
「はぁ…やっぱり」
現在12月!冬休み!そういえば、公式大会って冬休み中って…言ってたよな…。完全に忘れてた…!
「それで、大会1週間前の今日から、12月の末までショッピングセンターのイベントスペースにバーストフィールドが設置されるんだ。誰が使ってもいい、そういうスペースだ」
「へ~すっげー!…でも、あれ?来週が団体戦で、個人戦はいつなんだ?」
「それは団体戦の1週間後!オレあのホテル行けるの楽しみなんだよね~!」
「アイナも、スイートポテト、食べれる、嬉しい」
「そ、そうなのか…」
「まあ、あとは歩きながら話すよ。…これから30分以上歩かねーといけねーからな」
穏やかなショウがいきなり試合中のような口調になる。30分歩くということがよほど嫌なのだろう…。オレも嫌だよ…。
歩いて約10分が経った。市内の中学校は1校しかなく、オレたちはその中学校に行くしかない。もしかすると、中学校に入学したら毎日こんなことになるのか…!?と思ったけど、中学生になったら自転車通学が解禁されるからそんなことはないのか。
「そういえば、団体戦ってどんなやつが参加するんだ?」
「ショウ、ノート、見せる」
「はい」
ショウにノートを渡され、表紙をめくってみる。やはり、目次が最初に現れる。オレは目次に従い、”団体戦出場プレイヤーまとめ”というページを開く。チーム名、プレイヤー、使用ギアなどが書かれているが、ほとんど知らない人だらけだ。
アイナによると、特に注意すべきはS4というチームらしく、強さにバラつきがないから誰と当たっても油断大敵と書かれている。あとはチームではなく、個人として厚真メグルというプレイヤーも注意すべきとのこと。
「でも、団体戦、優勝しても、ミステリアスタイプ、もらえない。だから、参加するチーム、少ない」
「あ!ミステリアスタイプ!優勝しても、もらえないってどういうことなんだ?」
「ミステリアスタイプは個人戦優勝者のみがもらえるんだ。公式大会に参加する人って、大体ミステリアスタイプのギアを求めてる人が多いから、同じ公式大会だったとしても団体戦には参加しない人が多いんだ。チームを組むのとかめんどうって言われてるからね…」
「だから、注意すべき、チームも、プレイヤーも、誰もいない、かも」
「注意するべき!っていう人が近くにいない方がオレはありがたいかな~なんて…」
そう考えてみたけれど、最初はショウと鎖は注意すべきって言われた人たちだったな…。その2人が同じチームのメンバーって…。
「…何考えてんだ?神牙」
「いや…なんでもない…」
歩いて30分くらいが経ち、ようやくショッピングモールセンターが見えてきた。土曜日だから駐車場にはたくさん車が止まっているし、ショッピングセンターに入っていく子どもがたくさん見える。
「はぁ…やっとか…」
「こんなのも、疲れる、なら、柊、体力、ない」
「そうだよ、オレに体力なんてものはない。運動会は全部ビリ、大繩で引っかかる原因全部オレ、体力なんてない」
小言を言いながらもショウはアイナについていく。アイナは意外と歩くのが速く、気を抜いたらオレも置いて行かれそうになる。
「神牙、まず、バーストギア、やる?それとも、中、見てからに、する?」
「もちろん!おもちゃ売り場見て~!本屋行って~!ガチャガチャ見て~!」
「行きたいところ多くないか?」
「そうか?あとお菓子売り場も!その後にバーストギア、3人でやろうな!」
「いい、ね。アイナも、おもちゃ売り場、本屋、ガチャ、お菓子売り場、全部、行きたい」
「出雲もかよ…」
歩きながらも、ショッピングセンター内に入る。右通路側にはトイレと文房具売り場、左通路側には化粧品コーナーが見える。
「まずどこから行く?」
「あ、神牙、出雲。オレトイレ行って、イベントスペース近くで時間潰してるから好きに見てきていいぞ」
「そうか?じゃあ、アイナ行こうぜ!」
「…うん」
ショウはトイレの方向へ行くのを見て、オレたちはまず1階のお菓子売り場に行くことにした。
「ショウ腹痛かったのかな?顔色ちょっと悪い気がしたぞ」
「かも、ね。途中から、歩くの、遅かった」
お菓子売り場、2・3階ではおもちゃ売り場、本屋、ガチャコーナーをアイナと回った。お菓子売り場では気になってた食玩を見れたし、おもちゃ売り場では新発売のカスタムギアをアイナがジロジロと見ていた。ガチャには欲しいものがなかったから別のところで探してみよう。
「あー、ガチャの欲しいやつなかった…」
「どんな、やつ?」
「なんか…光るヨーヨー?アオイが持っててさ、ヨーヨーにつけられてる名前がカッコよくて!」
「いい、な。アイナも、探してみる」
「おう!絶対アイナも気に入るぜ!」
1階に戻ろうとしたが、エスカレーターもエレベーターも混んでいるため、階段を下りて戻ることにした。もしアオイだったら途中で休憩を何回も挟む長さだろう。
「…神牙、って」
「ん?なんだ?」
2階の踊り場のところで、アイナは階段を下りるのをやめた。
「神牙って何か…癖とかある?」
いつもよりアイナはスラスラと喋る。もしかすると、言わないでいてくれていただけで、アイナもオレの指を噛む癖に気づいていたのだろう。
「…あるよ、オレ指噛むの癖でさ、小さい頃から」
「だよね。気になってたけど…言わなかったの」
「ありがとな」
「ううん。その方がきっといいの」
「いいって?」
「バーストギア、やる人、みんな、どこか、欠けてる。それ、直す…あんまり、よくない」
「直すのがよくない?」
「…だから、やんわり。言わない、気にしない、これ…大事」
喋り方が戻ったアイナはバーストギアをやる人はどこか欠けている。それを癖と言いたいのだろう。でも、それを直すのはよくない。そして、その癖を持つ人たちにその癖について言わない、気にしないという対応が大事…なのだろうか?
バーストギアの予選大会でも個性的な人たちはたくさんいた。個性としか思っていなかったが、その個性を癖と取るならばみんな、直したほうがいいのかもしれない。でも…?
アイナにもう1回さっきの話を聞こうとしたが、踊り場にはもうオレしかいなかった。
イベントスペース近くのベンチにアイナが座っており、ショウはアイナの履いている靴の紐を結んであげているようだった。
「あ、神牙。オレ、リボン結びできないんだけど…神牙ってできたりする?」
「できるぜ!」
「出雲の靴紐、お願いできる?」
口調が穏やかになったショウが止め結びの状態から何も進んでいないアイナの靴を見せた。
「アイナ、不器用。細かいの、難しい、できない」
「そうか?リボン結びってそんなに難しいものじゃない気がするけど…」
「リボン結び、難しくない。でも…できない…」
オレはさっとリボン結びをする。アイナは立ち上がり、靴紐がほどけないことを確認するとイベントスペースに置かれているバーストフィールドを指さした。
「あそこで、団体戦、やる」
「ほーん」
「懐かしいね、去年アサヒと見に行ったよ」
バーストフィールドを挟み、様々な年齢の人たちがバーストギアを楽しんでいる。だが、設置されているバーストフィールドは全部使われている。
「やっぱり、団体戦が近いから、みんな団体戦の練習なんだろうね。全然空かないよ」
「そうなのかぁ…」
「今日、やめる?明日も、行ける、明後日も、明々後日も…」
「…さすがに…明後日以降は厳しいよ…?」
イベントスペース近くで3人で悩んでいると、あたりの雰囲気が少し変わった。バーストギアで楽しむ人の方が多いが、その中でも一部の人が何かに注目しているようだった。
「お前らがバーストギアクラブか?」
声のする方を向くと、キツネのお面をつけた人がいた。
「だ…」
「ノースシャドウ!?」
誰?と言おうとすると、キツネのお面をつけた人物を1番知っていたのはどうやらショウのようだった。
「ノースシャドウ…って、ランキング3位の!?」
「そ。知ってんだな」
意外とフランクに話しかけてくれるノースシャドウ。ランキング上位なんだから、もと近寄りづらくて関わりづらくて…というのを考えていたが、そうでもないようだ。
「何か、用?」
「バーストギア公式大会団体戦が近いからね、強いやつがいるか見に来たんだよ」
「団体戦に出て個人戦に出ない人って少ないからね…」
「そういうこと。んで、3人してなんか悩んでんのか?」
「団体戦の練習をするためにここに来たのに、全部フィールド使われてるし、なかなか空きそうにもないから困ってるんだ。神牙が1番弱いから神牙だけでもいいから練習させたいんだけどね…」
「うぐっ…否定したくないけど納得もしたくない…」
ショウに痛いことを言われる。ノースシャドウは悩むようなポーズをしながらバーストフィールドがある方を見る。お面なんてつけているのに、前は見えているのだろうか?
「…んじゃ。お前、神牙っていうのか?」
「おう!」
「オレと試合をしよう」
「おう!…え?」
「いいか?柊、鎖」
「…い、いいけど」
柊は少し驚いたような声で承諾をする。アイナは軽くうなずく。空きそうにないバーストフィールドをどうやって使うんだ…?
ノースシャドウはバーストフィールドのあるイベントスペースに近づいていく。オレはその後ろをついていく。ノースシャドウの身長はオレと同じくらい…いや、アオイと同じくらいに感じる。
「なあ、そこの」
ショウとアイナから見やすいバーストフィールドの近くに行くと、バーストギアをやっていた人たちに話しかける。相手がノースシャドウだからか、みんな緊張しているように見える。
「オレとコイツで試合をしたいんだ、後ででいいから貸してくれないか?5分以内で決着がつくようにはするから…」
ノースシャドウは後ろにいるオレを指さしながら優しく話しかけるが、4人ともどこかへ走り去ってしまった。
「別に、今貸せって言ったわけじゃねーのにな」
「…ランキング上位のやつに話しかけられたら誰でも身構えるだろ…」
「そうか?…ま、これで空いたし、やろうぜ、バーストギア!」
「オレが使うのはフロストファントムだ!」
「フロストファントム!?」
「なんだ?オレはいつもコレだぞ?」
「え、いや…幼馴染が同じギア使っててさ…」
「ふーん、試合したことあんの?」
「あるぜ!」
「じゃあ、フロストファントムについて初めてのやつより知ってるってことだよな!」
「え!ま、まあ…」
「じゃ!勝てるってことだよな!ブレイジングファング!」
「お…おう!」
ノースシャドウはバーストフィールドに青い鍵を投げ入れる。底につくと、青い鍵の周りには児童館で見たような十二面体のギアに包まれた。
「システムロック!バトルスタート!」
カスタムギアが浮くと、フロストファントムはジグザグと左右に移動をしだす。アオイとは違う戦法だ。同じギアでも使う人が違うとギアが違うもののように思えてくる。
だが、フロストファントムは防御力が高い。攻撃力が高いと思っていたブレイジングファングでも、何回本気の攻撃を仕掛けて何回目でギアを壊すことができるのだろうか?
「まあ、ブレイジングファングの崩し方は知ってるけどね」
ブレイジングファングにフロストファントムがジグザグとしながら近づいてくる。オレはブレイジングファングによけるように指示をしようとすると、フィールド内からふとストファントムが消えた。
「消えた!?」
「ファントム唯一のギミック、消えるカスタムギア。オレも原理は知らねーけどな!」
ブレイジングファングの背後にフロストファントムが現れる。判断が間に合わず、フロストファントムに激突され、壁に勢いよくぶつかりギアが壊される。
「な、なんだよそれ!?」
「キミのお友達に教えてもらわなかったのか?って、敵になる可能性があるやつにそんなの言うわけねーか!」
とにかく一撃だけでも与えたい一心でフロストファントムに近づくが、全てキレイに避けられる。
「…あ!ブレイジングファング!」
徐々に光を失っていたブレイジングファングから完全に光が失われる。これがギアバーストだ。
「ま、そんなもんだぜ。いい練習にはなっただろ?」
「だな!」
オレはバーストフィールドからブレイジングファングを拾う。前を見ると、ノースシャドウがいなくなったと思ったら、視界の横の方にキツネのお面が近づいていた。
「オレは団体戦に参加しないから、頑張れよ、バーストギアクラブ!」
「…そういや、最初からオレたちのことバーストギアクラブって呼んでたけど、なんで知ってんだ?」
「ほんの少しだけ有名だぜ?予選大会で勝率の高い2人がいて、さらに個人開発のよくわかんねーギアを使う新人…お前も、これがバーストギアクラブだって言われなければ、面白そうなチームだって思わねーか?」
「まあ、たしかに…そう言われれば…」
ノースシャドウはオレの肩を強く掴む。お面をつけているという安心感からか、オレに鼻にキツネの鼻の部分が当たるくらい顔が近い。
「だからオレも、あの女も期待してんだよ。どれだけ強いやつが!団体戦で!どんな試合をするのか!」
ほとんど勢い任せにノースシャドウは喋る。怒ったときや不満をぶちまけているときのアオイにそっくりな喋り方だ。
「お、おう…。でも、なんでノースシャドウは団体戦に参加しないんだ?」
「友達いねーからな」
さっきまでと違い、あっさりと団体戦に出ない理由を話したノースシャドウはオレの肩から手を離し、ポケットに手を突っ込む。
「ま、一緒に出る相手がいないだけで、一緒に団体戦を見る友達は存在するんでね。オレはお前たちを目的に来週の試合を見に行く。がんばれよ」
ノースシャドウは右手をポケットから手を出し、手を振りながら人混みの中へと消えていった。
アイナとショウがいるイスの近くに行くと、ショウが大きく手を振っていた。
「ハルキ!お疲れ様!すごい試合だったね…」
「だったな!なんか変な人って感じだったな…」
「最後、なんて、言われてた?」
「え?…あー、団体戦見に行くから頑張れよってさ!」
「まあ、これでブレイジングファングに勝てることが分かったから余裕が生まれたのかな」
「それは…きっと、ない。だって、ノースシャドウ、だから」
「なんだそれ?」
バーストギア公式大会団体戦まであと1週間!どうにかこの1週間で強くなって、ショウとアイナの足を引っ張らないようにしないとな!…1週間で本当にどうにかなるのか?




