表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/29

第十一麺A:「開かれし神殿、煮え立つ器」

飢える都、開かれた門


アルデンティーナの街には、もはやパンの香りもスープの音もなかった。

王都の住民は、日に日にやつれ、商店の棚は空っぽになり、子供たちの泣き声すら力を失っていた。


民衆の声:「このままじゃ……もう、持たない……開門しか……ないんだ……」


そしてついに、城門がきしむ音と共に、外界へと開かれた。

“王”として迎え入れられたのは、黒きマントをはためかせる、かの者――


ヌードル卿:「……この城を、解放する」


神殿への進軍、対決の刻


アルデンテ教大聖堂――かつて神と王が並び祈りを捧げた場所。

その奥の最奥、禁域の神域へと、ヌードル卿と彼の軍勢は雪崩れ込む。


ガストロは玉座のように腰掛けた石壇の上で、静かに待っていた。


ガストロ:「来たか、王にして器よ。

麺神の名を借りて王を討ち、神をも超えんとする、その傲慢……

まこと、我が理想の“食材”だ」


ヌードル卿:「もうお前のことばには、出汁(意味)がない。黙れ」


剣閃が走る。

聖堂の柱が砕け、空間が歪む。

ペスカトーレとカルボナーラが教団兵を抑える中、ヌードル卿はついにガストロの胸に刃を突き立てる。


煮立つ器、グルテン・ネロ降臨


血を吐きながらも、ガストロは口の端を笑みに歪めた。


ガストロ:「器は満ちた。……ならば、火を入れるだけよ」


彼が最後に唱えたのは、古代語で構成された禁呪――


ガストロ:「《Pasta Malitia… Gruten・Nero, Descende》」


その瞬間、ヌードル卿の痣が赤黒く発光し、彼の身体に激痛が走る。


ヌードル卿(呻き声):「が……ッ……な、にを……!」


彼の背から立ち上る黒煙――それはかつて生命のスープを枯らした、麺魔グルテン・ネロの影。


ガストロ:「麺魔よ、この器に宿りたまえ。そして我が魂と一つになり、新たな神となるのだ……!」


光が、闇が、崩れゆく聖堂を呑み込む――

王は器と化し、司祭は魔となる。


スープは煮えたか、悪夢の開宴


そして、王都の空が赤く染まった。

世界は、再び“煮えすぎ”という名の災厄を迎えようとしていた。


――この世のスープは、いま、焦げ始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ