第十五麺B:「ソースの地母神と、選ばれし器」
忘れられた祭壇へ
ジェノベーゼの導きにより、リゾとボルチーニは“風の梢”と呼ばれる浮遊する古代樹林へと辿り着いた。
そこには重力の乱れる空間が広がり、根が空を走り、風が逆さに流れていた。
ボルチーニ:「ここが……ソースの地母神が祀られたという“祭壇遺跡”……」
ジェノベーゼ姫:「この地の力は、世界の麺とソースのバランスを保つ“真なる境界”……
グルテン・ネロを封ずる鍵が、眠っている場所よ」
リゾは祭壇の中央に立つ。
その瞬間――大地が震え、古の声が響き渡る。
母神との交信
風が逆巻き、空に輝く緑の輪が開く。
そこから現れたのは、豊穣を象徴する女神――ソースの地母神〈マリナーラ〉。
豊かで優雅、同時に畏怖すら感じさせる気配をまとう。
マリナ―ラ:「アルデンテの子よ……そなたに問う。
世界を蝕む“麺魔”を封じるため、何を差し出す?」
リゾ:「俺のすべてを。命も、心も……兄を救うため、そしてこの世界を取り戻すために」
試練の幻影とリゾの選択
すると、空が裂け、リゾの前に現れたのは――父ファルファッレ。
かつての穏やかで慈愛に満ちた表情ではない。
殺された瞬間の、あの絶望の表情だった。
幻影ファルファッレ:「リゾ……なぜ、お前は“あの者”を止められなかった」
リゾ:「……俺は、兄を知らなかった。だけど、だからこそ、今は向き合いたいんだ……!」
幻影はリゾに剣を振るう。
恐怖に震えながらも、リゾは一歩も退かず剣を抜く。
リゾ:「あなたの想いも、兄の過去も、全部背負って――この剣で未来を切り開く!」
一閃。
幻影が霧のように消えると、リゾの剣が静かに光り始めた。
継がれる意思と封印の力
ジェノベーゼ姫:「……あなたは選ばれたわ。
アルデンテの器として、そして麺神の意志を継ぐ者として」
女神マリナ―ラはリゾに「ソースの聖印」を授ける。
それはグルテン・ネロの力を封じ、世界のバランスを保つ唯一の封呪の鍵。
マリナ―ラ:「だが忘れるな。
麺魔を封ずるには“もうひとつの器”――
すなわち“グルテンの器”との対話が必要となる」
リゾ:「兄さんと……」
最後の対話へ向けて
祭壇の風が収まり、空が晴れる。
ジェノベーゼはリゾにそっと言う。
ジェノベーゼ姫:「あとは、あなたの覚悟次第よ。
愛と剣、どちらで兄を止めるのか――決めるのはあなた」
リゾはその言葉を胸に、拳を強く握った。
女神はしばし黙し、やがて微笑む。
マリナ―ラ:「ならば、我が力を託そう。
そなたは“アルデンテの最後の器”となる宿命にある」




