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ハッピーエンドの未来を目指して  作者: 池崎数也
第12章

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第300話:帰還 その1

 北の大規模ダンジョン――『朽ちた玄帝のダンジョン』を破壊し、諸々の後処理を終え、王都にて勲章の授与式を終えた俺は、学園という平和な世界に帰ってきた。


 帰ってきた、のだが。


「おかえりなさい。全員の無事での帰還、嬉しく思うわ」

「……なんで俺の部屋にいるんです?」


 とりあえず寮で荷解きするかぁ、なんて思って帰宅したら、部屋の中にオリヴィアがいた。どうやら俺が帰ってくるのを待っていたらしい。


 どうやって部屋に入ったんだろう? って、そういえば掃除を担当する使用人の中にオレア教の関係者が紛れ込んでるんだったか。そこから鍵を開けたのかな?


(……いや、わざわざ鍵を開けて部屋の中で待っている意味は?)


 普段通り、図書館で待っていてくれれば夜にでも顔を出したんだが。どのみち報告が必要だったから、今夜にでも顔を出すつもりだった。今は夕方であり、正直前倒しで顔を合わせる必要があるのかという疑問がある。


「あら、大規模ダンジョンを破壊した英雄の帰還よ? こちらから出向くのが筋ではないかしら?」


 俺の疑問に対し、オリヴィアがからかうように言う。もっとも、からかうといっても表情は作ったような笑顔だし、これまた演技感満載の声の抑揚が僅かに変化した程度だったけども。


「かつて『魔王』を『封印』した方に英雄と言われても、さすがに胸を張る気にはなれませんね。まあ……なんとか無事に帰ってきました」


 俺は苦笑を浮かべて答える。本当、なんとか無事に、って言葉がよく合っていた。


 玄武との戦闘中、少しでも足を滑らせていれば死んでいただろう。泥が溜まったくぼみを踏まずに済んだのは運が良かった。仮にくぼみを踏みつけようとも大丈夫なように走っていたが、さすがに影響がゼロとはいかないからだ。

 玄武に追いつかれていれば、それこそプチッと音を立てて潰されていたに違いない。


「謙遜はしなくていいわ。わたしの予想ではボスモンスターを倒すまでに何回か挑戦する必要があると思っていたもの」

「……竜騎士の手配をしていたのに、ですか?」

「ええ。可能性が低いからこそ、五人程度しか待機させなかったわ。こんなことなら最初からもっと待機させておくべきだったわね」


 情報の伝達に時間がかかったわ、なんてことを真顔で言うオリヴィア。どうやら一回目で『朽ちた玄帝のダンジョン』を破壊するのは予想外だったらしい。


「俺としても少し予想外というか……おおよその報告は届いていると思いますが、割とあっさりボスモンスターが見つかりまして。こちらの消耗も少なかったので挑みました」

「あなたの()()()()は関係ないのかしら?」

「今回に限っては関係なかったですね。事前の調査が優秀で、進んだ先に運良くボスモンスターがいた……それだけのことでした」


 いくら『朽ちた玄帝のダンジョン』が固定ダンジョンとはいえ、前世で遊んだゲームのマップを覚えていられるほど記憶力に自信はない。それにあくまでゲーム上のマップであって、現実はもっと広かった。

 そのため、今回ボスモンスターのところまで到着できた理由としては、モリオンのマッピング能力が良かったってことぐらいか。魔法での攻撃もそうだけど、それ以外の部分でも大いに助けられた。


(『赤銅百花勲章』をもらえたし、卒業後の進路はこれでバッチリだろ。モリオンならどこに行っても成功するだろうけどさ)


 大いに助けられたが、それに見合った報酬をモリオンが得られたかといえば微妙なところか。ただ、それとなく確認しても満足そうだったし、問題はないか。


「ふうん……運良く、ね」

「……それが何か?」


 俺の言葉に対し、意味深に呟くオリヴィア。何か引っかかることでもあったのだろうか。


「今回の件、貴方がリーダーとして一番目立っていたようだけど、()()()()()()()()()()は誰が一番活躍したのかしら?」

「それは……ボスモンスター相手に限っての話ですか?」


 俺が尋ねると、オリヴィアは小さく頷く。ボスモンスター以外の部分に関してなら、リリィの『召喚器』に色々と頼ることがあったんだが。


(自分で言うのもなんだけど、一人で囮をやって首まで落とした俺が一番活躍したって言える……よな? でもそんな俺から見て一番活躍したのは……)


 魔法を駆使して様々な面で役に立ってくれたモリオンか、あるいは土壇場で『生新光明』を身に着けた透輝か。いや、オリヴィアの質問から察するに――。


「透輝……ですね。ボスモンスターを仕留める際、アイツがいきなり光属性の上級魔法を使いまして。それがとどめをさすためのきっかけになりました」


 ()()がなければ引っ込んだ玄武の頭を表に出すことができず、倒し切れなかった。そう判断して答えると、オリヴィアは納得したような息を吐く。


「なるほど……どういう形であれ、活躍したのね。そういう星の下に生まれたのか、あるいは貴方が語った未来予知の主役だからか」

「アイツが土壇場で覚醒するのは割といつものことですけどね……」


 本当、追い込めば追い込むほど光り輝くやつだ。今度もっと追い込んでみよう。俺とランドウ先生相手に二対一で戦わせてみたらもっとピカピカ輝いたりしないだろうか。


「普通は貴方みたいに積み重ねてきたことしかできないのよ。貴方が学ぶスギイシ流だって、基礎を学び続けたから奥義に至ったんでしょう? ()()()()がない、あるいは明らかに不足しているのに結果を叩き出す……それも才能と呼ぶべきなのかしらね?」


 弟子なんだからよく見ておきなさい、と付け足すオリヴィア。そこに真剣なものを感じ取った俺が素直に頷くと、オリヴィアは話題を変えるように一つ咳払いをした。


「今後に関してだけど、他の大規模ダンジョンについては現状、破壊を検討している段階よ。できれば『魔王』が発生する方角を絞りたいから、次に破壊するとすれば西の大規模ダンジョンになるわ」


 東の大規模ダンジョンに関しては、実家うちの騎士団が優秀だからと後回しにするようだ。辺境伯家の嫡男としては真っ先に破壊したいところだが……。


(東部の国境線、接してる国が割と好戦的なんだよな……破壊するとそのまま戦争が始まるかもしれん……)


 大規模ダンジョンを破壊した結果、空いた領地を巡って戦争が発生する可能性が高いのが王国東部だったりする。そのため後回しにするのもやむを得ないだろう。


 『花コン』だと東部で『魔王』が発生した場合、ウィリアム達が命を賭けて時間を稼ぎ、主人公達が到着するまで守り抜いてくれる。

 その結果サンデューク辺境伯家の騎士団が壊滅するわけだが、事前に『魔王』が発生するとわかっていれば手の打ちようもあるわけで。


(西の大規模ダンジョンを破壊できれば東と南が残る……その中間、南東付近に俺達が待機して、『魔王』が発生したら竜騎士ですぐに報告。そこから急行すれば少しは接敵までの時間を減らせるか?)


 残っている大規模ダンジョンから『魔王』が発生する可能性が高いという『花コン』の知識を活かし、なおかつ『魔王の影』に余計なことをさせずに済むのはそんなところだろうか。


 できれば『魔王』が発生するまでに『魔王の影』をある程度仕留めておきたいが、こちらは大規模ダンジョンと違って神出鬼没だ。そのためあくまで可能であれば、と言う他ない。


(国や各地の領主の軍も南東方面に展開しておいて、情報が入り次第向かう……いや、事前に大軍を置いていたら別の方角で『魔王』が発生するとまずい。待機しておけるのは俺達みたいな少数か)


 まだまだ未来の話だが、その辺りもオリヴィアと詰めていかなければならないだろう。俺がそんなことを考えていると、オリヴィアが苦笑を浮かべる。


「検討の段階だから破壊はまだ先になるわ。だから今はゆっくりと休んでちょうだい。学園の行事も色々とあるでしょう?」

「あるにはありますが、文化祭はともかく、武闘祭は出場禁止なんですよね……」


 去年優勝したこともあり、今年からは出場禁止だとコーラル学園長から通達されている。俺としても今更学生相手に戦うのはどうか、なんて思うが。


(でも透輝と戦うのはアリだよな……透輝に学年不問、条件不問戦に出てもらって……あんなに言われたし、出場はできないから無理か)


 エキシビションマッチみたいな感じで、学年不問条件不問戦で優勝した生徒と戦うとかも駄目だろうか、なんてことを考えてしまう。ただ、今ならまだ俺の方が有利だし、せっかく透輝が優勝したとしても決勝戦の後に俺と戦うのは嫌がらせみたいなものだろう。


(訓練の時に戦えばいいしなぁ……っと?)


 不意に、それまで会話をしていたオリヴィアが部屋の窓を開け放つ。そしてこちらへと振り向き、軽く手を振ってきた。


「必要なことは伝えたけど、やっぱりわざわざ出向くものじゃないわね。()()()()はここで失礼するわ」


 そう言うなり、オリヴィアの姿が消える。窓から外へと飛び出したのだろう。


 そんなオリヴィアの行動に疑問を挟む前に、俺も部屋の外に気配を感じ取っていた。おそらくはオリヴィアもこの気配に気付き、気を遣って立ち去ったのだ。


(こういうことがあるし、やっぱりこっちから図書館に出向く方がいいな)


 今回は大規模ダンジョンから無事に帰還したことを祝う面もあったのだろうが、やっぱり普段通りが一番だな、なんてことを思う。図書館で会話する方が機密も保持されそうだし。


 そうした考え事をしながら玄関へと足を向けた俺は、扉の前で戸惑うようにウロウロとしている気配に苦笑を浮かべた。不審な動きだが、一体誰だろうか。不審といってもオリヴィアが見逃した以上、怪しい人物じゃないだろうけど。


 俺は玄関前の人物が扉を叩くよりも先に、こちらから扉を開く。わざわざ部屋を訪ねる以上、相応の理由があると判断して。


「あっ……ミナト様……良かった」


 そこには、俺の顔を見て安堵したようにほっと息を吐くカリンが立っていた。

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