第十二麺A:「魂の底、煮えゆく対話」
意識の深淵、無音の鍋底
──そこは、暗く、蒸気もない虚無だった。
空間は静まり返り、音も、熱も、香りもなかった。
ヌードル卿が目を開けると、そこにはかつての玉座と、あの男の影。
ガストロ(精神世界):「ようこそ、器。いや……王よ。
だがその王冠の中身は、俺の意志で煮込んでおいたつもりだったがな……」
ヌードル卿の眼光が鋭く光る。
ヌードル卿:「貴様の味付けは舌に合わん。吐き出させてもらうぞ、ガストロ」
精神の決闘、焼き尽くされる過去
虚空に浮かぶ、黒き聖堂。
そこに現れたのは、幼き日の自分を捨てた父。
アルデンテの神像。
ファルファッレの剣。
すべてを操り、ガストロが襲い来る。
ガストロ:「貴様は“麺魔の器”だ! ただの“素材”だ! 煮えるだけでいい!」
しかしヌードル卿は叫ぶ。
ヌードル卿:「俺は……俺は、父に捨てられたと思っていた!
だが真実は違った……! お前が……! すべてを奪ったんだ!」
振るわれた剣は、精神の記憶を断ち切り、ガストロの幻影を両断する。
ヌードル卿:「消えろ、ガストロ。お前の味は、もはや腐っている」
そして、ガストロの魂は、闇とともに霧消する。
グルテンの囁き、焦げる欲望
だが──終わりではなかった。
無音の空間に、ずるりと滑るような声が響く。
グルテン・ネロの声:「……よくぞ、雑菌を排したな。
ならば褒美をやろう……お前に、もっと力を……もっと、煮えた欲望を」
ヌードル卿の痣が疼き、脳裏に浮かぶ光景。
・ひれ伏す民
・力に震える魔導士たち
・炎に焼かれるかつての王都
そのすべてに、快感が混じる。
ヌードル卿(内心):「これは……力か……
苦しむ民を助けられる力……いや、支配できる力……!」
王の瞳、焦げ付き始める支配
意識を取り戻したヌードル卿は、玉座に座り直す。
その目は、もはや「正義」や「革命」の色ではなく、
スープの底で煮詰まった、“欲”そのものの照りだった。
ヌードル卿:「力が、すべてを救うのだ……。
麺魔の力で、世界を“茹で直して”やろう」
そしてその瞬間、世界のスープはさらに沸騰を始めた。