第十麺B:「山にて開かれる真実の蓋」
霧深き山、カルボ隊の審判
カルボナラ山脈――峻険なる白の壁が、旅の終わりと新たな始まりを告げる。
その麓、リゾたちが足を踏み入れた瞬間、森の影から黒い鎧が現れる。
全身を硬質な黒で包んだ騎士たち、それは伝説の守人《カルボ隊》だった。
カルボ隊兵:「剣を置け。名を名乗れ。我らは山の守人、カルボ隊!」
一触即発の空気の中、現れたのは隻眼に白銀の外套を纏う屈強な男。
カルボ隊を束ねる隊長にして、山の審判者。
ボルチーニ・カルボネロ:「……リゾ・アルデンテ。お前が“あの王の血”か。話は神殿で聞こう」
アルデンテ教・本神殿
深く、静謐な谷に建つ大理石の神殿。
神気漂う空間に案内されたリゾたちは、古の神官たちの前に立たされる。
ルーチェが父の死、そしてヌードル卿の即位と現状を語ると、老神官は重々しい口調で語り始める。
老祭司:「……生命のスープが干上がるなど、我らも見たことはない。
それは災厄の麺魔、《グルテン・ネロ》が蘇らんとする徴。
この大地に再び“過剰な煮沸”が訪れる前兆だ」
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痣の正体、隠されし血
老祭司:「ヌードル卿が持つ痣、“アルデンテの呪い”と呼ばれておるが……
真の名は“グルテンの印”。すなわち、麺魔の器に現れる刻印」
ルーチェの顔から血の気が引き、リゾは膝をつく。
リゾ:「あの痣は……兄上の……。じゃあ、あの人は……」
ボルチーニが静かにうなずく。
ボルチーニ:「ファルファッレ陛下の最初の子。
生まれた時よりその痣を持ち、存在を教団に“消された”……
ヌードル卿こそ、お前たちの実の兄だ」
沈黙が、神殿に流れる。
ルーチェ(震え声で):「じゃあ……私たちの父を、殺したのは……兄……?」
老祭司:「そして、その痣を持つ者に麺魔を降ろした後、
ガストロは魂の器を乗っ取り、この世に“グルテン・ネロ”を完全に顕現させようとしているのです」
煮詰まる真実、冷めゆく決意
兄が父を殺した。
兄が麺魔の器だ。
そして――ガストロは兄すら“食い物”にしようとしている。
だが、リゾの目に宿ったのは悲しみではなかった。
それは、芯の残る“アルデンテの怒り”。
リゾ:「……兄上を、止めなきゃならない。
家族として。……この国の最後の麺として」