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アリスとマリアの冒険  作者: 赤葉響谷
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プロローグ

 かつて、この世界は『神』と呼ばれる超常の力を持った者達によって管理され、人間は神々の支配の下、まるで奴隷か愛玩動物、もしくは家畜のような生活を余儀なくされていたと言われている。

 その神々による支配がどれほどの年月続いたのかは資料が残っていないので正確には分からないが、しかしそれでも神々の時代が唐突に終わりを迎えたことだけは間違いない。


 現在、人類による新たな歴史が紡がれるようになって千年以上の月日が流れ、人々に記憶されている神の名はたった二柱のみ。

 神の時代を終わらせ、善神を天界へ導くと同時に人類に希望を授けた太陽の女神ソルマリア。

 太陽の女神と敵対し、神の時代を存続させるべく邪神の長として戦った月の女神ルナマリア。

 二柱の女神による壮絶な戦いの記録を最後に神の時代は唐突に終わりを迎え、それから数百年に及ぶ混乱と混沌の時代を経て、ようやく人類による統治の時代、人歴が始まるころには既に神は伝承と古い遺跡の資料のその存在が記されただけの存在と化していたのだ。


 しかし、だからと言って完全に神々がこの世界から姿を消したわけでは無い。

 太陽の女神ソルマリアは人類を見守るため他の善神と同じように天界へ行くことはせずに下界へ残り、今なお人類を見守り続けていると言われており、善神と戦った邪神たちもその多くが強大過ぎる力を持つが故に完全には滅することができず、邪神の長である月の女神ソルマリアを始めとした数多くの邪神が今も何処かの地に封じられていると伝わっているのだ。

 そして、封じられた邪神たちの怨念や瘴気によって世界には魔物があふれ、今なお邪神たちは人間の脅威としてその爪痕を世界に残し続けており、時には邪神の眷属か、もしくは邪神そのものではないかと言われる強大な災厄が世界に出現することもある。


 だがしかし、人類はいつまでも邪神の影に怯えるだけのか弱い存在ではない。

 太陽の女神ソルマリアにより力と叡智を授かった人類は日々進歩を続けており、既に人類は世界を守るためにそれらの脅威に対抗しうる力を身に着け、この千年間幾度も訪れた脅威から世界を救ってきたのだ。

 そして、それら世界の脅威を退けた英雄たちの雄姿を後世へと語り継ぎ、新たな英雄を目指す者たちに先人たちから受け継いだ技術や知識を与え、それを発展させることで人類は常に進歩を欠かさなかった。


 それでも、人類には一つの大きな懸念があった。


 神代の終わり、太陽の女神ソルマリアは人類にとある一つの、人の世終わりを予見させる重大な予言を残したとされているからだ。


『人の世に移り、八つの数字が重なる日に人類を滅びの運命より救う可能性を秘めた者がこの世に生れ落ちるであろう。しかし、生れ落ちる運命の御子は2人。一人は平和と安寧を、一人は支配と恐怖を持って人類を導くだろう』


 その予言が本当に太陽の女神ソルマリアによって下されたものなのか、そもそもその予言が行われたという事実が本当に存在するのかは誰も知らない。

 しかし、予言にある八つの数字が重なる日とは人歴1111年11月11日とされており、その日を狙ったかの如く各国で次々に王子や王女が誕生したことで人々は『やはりあの予言は真実で、この中に予言の子が存在するのではないか』と噂すようになった。

 しかも時を同じくして『魔王』を名乗る者が現れ、魔物を率いてそれほど大きくはない島国ではあっても一国を滅ぼし、世界の脅威として君臨したことで世界は大いに混乱し、この魔王こそが予言にある支配と恐怖をもたらす者で、平和と安寧をもたらす者がこの脅威を退ける英雄となるべき存在なのだと信じられるようになり、その支配勢力を僅かずつではあるものの着実に広げている魔王の脅威に怯えながらも新たな英雄の出現を信じて人類は戦い続けていた。


 そしてそんな混沌の時代が15年以上以上続いた人歴1127年の4月、魔王が支配する領域から離れているが故に比較的平穏な日々を維持しているグランフォリア王国に存在する小さな田舎の村、ローエル村に住む予言の日に生まれた一人の少女、アリス・ランベルトの物語がひっそりと幕を開けようとしていた。

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