第1話 ブレイジングなルーキー!神牙ハルキ!
”バーストギア”それは鍵の形をした「コア」と呼ばれるものと、プレート状でどんな形にもなる「ギア」を組み合わせた”カスタムギア”で遊ぶホビーだ。
勝敗の決め方は3つ。コアを破壊する「コアブレイク」、ギアを破壊し、コアだけの状態で30秒経つと「ギアバースト」、5分で決着がつかないと両者負けになる「タイムアウト」。
そしてタイプは5つ。パッション、クール、スピード、マニアック、ミステリアス。攻撃力の高いパッションタイプか、防御力の高いクールタイプか、それとも個性のないマニアックタイプか…選択は自分次第だ!
「ほぇー…」
オレはソファでだらけた姿勢でテレビを見ていた。夕方のアニメの入っている時間はロッコロでよく特集を組まれているホビーやカードゲームのCMが頻繁に流れてくる。そろそろBGMになっている曲を覚えてしまいそうだ。
「こら!ハルキ!まーた指噛んでる!アオイくんに怒られるよ!」
「いいもーん、アオイの前で指噛まなきゃいいだけだし!」
「はぁ…まったくもう…」
オレの名前は神牙ハルキ。オレには小さいころから無意識に指を噛む癖がある。自分でも気づけないから、いつも幼馴染のアオイによく指摘してもらっている。できるだけ自分で気づけるようになりたいし…中学生になる前には絶対に直してやる!…って、指を噛みながら思うしかできないんだよなぁ…。
次の日!オレは毎朝早起きをして、公園のベンチでのんびりしてから登校をしている。ベンチに座って、空を見ながら毎朝考え事をしている。
朝の公園とはいいものだ。昼の公園の様子を知っていると、本当にここはいつもの場所と同じなのか?と疑いたくなるほど、静かだ。風、虫、遠くから車の音、そして…
「おはようハルキ」
「うお…おはよう…」
オレの顔を覗いてきたのは幼馴染の北影アオイ…。オレを驚かせたのが嬉しいのか、学校では中々見ない笑顔だ…。
アオイはオレの隣に座り、地面にランドセルを置いた。
「今日も早いね、いつもこのくらいだったっけ?」
「オレはいつも早いの!そういうアオイだって、今日は早すぎないか?」
「うん。自分でも珍しく早起きできたから、早めに家を出てみたんだ」
家から学校が少し遠いから早起きしないといけないのにアオイは早起きが苦手だから、いつも遅刻ギリギリに学校に来る。それでも焦る顔1つも見せたことはない。この前チャイムが鳴る1分前に来たとき、さすがにオレは焦ったけどな…。
「あ!そういやさ!昨日の消しゴムサッカー部!見たか!?」
「うん、見たよ。主人公のチームが地区予選で敗退なんて思わなかったから正直驚いちゃった」
「だよな~!…それとさ」
「それと?」
「…バーストギア?のCMやってたじゃん、アオイってバーストギア興味あったりする?」
「…まあ、楽しそうではあるよね。カスタムギアさえ手に入れれば気軽に大会に参加できるし」
「気軽に?」
「うん。児童館で毎週土曜日に、公式大会の出場者を決めるための大会があるんだ。年齢制限とかないし、自分の実力次第だけど、気軽に大会に参加できるのは事実だよ」
やけに詳しいな、アオイ。と言いたかったが飲み込んでおくとして。小さい頃からころからアオイは気になったら何でも調べてたもんな、花とか虫とか標識とか。
「ふーん…。ま、そもそも持ってもないのに大会のこと考えてもな。ほら!学校行こうぜ!」
オレは立ち上がってランドセルを背負う。アオイがランドセルを背負うのを見て1歩を進める。こうやってアオイと一緒に学校に行けるのは久しぶりだ。嬉しい!
地獄の6時間授業が終わり、ようやく放課後がやってきた!オレはささっと教科書たちをランドセルに詰め、アオイの席の方へ向かった。
「なーアオイー!今日公園で遊ばない?」
「あ、ごめんねハルキ。今日も早く帰らないとだから」
「そっか、じゃあまた今度遊ぼうぜ!土曜日とか!」
「うん、そうだね、じゃあまた明日」
小さく手を振りながらアオイは教室から出て行った。最近のアオイは忙しい?とかで遊べる日が少なくなった。でも、学校に行けば毎日会えるから遊べなくても問題はないぜ!
「ただいまー!」
オレは家の玄関を開け、大声で叫んだ。返答はない。それもそのはず、かーちゃんもとーちゃんも、この時間は仕事に行っているからだ…。
リビングのドアを開けると、いつもならテーブルの上にあるリモコンに目が行くのだが、今日はリモコンには目はいかず、テーブルの上のダンボールの方が気になった。
届け先は当たり前だが、オレの家。そして意外だったのはオレ宛ということ。依頼主は親戚。朝学校に行くときは見なかったので、両親のどちらかは1回帰ってきているということだ。…いや、それよりもこの荷物だ。品名には雑貨と書いている。ロッコロの応募者サービスならそのまま内容とか書いてあるのに。
そんなことを考えていても仕方がない。とりあえず、オレはこのダンボールを持って、自分の部屋に向かうことにした。
自分の部屋に入った瞬間、ランドセルを布団の上に放り投げ、ダンボールを机の上に置く。持っていて、重さはそれなりにあったが、振っても音は特にしなかった。
机の引き出しから、ハサミを取り出し、段ボールを開けてみた。まず、中から一枚の白い紙が出てきた。白い紙をよけると、親戚が住んでいる地域限定のお菓子に挟まれて、小さな透明な箱があった。中には赤い鍵が入っている。
まず手紙を読むことにした。キレイとも汚いとも言えない微妙な字で長文が書かれている。
「ハルキくんへ、元気にしていますか?涼川のおじいさんです。最近、とあるものに興味を持ち、自分でも作ってみました。よかったら、ハルキくんも遊んでみてください。イツキちゃんにも似たようなものを送っています。次会うことがあったら、一緒に遊んであげてください。箱に中にちゃんと説明書入れてます。それと、緩衝材のかわりにお菓子を入れています。家族で食べてください。また、気になることがあったら電話でもしてください。それでは。」
送ってきたのは涼川のおじさんだったようだ。この人はムダに手が器用な人で、家の家具はDIYであったり、服も自分で作ったものを着ていることがあった。そのことを考えると、この赤い鍵も自分で作ったということなのか…。
透明な箱から鍵を出してみると、底の方に説明書らしき紙が入っていた。手紙とは違い、こちらは手書きではないようだ。
この赤い鍵はバーストギアで使うカスタムギアというもので、名前は「ブレイジングファング」。攻撃力の高いパッションタイプで、移動速度は遅いらしい。バーストフィールドに置いた例の図として、ブレイジングファングは、球体の形をしているが、口のようにギザギザとしている部分があるそうだ。
これがあればオレも、バーストができる!アオイが気軽に参加できるとか言ってたし、今週の土曜日に児童館に行って大会に参加みようかな。
「カスタムギアを手に入れた?」
次の日、オレはさっそくアオイにカスタムギアのことを話してみた。アオイと一緒に帰れる日は、いつも近所の河川敷で少しお喋りをしてから帰っている。
「そうなんだよ!じゃーん!」
オレはポケットから赤い鍵を出して、アオイに見せた。今日一日、どこで見せようかタイミングを見計らっていたので、ようやく見せることができた。
「へー…見たことないギアだね。名前は?」
「ブレイジングファングっていうらしいぜ!」
「…聞いたこともない」
「親戚のおじさんが作ったものらしくてさー!オレもこれで大会参加してみようかなーって思うんだよなー!」
「…きっとハルキにピッタリだよ。今週の予選大会から参加するの?」
「おう!」
「そっか…。じゃあ、オレも行けたら行こうかな」
「本当か!?」
「うーん。まあ、オレの足次第だけどさ」
「だよな!アオイの家から児童館遠いもんなー、ムリすんなよ?」
「ふふ、わかってるって!」
アオイは階段から立ち上がると膝を少しさわり、そのまま階段を上っていった。オレもアオイを追いかけ、帰るまでずっとバーストギアの話をしていた。
ようやく土曜日。オレは上靴を手に持ち、ポケットにはブレイジングファングを入れ、外に出た。児童館に行くなんて久しぶりだ。先生は何人くらい変わっているのだろうか?おもちゃとか、部屋の家具の配置とか、気になる要素は多いが、今日はバーストギアの予選大会のために行くんだ、オレにもブレイジングファングにも関係のないことだ!
児童館につくと、たくさんの小学生がいた。それを言うオレも小学生だけど。特に体育館の方は人が多く、体育館の中が見えないくらい人が集まっている。背伸びをしてみるが、中の様子は全くわからないが、誰かが試合をしているようだ。男子と女子で戦っているようで、どちらが優勢までかはわからない。
中の様子が見えないので、少しため息をつくと、誰かがオレの服の袖を引っ張った。引っ張られた右袖の方を見るとオレよりも背の低い女子がいた。
「ん?もしかしてキミも、体育館の試合見たいのか?」
「…違う、あなた、初めて見る顔。予選大会、参加、する人?」
黒い髪に黒い手袋、そして独特な喋り方。だが、言いたいことも言っていることの意味も大体わかる。
「うん!でも、なんか人多いから気になっちゃったんだよね」
「試合、アルイナ、ノースシャドウ。ランキング、1位、3位」
「ランキング?」
「公式大会、個人戦、ランキング、つく。アルイナ、1位、ノースシャドウ、3位、前回、なった」
「へー…そんなすごい人がこんな児童館にいるのか…」
「そう。だから、みんな、不思議、思ってる。それで、人、たくさん」
この人の多さは珍しいものを見るための人だかりだったのか。ランキングがどの範囲までのものかはわからないが、1位と3位がこの場にいるのは中々すごいことだと、バーストギアについてまだよくわからないオレでもわかる。
「今の試合!アルイナ選手の勝利!」
試合の決着がついたようだ。周りの小学生たちは大騒ぎ。オレに話しかけてくれた黒髪の女の子は耳を塞ぎながら他の部屋に入っていった。オレもその女の子の後をついていった。
「そういえば、大会に参加するか聞いてくれたよな?オレ、ギア持ってくるのも児童館に来るのもいいけど、参加方法も試合がどんな感じかもよく知らないんだよな…」
女の子は、目をパチパチと何回かまばたきをし、下を向いて数秒間を空け、もう一度オレの方をを見た。
「まず、体育館近く、受付、ある。そこに行く」
「わかったぜ!」
オレは部屋から出て、体育館の方へ向かった。アルイナとノースシャドウの試合が終わったからか、さっきまであったのかは知らないが、受付と書かれたプリントの貼られた机があった。その紙に自分の名前とギアの名前を書くようだ。
オレはそこに名前を書き、走って女の子のいる部屋に戻った。
「次は!」
「あとは、自分の番、待つだけ」
「あ、それだけでいいんだ、えっと…そういや、キミの名前は…?」
「…名前、アイナ。出雲アイナ」
「アイナっていうのか!オレは神牙ハルキ!神牙でもハルキでも好きに呼ぶといいぜ!アイナ!」
「…じゃあ、神牙、バーストギア、試合、初めて?」
「初めてだぜ!」
「ちょっと待つ」
「おう!」
アイナは塗り絵と数本のペンを持ってくると、塗り絵を裏側にし、色々と書き出した。バーストギアのタイプのことや、試合開始時に言うセリフみたいなもの、現在のランキング上位者や、この児童館で予選大会に参加する強い人たちのことがキレイに書かれた。
「これ、神牙、持つ。しばらく、役立つ、かも」
「すげー…黒板くらい見やすいし、わかりやすい…。ありがとな!アイナ!」
「…今度、ノート持ってくる、それの方が、細かい」
オレのことを考えてなのか、それとも適当にとったからなのか知らないが、車の塗り絵の裏は、バーストギアのことが書かれた紙になった。これがプリンセスの塗り絵だとさすがに持ち歩きにくいものになるところだったので、この無意識かもしれない気づかいに助けられた。
攻撃力の高いパッションタイプはコアの色が赤、防御力の高いクールタイプはコアの色が青、移動速度の速いスピードタイプはコアの色が黄色、個性が予測不能なマニアックタイプは人によって色が違うけどほとんどは緑、バランスの良いミステリアスタイプは大会優勝者のみが使えてコアの色は紫。全部例外はあるが、基本はこれらしい。
現在のランキング1位はアルイナで、マニアックタイプのギアを使う。ランキング2位のユリカとは毎回僅差の試合をしているとのこと。そして2位の暁ユリカはパッションタイプのギアを使う。圧倒的な攻撃力の高さが特徴的で、コアブレイカーの異名で呼ばれることもあるらしい。だが、修行の旅に出ているため、次の大会に参加する可能性は低いとのこと。最後に3位のノースシャドウはクールタイプのギアを使う。前回大会が初参加で、3位に入ったため、天才として扱われているらしい。
そしてこの児童館での要注意プレイヤーは2人。柊ショウと鎖という人らしい。2人とも公式大会に何回か参加している実力者で、どちらも曲者。扱いの難しいマニアックタイプを使う柊ショウと、スピードタイプを使う鎖。できることなら2人に当たらず予選大会を通過したい。…だってよ。喋り方は独特だけど、文は読みやすいし、なんというか、普通なんだな…。
「これ、タイプとか存在するくせに、弱点とかこのタイプにはこれが有利!とかそういうのないんだな」
「正解、ない。バーストギア、それ、魅力」
「なるほどなぁ…」
オレは寝転がって、部屋の出入り口の方を見ると、児童館の先生が近づいてきた。
「神牙ハルキくん、いるかな?今の人の試合が終わったら、出番だから準備してね」
「あ、はーい!…んじゃ、オレ行ってくるな」
「…うん。楽しむ、大事、これ、勝敗、重要じゃ、ないから」
「おう!」
部屋から出ると、今の人と言われていた人の試合が終わったばかりのようだった。周りの小学生の話を聞いていると、柊ショウの圧勝だったとのこと。たしかに、できることなら当たらずに予選大会を通過したい、と書かれた理由がわからなくもない。
児童館側の準備が終わると、オレの試合だ!
「よろしくな!オレの使うギアはブレイジングファング!」
「ああ!ボクが使うのはクリスタルスピアだ!」
試合の開始方法その1!まずは自分のギアを教える!ここで運営以外の人は初めて、どんなギアを使ってくるかがわかるんだ。オレは初参加だから、ブレイジングファングって何?とか、どんなギアだろう!とか、色々と聞こえてくる。
試合の開始方法その2!バーストフィールドに置く!鍵をバーストフィールドに置くと、勝手にギアが組み立てられる。赤い鍵は説明書で見た、球体の形になった。相手のクリスタルスピアは、青色のクォーツのような形になった。
試合の開始方法その3!
「システムロック!バトルスタート!」
お互いのギアが光りだし、フィールド内で少し浮く。この状態になると、自分の思った通りにギアが動き出すんだ!
「おーっ!すっげー!」
オレが浮いた状態のブレイジングファングに感動していると、クリスタルスピアがものすごい勢いでこちらに接近してきた!オレはとにかく、ブレイジングファングに避けるように指示を出す。
自分たちで試合をしたついでだから。という理由で、ランキング上位者であるアルイナとノースシャドウは、後ろの方でハルキたちの試合を見ていた。
「ブレイジングファング…聞いたこともないし、見たことないギアね…」
「やっぱり、久しぶりに来てよかったんじゃねーの?」
「アンタから誘ってくるなんて珍しいから来たけど…そもそも何が目的で来たの?」
「…目的なんてないさ。ただの気まぐれってやつ?」
お面とつけたままで表情をうかがえないノースシャドウは、淡々とアルイナの会話に付き合う。本当に試合の状況は見えているのだろうか?
「ま、アンタが楽しいならそれでいいけど」
「知らないギアの試合が見れるのは嬉しいさ。お前に負けたのは全く楽しくないけど」
「でしょうね。まずはユリカに勝てるようになりなさい、あの子の方が強いんだから」
「ハイハイ…」
「いけーっ!ブレイジングファング!食らい尽くせーっ!!!」
オレはとにかく叫んだ。ブレイジングファングに全力で攻撃してもらえるように、セリフを考えた。ブレイジングファングには口がある。きっと、コイツは噛みついて攻撃をするんだ、なら、これしかない!そう思ったんだ!届いてくれ!!!
クリスタルスピアにブレイジングファングは近づいていく、口を少しずつ開きながらも近づいていく、大きく口を開け、クリスタルスピアに噛みつく!!
「えっ!?なんだよこの攻撃力…!!」
相手は、この攻撃に油断していたのか、なぜか避けなかった。その結果、クリスタルスピアはギアが壊れ、コアだけの状態になった。
「もう1回だ!ブレイジングファングーっ!!!」
一度離れたブレイジングファングは、クリスタルスピアに一直線!もう一度強く噛みつき、コアは光を失った。
「神牙ハルキ選手の勝利!」
周りの小学生はポカンとした後、大はしゃぎ。聞いたことも見たこともないギアが、聞いたことも見たこともあるギアに勝ってしまった。よく見たこともないし、よくわからない技みたいなもので勝ってしまった。
「あはは!負けちゃった!…ボクはイツキ。隣町から来たんだ」
「オレは神牙ハルキ!」
イツキと握手をしながらの自己紹介となった。
「神牙?…どっかで聞いた気が…」
「そうか?隣町ならたまにあるんじゃねーの?」
「…それもそっか!じゃあ、これからも頑張れよ!ハルキ!」
「おう!」
イツキは手を振りながら、体育館から出て行った。
オレは試合前にアイナと話していた部屋に向かった。アイナは壁に寄りかかり、小説を読んでいた。
「アイナ!オレ勝ったぜ!」
「見てた、おめでとう」
アイナは小説を読んだまま祝ってくれた。本の内容を少し読んでみると、ちょうど物語のいい所のようだったが、近くに置いていた栞を挟み本を閉じた。
「そういえば、アイナってこの辺に住んでるのか?」
「住んでる。小学校、多分、同じ」
「え!そうなのか!?オレ、5年2組だけど、アイナは?」
「5年、1組」
「学年同じなのか!?じゃあ、月曜日も会えるな!」
「会える、ね」
「よっしゃ、月曜日も会おうぜ!中休み!1組の方行くからさ!」
「わかった、待ってる」
じゃあなー!と手を振りながらオレは児童館から出た。
これからオレのバーストギアが始まる!強いライバル、強いギア、公式大会とかどれもワクワクすることがたくさんだな!ブレイジングファング!




