第十五麺A:「波間に揺れる忠義と、女王の微笑み」
碧き島、絶対の統治者
荒廃の広がる世界のなかで、オリーバ諸島は奇跡的に安定していた。
港には漁船が並び、子供たちの笑い声が聞こえる。
住民の男:「将軍様がいる限り、ここは大丈夫だ。
あの人は“海の暴君”なんかじゃねぇ、“オリーバの盾”だよ」
ペスカトーレ将軍――
彼はヌードル卿の即位後、すぐさまオリーバ諸島へ戻り、自ら軍を解体し、治安維持に尽力した。
かつての“武”は、今では“盾”として民を守っている。
波の砦、再会の間
ルーチェとヴェルデが案内され、将軍の居城へ入る。
ペスカトーレ将軍:「よく来たな、小姫様……そして緑の騎士。
僕の海へようこそ」
白髪交じりの長髪を風に流し、柔らかな眼差しで二人を迎える。
ヴェルデ(ひそひそ):「相変わらず女にモテそうな雰囲気しやがる……」
ルーチェ(こそこそ):「黙っててヴェルデ。真面目な話なの」
ルーチェは深く一礼し、助力を乞う。
ルーチェ:「兄の狂気を止めるため、そしてグルテンの復活を防ぐため……
四麺の一人であるあなたの力が必要なのです」
ペスカトーレ:「……僕は、王に忠義を誓った者だ。
だが、“王”が“魔”になったなら……忠義の矛先も変わる」
将軍の言葉に一縷の希望を感じたその時――
???:「ルーチェ……」
母との再会、波間の奇跡
その声に、ルーチェは振り返る。
そこに立っていたのは、亡き父を慕い、リゾたちの無事を祈っていたあの人――
王妃パスタリアだった。
碧いローブに身を包み、かつての王宮とは異なる静かな威厳をまとっていた。
ルーチェ:「……お母様!? どうしてここに……!」
ペスカトーレ:「……王妃様を、ヌードル卿から守るためだ。
あの王が即位してまもなく、彼女の“消失”が命じられると悟った。
僕は王命に背き、密かに彼女をここへ連れてきた」
パスタリア:「……すべてはペスカトーレ将軍のおかげです。
私は無力でした……夫を、あなたたちを守ることができなかった」
涙をこぼしかけるルーチェを、パスタリアは抱き寄せる。
パスタリア:「でも、あなたは生きてここへ来た。それが何よりの奇跡よ」
静かな決意、海に向けて
その晩、波の音を聞きながら、四人は密談する。
ヴェルデ:「ヌードル卿を倒すには、正面衝突では無理だ。
グルテンの力を封じる“聖域”を探すしかない」
パスタリア:「……古の書に“ソースの地母神”の名がありました。
彼女の加護がある場所なら、グルテンを封じる術が残っているかもしれません」
ペスカトーレは静かにうなずき、海図を広げる。
ペスカトーレ:「それなら、僕の艦を出そう。
この海と島の民の力、すべて君たちに預けるよ――次なる航海のために」
希望の旗は、波の向こうへ
星の瞬く夜、オリーバ艦隊の準備が始まる。
その帆には、新たな紋章が描かれていた。
アルデンテの意志と、再び結ばれた民の誓いの証――
そして、パスタリアは空を見上げ、そっと呟く。
パスタリア:「ファルファッレ……あなたの子どもたちは、前に進もうとしています。
世界を、きっと取り戻してくれるわ」