第十四麺A:「分かたれし道、届かぬ祈り」
二手の旅立ち
焦げた盆地に、緑と白の旗がはためく。
アラビアータは剣を収め、地に膝をついて語る。
アラビアータ:「俺の役目はここまでだ。
燃え尽きた大地にも、また“実り”は帰ってくる……その姿を、見届けたい」
リゾ:「ありがとう、伯爵。俺たちも、次の戦場へ向かいます」
地図を広げ、隊を二手に分ける。
•リゾとボルチーニは、行方知れずのジェノベーゼ姫を探す旅へ。
•ルーチェとヴェルデは、オリーバ諸島へ渡り、ペスカトーレ将軍を説得する使命を受ける。
別れ際、アラビアータが言う。
アラビアータ:「ヌードル卿に伝えてくれ。
炎は、怒りではなく……誇りであったと」
波の民、オリーバ諸島
潮風に包まれた碧い島々。
波間に揺れるのは、黒と金の旗――ペスカトーレ将軍の紋章。
ルーチェ:「海の暴君と呼ばれていたはずなのに……なんて穏やかな空気なの……?」
港で聞く声は、いずれも将軍への深い信頼に満ちていた。
漁師の老婆:「ペスカトーレ様はなあ、昔っから筋の通らん奴は嫌いなんじゃ。
教団のことも、どこか疑っとるようじゃったよ」
ヴェルデ:「希望はある……この島で、味方を得られれば」
だが、その夜――風に乗って届いた報せが、ふたりの心を切り裂く。
灰より届く死の報せ
使者:「アラビアータ伯爵が……陥落した。
ヌードル卿の黒騎士団が盆地に突入し、伯爵は応戦の末、炎に呑まれた……」
ルーチェ:「……そんな……あんなに……立ち上がろうとしていたのに……!」
彼女は膝をつき、涙をこらえる。
ルーチェ:「兄様……あなたは、どこまで踏みにじれば気が済むの……!」
ヴェルデはそっと隣に膝をつく。
肩に手を置き、目を伏せて言う。
ヴェルデ:「俺たちが止めなきゃならない。
伯爵の誇りは、もう俺たちの中にある。燃やすんじゃない……照らすために残すんだ」
沈む月、燃える想い
闇の中で、島の波が静かに揺れる。
怒りでもなく、悲しみでもなく――
それは、誓いという名の**“新たな火種”**だった。