間麺:翠の記憶、封じられし魔麺
翠の霧、ジェノベーゼの森
ヌードル卿は最後の四麺ジェノベーゼ姫を探していたがその行方は知らなかった。
その頃、王都から遠く離れた、緑の霧に包まれた古の森――バジリカの森。
ここに、姿を見せる者などめったにいない。
だがその霧の奥に、ひときわ濃く魔力を帯びた気配があった。
翠のローブをまとい、目元を隠す女――ジェノベーゼ。
ジェノベーゼ(独白):「愚かなガストロ……。
麺神の力を手に入れることなど、誰にも許されてはいないのに」
彼女のまわりに舞うのは、緑の魔力――ハーブと記憶の魔術。
その指先が空をなぞると、一冊の封印された魔道書が開かれる。
ジェノベーゼ:「“あの麺魔”を蘇らせようというのね。……ガストロ、貴様だけは絶対に許さない」
語られる禁忌の過去
かつて、遥かなる古代。
麺神アルデンテは“調和”を司る神であり、世界にスープと魔力の流れを与えた存在だった。
しかしその対極にいた存在がいた。
その名は――
“グルテン・ネロ”
(Gluten Nero:黒き麺魔)
グルテン・ネロは、“力と濃度こそすべて”を信条に、
世界の魔力を吸い尽くそうとした恐るべき存在。
ジェノベーゼは、かつてアルデンテと共にこのグルテン・ネロを封じた最後の魔法使いだった。
ジェノベーゼ:「奴が再び蘇れば、世界は“沸騰”ではすまない。
全てのスープは煮詰まり、焦げ、灰になる……」
呪いの真実
ジェノベーゼの視線は、古文書の一節へと向けられる。
そこにはこう記されていた。
「グルテン・ネロの血を受けし者は、首筋に黒き渦を抱く。
それはアルデンテの血ではなく、“麺魔の印”である」
「教団はそれを“アルデンテの呪い”と呼び、
真実を隠すための美名で覆い隠した」
ジェノベーゼは静かに立ち上がる。
ジェノベーゼ:「ヌードル……お前の痣は、“王の証”ではない。
麺魔の器となるべき器、“災厄のしるし”だ」
「それでも、お前が進むというなら……いずれ、お前と私も剣を交えることになるだろう」
森に響く翠の風
ジェノベーゼは再び、霧の奥へと姿を消す。
その背には、封じられたはずの記憶と、決して交わることのない“未来”が揺れていた。
世界は二つの血に引き裂かれていた。
麺神の血か、麺魔の血か。
真のアルデンテとは、果たして何者だったのか――