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ハッピーエンドの未来を目指して  作者: 池崎数也
第10章

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第260話:協力関係

 オリヴィアからの爆弾みたいな話は無事、平和に終わった。


 俺にオレア教の教主を継がせるというオリヴィアの目的は保留である。『魔王』を『封印』することしかできず、なおかつ俺が存在を消滅させなかった場合に改めて考える予定だ。それと並行して俺以外の後釜を探すようにも勧めたが……どうなることやら。


「それで? あなたが持っている情報、いっそのこと全部吐き出しなさいよ」


 話が一段落したかと思えば、オリヴィアがそんなことを言い出す。


「吐き出したら始末しません?」


 気持ち、雰囲気が明るくなったオリヴィアに冗談混じりの言葉を投げる。するとオリヴィアは肩を竦めた。


「隠している情報次第ね。伏せていたらまずい情報を伏せていたら……わかるわね?」

「さすがにそんな危険な情報は伏せていませんが……」


 自分が転生したこと、それにリリィという隠しておきたかった情報まで伝えたのだ。これ以上の情報は早々ない。


 この世界が『花コン』というゲームの世界に酷似していることは……今更か。かつてのオオイシ、レン、アサヒの話は『花コン』でも登場しなかったし、元々アテにし過ぎるつもりはなかった情報が更にアテにならなくなっただけだ。


(この世界がゲームの世界で、あなた達はゲームの登場人物です、なんて情報はいらんわな。それを言ったら俺もゲームの登場人物になってしまうし……そもそも俺が色々と行動したせいで変わっている部分が多いし……)


 必要な情報、不必要な情報を脳内で取捨選択していく。()()をオープンにしてしまった以上、伝えられることは伝えておこうと思った。以前は未来を知ることをオリヴィアも警戒していたが、ここまでくれば誤差だろう。


「んー……逆にこれが知りたいって情報はないですか? こっちも色々と情報を抱えてはいるんですが、どれがオリヴィアさんにとって必要なのかわかりませんし」


 『花コン』を基準とした情報だが、使える部分もあるだろう。ただ、あくまで参考程度に留めてもらう方が無難だが。


「そうね……『魔王』がどこで発生するか、わかる?」

「俺が知っている情報だと、大規模ダンジョンのどこかになります。大規模ダンジョンを全部破壊して特定の条件を満たすとここ……地下の『最深ダンジョン』が発生場所になることもありますが、こちらは考慮しなくていいかと」


 なにせグランドエンドの条件を満たさないと『最深ダンジョン』がラストダンジョンにはならないのだ。今の透輝だとグランドエンドを目指しこそすれど、達成は困難だろう。


「大規模ダンジョンのどこか、か……特定はできないのね?」

状況ルートによって変わるんですよ。今のままだとランダムです」

「……大規模ダンジョンを破壊したら、どうなるの?」

「一応、残っている大規模ダンジョンのいずれかで『魔王』が発生する可能性が高いですが……破壊したダンジョンの跡地で発生することもあるんですよ」


 ルートによるが、完全な特定というのは難しい。


 ナズナルートに入れば東のダンジョンかその跡地で『魔王』が発生するのだが、それはサンデューク辺境伯家が潰れたり、ウィリアムが『無名の英雄』として死んだりと、シナリオの都合でそうなった側面が強い。


 この世界でもそういった強制力が働くのなら可能性は否定できないが、そんな強制力があるのならミナトがこんな状況になっていないだろう。『花コン』でも『魔王』の発生場所が固定化されるルートはほとんどないし、ほぼランダムと見て間違いはないだろう。


「地味に厄介ね……戦力を張り付けるには距離がありすぎるし、四分割して迎撃するのは自殺行為だわ。そうなると……」

「三ヶ所破壊して、残りの一ヶ所で『魔王』が発生するように仕向けますか」

「それが妥当ね。でも、()()()()()わ」

「……『魔王の影』が何かやりそうですよね」


 ゲームなら定められたプログラム以上のことは起きないが、ここは現実だ。

 俺達、あるいはオレア教の動きを見た『魔王の影』が何かしらの手を打ち、大規模ダンジョン以外の場所で『魔王』が発生するように仕向けるかもしれない。可能かどうかは別として、そんな可能性があるというだけで警戒せざるを得ないのだ。


「破壊する難易度は置いておくとして、短期間で複数の大規模ダンジョンを潰せばこちらが『魔王』の発生地点に関して知ったと気付くかもしれない……そうなると、潰せて二つってところかしら」

「二択に持ち込みますか。そうなるとどこを残します?」


 サンデューク辺境伯家の人間としては、領地における『魔王』の被害を抑えるためにも東の大規模ダンジョンを破壊してしまいたい。そうでなくともただでさえ『花コン』でよく被害に遭うのだ。それもこれもミナトが悪いんだけどさ。


「あなたには悪いけれど、サンデューク辺境伯家の騎士団の精強さから考えると東の大規模ダンジョンは残したいわ。ダンジョンの危険さから考えると潰しても良いのだけど……」

「危険さで言えば北の大規模ダンジョンを優先するべきでは? あそこ死霊系モンスターばっかりでしょ?」


 北の大規模ダンジョン――『朽ちた玄帝げんていのダンジョン』と『花コン』で呼ばれたそのダンジョンは、規模もさることながら出現するモンスターが死霊系のみと嫌がらせみたいなダンジョンだ。


 大規模ダンジョンということで上級の死霊系モンスター……上級の闇属性魔法を操り、なおかつステータスも全体的に高いヴァンパイアなどが現れる。


 『魔王』が発生してこの死霊系モンスター達が津波のように押し寄せたなら、大惨事になるだろう。即死する魔法が大量に飛び交い、人類側が一気に瓦解しかねない。


(『花コン』だと大規模ダンジョンを一つ破壊すると、他の大規模ダンジョンに出現するモンスターのレベルが高くなるんだよな……五レベルだっけ? 先に潰しておかないとまずいダンジョン筆頭だわ)


 ちなみに西の大規模ダンジョンは『まが白帝はくていのダンジョン』という名前で、獣系モンスターが出現しやすいダンジョンだ。


 南の大規模ダンジョンは『病んだ炎帝えんていのダンジョン』という名前で、こちらは鳥系モンスターが出現しやすい。


 俺が修行で利用した東の『堕ちた青帝のダンジョン』はドラゴン系モンスターが出現する点は厄介だが、その分モンスターの出現率が控えめだったはずだ。


 これらを並べて比較した場合、死霊系、鳥系が戦い難くて厄介だろう。ドラゴン系も厄介だが、数が少ないから強者を当てれば対処しやすい。


 つまり東西の大規模ダンジョンを残す形になるが――。


「『魔王』が発生する直前でもう一つ破壊して、発生場所を特定する……無理ですかね?」

「それをやるには『魔王』がいつ発生するか、正確な日時がわからないと無理ね。そうじゃないと迎撃の部隊を展開する時間もないわ」

「ですよね……そうなると『魔王の影』を事前に全て仕留めてしまう方が現実的ですか。いや、途中で潜伏するかな?」


 考えればわかることを、敢えて言葉にすることで理解を深めていく。この辺りの情報は貴重かつ重要で、少しでも齟齬があると困るからだ。


「透輝が育てているドラゴンがいるじゃないですか。アレ、光属性の光竜でして、ダンジョンに突入することができるんですよ。それを上手く使ってどうにか策を立てられませんか?」

「……育っていないからまだ何も言えないけど、それが本当なら大規模ダンジョンの破壊もかなり楽になるわね。でも光竜でダンジョンに突入した場合、何かしらのデメリットはないのかしら?」

「俺が知っている情報だと特には……光竜なんで、ダンジョン側のモンスターから攻撃される危険性があるぐらいですかね?」


 『花コン』だと基本的に移動手段で、ダンジョンに突入してどうこうっていうのはイベントが描写されるシーンだけだった。それ以外だとダンジョンに潜り、ダンジョンを破壊するのは主人公達であって光竜は関係ない。あくまで移動手段に徹していた。


「『魔王』が発生する直前に大規模ダンジョンに突入して、即座に破壊……いえ、それじゃあどの道『魔王』の発生タイミングがわからないと無理……ドラゴン種の機動力を活かして、短期間で四ヶ所全ての大規模ダンジョンを破壊する……いえ、駄目ね、出現地点が読めなくなる……やっぱり三ヶ所……」


 ぶつぶつと呟きながら思考に沈むオリヴィア。


(俺が知らない情報、オレア教の戦力や技術なんかから何かしらの名案が出てくるかと思ったが……厳しいか?)


 一発逆転の秘策なんてものは滅多に出てくるものではないのだろう。眉を寄せて考え込むオリヴィアを見ながら、俺も思考を巡らせる。


(一番良いのは『魔王の影』を全員仕留めて邪魔が入らないようにして、大規模ダンジョンを一ヶ所だけ残して破壊。残った大規模ダンジョンの近くで『魔王』に備え、発生と同時にこちらも軍勢を叩きつけて道を開き、強者で『魔王』を仕留める……うん、無理だな)


 それはあまりにも自分達に都合が良すぎる展開だろう。『魔王の影』がそれだけ間抜けで、こちらが全員仕留められるほど不用心なら楽なんだが。


「……駄目ね。たしかに()()()使()()()情報なのだけど、今の状況だと使い道がないわ。とりあえずダンジョンには突入させず、普通の乗り物として使っていてちょうだい。ダンジョンに突入できるという情報は漏らさないように」

「了解しました。ダンジョンの対処が難しいなら『魔王の影』はどうです? あいつら仕留められませんか?」


 『花コン』の通りなら四体の『魔王の影』がいるはずだが、それらを仕留めるだけでかなり楽になるはずだ。『魔王』の発生は防げずとも、余計な横槍がなくなるのだから。


「わたしが出張ると『魔王の影』は逃げるのよね……おそらく、ランドウ=スギイシが相手でも逃げるでしょうね」

「……あいつら、逃げるんですか?」

「逃げるのよ。だからこそ厄介なの。殿にモンスターを残して撤退、なんてこともよくやるわ」


 バリスシアと戦った身としては、そう簡単に逃げるとは思えなかったのだが。


(いや、そうか……あいつらにとっての最優先は『魔王』の発生だ。人間との戦いは降りかかる火の粉を払うようなもの……勝てないなら逃げるか)


 ゲームじゃないんだ。俺というかリリィがそうしたように、『花コン』だと中ボスのバリスシアが相手でも逃げられたし、相手も追ってこなかった。ゲームなら『逃げられない』と表示されそうなところだが、可能か不可能かは別として、戦闘中だろうが逃げようと思えば逃げられるのだ。


「なんか、俺の印象からは少しずれますね。少なくともバリスシアは自分から逃げるようには見えなかったんですが……」


 ランドウ先生が相手なら必死に逃げるんだろうか。『これで勝ったと思うなよ』とか捨て台詞を吐いて逃げるんだろうか。それはちょっと、『魔王の影』に対する落胆が……。


「へぇ……あなたはそう思ったの?」

「ええ。なんか途中から興味を持たれたというか……モンスターを潜り抜けて一撃叩き込んだら、()()()()()()()()()()()ように感じました」


 まあ、リリィが俺を担いで逃げる際、追わない程度の執着だろうが。あるいはリリィが速すぎて追っても意味がないと諦めたのか。


「ふむ……なるほど……そうなると……」


 俺の話を聞いて、オリヴィアが何かに納得したように呟く。そんなオリヴィアの様子を見た俺は、まずいことを言ってしまったか? と警戒する。


「そう、ね。『魔王の影』が相手でも防戦ぐらいはできて、上手くやれば勝てる可能性もゼロじゃない……つまり、相手が()()()()()程度には強い、か」

「あの、オリヴィアさん?」


 その呟きから、おおよその考えを見抜いて思わず声をかけてしまう。するとオリヴィアは俺を見て、薄く微笑んだ。


「こちらから『魔王の影』が襲ってくるように仕向けて、あなたが仕留める。そうすれば逃げられる可能性も少ないと思わない?」

「……俺なら()()()()()()と?」

「ええ。メリアをダンジョンに同行させると言ったのも、あなたを狙って再びバリスシアが襲ってこないか、なんて期待もあったのよ? あの子に関しては隠してきたから強さがバレにくいし……もし次に遭遇する機会があって、メリアを戦わせたら、必ず相手を仕留めてちょうだい」

「情報を渡さないために、ですね。上手くやれば『魔王の影』を全員仕留められますか?」


 今後の行動に関して決められることを決めつつ、俺は期待を込めて尋ねる。


「難しいけど、それでも可能性はゼロじゃないわ。あなたのお気に入りの()()()()にももっと強くなってもらって、大規模ダンジョンも可能なら破壊しつつ、『魔王の影』も仕留めていく。言葉にすると簡単だけど、それしかないわね」


 『魔王』の発生自体は止められないため、発生する場所を特定したり、余計な妨害を排除したりする方向で進めていこう、という話なのだろう。


「わかりました。ひとまずはそれで」

「ええ。こちらはこちらで『魔王』対策を進めておくわ。何かあったらすぐに連絡をしてちょうだい。最優先で対応するわ」


 そう言って、互いに頷き合う。


 こうして俺は、オリヴィアとこれまでよりも更に深い協力関係になるのだった。

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