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閑話2

 姉上はデビュタントを境に変わった。

 

 デビュタントボールから青ざめて帰ってくると、そのまま自分の部屋に引きこもった。何度声をかけても、全く出てこなかった。

 彼女が部屋から出てきたのは、結局一週間以上経ってからだった。6歳も年が離れているため、それまではケンカをすることもなく、とても仲の良い姉弟の関係だったが、出てきた姉はすっかり様子が変わってしまっていた。

「姉上……」

 声をかけても反応が薄く、僕も遊ぶこともなくなった。それから、姉上は狂ったように本を読んでいた。少なくとも僕にはそう見えた。


 姉上は魔力持ちなんかじゃなかった。小さな頃はそんなもの持っていなかった。でも、あの日以来姉上は変わった。魔力が発現し、魔力持ちになった。あまりそう言うことは起きないと言われているため、生まれた頃から持っていたが気づかなかっただけなのだろうと言うことだった。

 でも僕はそれを信じられなかった。小さな頃にあんなに一緒に遊んだ姉上はそんな力持っていなかったんだから。


 正直、別人だと思った。


 歩き方も、話し方も、考え方も、すべてが僕の知る姉上じゃなかった。それが許せなくて、僕は次第に姉上を避けるようになった。

 ただ、社交にも出ないため、結婚もせず、ずっと家にいた姉上のことは、心配でしかたなかった。父上も母上も心配は通り越してすでに諦めているようだった。


 避けていても、姉上の存在はずっと気になっていた。突然旅に出ると聞いたときは驚いた。しかも旅は騎士とはいえ男と二人きりだって!信じられないと思い父上にも進言したが、父上は大丈夫だとしか言わなかった。何が大丈夫なのか意味がわからないと思った。

 しかも旅先で倒れたなんて本当にびっくりした。すぐに帰って来るのかと思いきや帰ってこないしどういうこと?!と思った。

 でも、帰ってきた時の姉は、少し様子が変わっていた。まるで付き物が取れたような、そんな風に見えた。すっきりとした顔をした姉上の顔を見たら、なんだか昔の姉上が帰ってきたような気がした。

 僕の姿を見つけると姉上は驚いたような顔をしてから、嬉しそうに笑ってくれた。

 

 やっぱり姉上のことは好きだ。例え昔の姉上とは違っていたとしても。一緒に遊んでいた頃の姉上と違っていても。



「姉上」

 旅から帰ってきた姉上に話しかけてみた。以前は自分から話しかけることはほとんどなかったため緊張する。

「どうしたの、ユリウス」

「旅って、どんな感じだった……?」

 当然質問してきた僕に、姉上は嫌な顔せずいかに楽しかったかを話してくれた。話を聞いているうちにアキリア=ニルドールとか言う騎士のことが気に食わなくなったけど、黙って最後まで聞き続けたことを褒めて欲しい。

「ねぇ、姉上。姉上は、……幸せ?」

 僕の質問に不思議そうな顔をした後、満面の笑みで応えてくれる。

「えぇ、とても幸せ。心配してくれる両親と、ユリウスがいてくれて、私って恵まれてるなぁって実感してる」

 嬉しそうに笑う姉上に、僕もつられて笑ったが、慌てて取り繕う。

「そ、そう。姉上引きこもっていればいいからいいよね」

「あ、そうだ。私明日から働くの」

「ふぅん、って、え?!働く?!」

 意味がわからない。姉上の展開の速さについていけない。いつだって唐突だ。

「一体どこで?!」

「城で」

「城?!あ、侍女ってこと?」

 貴族令嬢の定番だ。ホッとしたが違う答えが返ってくる。

「ううん。文官補佐」

「文官補佐?!」

 訳がわからない。どうしたらそうなるんだ?!

「メディス卿、覚えてる?」

「え、あぁ、姉上の……」

 覚えてる。あいつだけが変わってしまった姉上と唯一、楽しそうに過ごしていた相手だって。

「彼の下で働かせて貰えるみたい」

「……、もう結婚してたよね?」

「え?えぇ、メディス卿は結婚してるけど」

「じゃあいい」

 姉上は首を傾げたが、僕は一人頷く。この間の騎士の件はあり得なかった。父上も何故か大丈夫とか言うし、ここは僕がしっかりしないと。

「姉上、城は危ないところだから、変なやつに引っかかったりしないように」

「あら、ユリウス心配してくれてるの?」

「ち、違う!僕まで迷惑掛けられたら困るから言ってるんだ!」

「そうね、迷惑かけないように気をつけるわ」

 そう言って笑った姉上はきらきらしていた。



 正直その後の展開がとんでもなく速くて、しかも最終的に王太子の婚約者とか言う意味不明な地位に姉上はなっていた。両親は喜んでいたが、意味がわからない!しかも、相手はあの騎士と同じ顔をしていたし、聞くところによると最近王太子に返り咲いたアキリア=トランドールだと言う。同じ名前だし!

 絶対旅の間になんかあったやつじゃねぇかぁあ!!!許さん!!!

弟ってどんな感じか全然書いてなかったので、書いてみました。

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