↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/137

81 奇人、合流する

ようやく絳が合流いたします

「紫蓮《シレン》、逢いたかったです、ああ、よかった」


 職務を終え、戻ってきた絳《コウ》は抱きつかんほどのいきおいで紫蓮のもとにかけ寄ってきた。紫蓮は肩を竦めて微苦笑をかえす。


「はいはい、このとおり、なにごともなかったよ」


「ほんとうですね? 襲われたり殺されたり、危険なことはなかったのですね?」


「ほら、脚を確かめてごらん。ちゃんとあるだろう? 霊鬼《ゆうれい》じゃないよ」


 紫蓮《シレン》は蓮のすそから覗く脚を動かしてみせる。絳は安堵したのか、ほっと息をついた。

 絳《コウ》は待機していた玄《ゲン》 戒韋《カイイ》に声をかけ、護衛役を交替する。戒韋は無言で頭をさげて、ふらつきながら退室していった。


「葬礼は明晩にきまったそうだよ」


 皇族が薨去したともなれば、都にいる斉《サイ》の要人たちが参列することになる。幼帝《ようてい》も親臨《しんりん》するはずだ。


「今晩はここに泊まるよ。納棺するとき、最後の死化粧《しげしょう》をしないとね。髪を結わえたり紅《べに》を差したり、まだまだやることがあるんだ」


「柴《サイ》 綜芳《スオウ》は男ですが、紅を差すのですか?」


 絳は意外そうにした。


「体温《ねつ》の通わなくなった肌に息を吹きこむためだよ。頬や額、顎の先端あたりに頬紅《ほおべに》をはたく。そうすれば、命があったときと変わらない暖かみのある肌がよみがえるんだ」


 なお、乾いた頬紅ではなく、脂《あぶら》で練られたものをつかうのが好ましい。紫蓮はさきに馬脂《ばーゆ》とまぜあわせておいた。


「ちょっとだけ、お時間をいただいても構いませんか。院子《なかにわ》に」


 絳《コウ》に誘われて、紫蓮は重要な話があるのだとすぐに察した。

 時刻は黄昏《こうこん》の終(午後九時)、すでに女官たちは眠りについたのか、邸内は静まりかえっていた。階段にも廻廊にも燈火《あかり》はついていないため、提燈をさげて、院子にむかった。


「すみません。房室《へや》のなかでは誰が聴いているか、わからなかったので」


 紫薇《さるすべり》の根かたで絳が振りかえる。


「柴《サイ》 綜芳《スオウ》の死を事件として捜査するため、許可申請をしたのですが」


「無理だっただろう?」


「ご推察どおりです。ただ、収穫もありました」


 絳はさらに声を落とす。


「獄舎《ごくしゃ》に反幼帝派《はんようていは》の男が収監されていたらしく、琅邪《ロウヤ》が聴きだした話によれば、柴《サイ》 綜芳《スオウ》は幼き皇帝を排してみずからが皇帝になろうと士族《しぞく》をあつめ、動かしていたそうです。このことから、柴《サイ》 綜芳《スオウ》は宮廷に危険視されて暗殺されたものと考えられます」


 紫蓮が眼を見張る。続けて、悲しげに首を振った。


「いいや、柴 綜芳はそんなひとじゃなかったよ」


 玄《ゲン》 戒韋《カイイ》から聴くかぎり、柴 綜芳という男は穏健で争いを好まず、権力を欲することのないひとだった。

 もっとも、人の眼は真実だけを映すわけではない。欲がないように振る舞いながら、貪欲に他人を陥れようとしているものなど、紫蓮はざらにみてきた。

 だが、綜芳《スオウ》については、紫蓮は「そうではない」と言いきれた。


「皇帝になりたいなんてのはね、男が考えることだからだよ」

お読みいただき、ありがとうございます。

紫蓮の言葉の真意とは……?

引き続き、毎日連載を続けて参りますので、楽しんでいただければ幸甚です!


「続きが楽しみ」とおもってくださった読者様がおられたら、下部にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただければとっても嬉しいです。なにとぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。