表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/29

第六麺B:「夜を駆ける、茹で上がらぬ想い」

王都・アルデンティーナ 王宮地下通路


静まり返った王都の裏手を、三つの影が駆けていく。


リゾ・アルデンテ。

王子にして、国王ファルファッレの遺児。

父の死をその眼で見届け、今はただ――逃げるのみ。


その隣を進むのは、妹のルーチェ・アルデンテ。

緑のローブをまとった聡明な少女。

そして、護衛騎士にして幼なじみ、ヴェルデ・トルテリーニ。


ルーチェ:「リゾ……父上は“事故”なんかじゃない。

誰かの意志で、あの刃が向けられたのよ」


リゾ:「……知ってたのか?」


ルーチェ:「気づいてた。教団との対立が限界にきていたことも、

父上がずっと、何かを隠していたことも……でも、まさか、あんな形で……」


言葉を詰まらせるルーチェ。


ルーチェ:「このままだと、次は私たち。

王位継承者は、“王政の安定”の名のもとに処分される」


ヴェルデ:「“粛清”ってやつだな。

いや~俺、姫様の騎士やってるけど処分はご免だわ」

ヴェルデは軽口を叩きながらも剣の柄を手に取る。


追っ手、迫る


地下通路の先、古い排水門から外に出ようとした瞬間、

黒衣の教団騎士たちが姿を現した。


黒衣の騎士:「ルーチェ王女、リゾ殿下。

新王の御命により、貴殿らは保護――もとい粛清の対象です」


リゾ「……保護とはよく言う。

殺意を包んだスープを“献上”と呼ぶつもりか!」


王子と騎士と風の魔術師


石畳の上で激しく交錯する剣と剣。


リゾは不安定ながらも、父から受け継いだ剣術で防ぎ、

ヴェルデは躊躇なく敵を打ち倒す。


ヴェルデ:「カルボ隊の訓練、思い出すな……でもあいつらの方がまだ洒落が効いてた」

(敵の兜を吹き飛ばしながら)


ルーチェ:「風よ、裂け目となって導きなさい――!」


ルーチェの魔術が敵の足を絡め取り、リゾが切り伏せる。


リゾ:「俺は逃げるだけじゃない。

守りたい人がいる……立ち止まっていられないんだ!」


脱出と決意


戦闘を終えた三人は王都アルデンティーナを脱し、アル・デン通りに足を踏み入れる。


かつては巡礼と交易で賑わった道も、今は月光の下に沈黙していた。


ルーチェ:「カルボナラ山脈――アルデンテ教の総本山を目指すの。

あそこなら、ガストロのような人間に支配されてはいないはず……」


リゾ:「生命のスープが干上がった理由、教団が父を憎んだ理由……

すべて、そこで分かる気がする」


ヴェルデ:「旅の鍋、煮え始めたな。さて、何が茹だってくるか……」

茹でる前の旅路


三人の影が夜道を駆ける。

その行き先に、まだ見ぬ真実と、煮詰まる世界の核心が待っている。


だが今はまだ、希望という名の火種が、消えずに揺れていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ