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 そんなことがあったせいか、騎士団長の部屋に入ると他の騎士長はもう揃っていた。

「遅くなってしまい申し訳ありません」

 そう言って入ると空いている席に促された。

 班ごとに制服の色が異なるため、席に付いているのは白い制服の第一班騎士長、青い制服を着た第三班騎士長。そして、騎士団を取りまとめる騎士団長も、第一班と同じく白い制服だ。ただし、襟元の金の刺繍が第一班よりも豪奢なものとなっている。

 空いた席にアキリアが腰掛けるとすぐに団長が話を始めた。


「さっそくだが、本題に入る。二週間後に隣国リヴァランの使節団がやってくる件だ」

 トランドールの東に位置するリヴァラン王国。隣国とは言うものの大きく険しい山脈があり、交易はどちらかと言うと少ない。しかも、リヴァラン王国は、未だに魔術が色濃く残る国であり、考え方や宗教が異なる。使節団が来るのも約20年ぶりと言う。

 

「何故急に?」

 第一騎士長のクァラが尋ねる。全員の疑問でもあった。

「その辺りは説明がない。第一王子を代表とした使節団とのことだ。目的がなんなのかいまいちはっきりしていないらしい」

 騎士団長も眉を寄せる。騎士団としては他国の者が来ると言うことに、当然ながら警戒するしかない。王族を守る近衛はもちろんのこと、城内、城外の警備も強める必要がある。

 

 城内は、使節団が宿泊することを考えるとその警備も必要となる。使節団に何者かが紛れ込んで侵入することなども考慮すると、当然近衛の体制も強化が必要だ。

 しかも相手が魔術に重きを置く国という事が、最も警備を難しくする。こちらが想定しているものでは、全く意味がない可能性があるのだ。


「それぞれ使節団来訪時の警備体制について見直しをするように。なかなか想定するのも難しいが、20年前の資料も僅かながら入手した。参考にしてくれ」

 使節団が最後に来たのは20年前だと言うのだから、それしか参考になるものがないのだ。


 それぞれが参考になりそうなものを手に取り中を確認した。アキリアも城内警備について書かれているものに目を通す。古い資料で読みづらかったが、魔術が使えない場所を確保することが、大切であると書かれている。


 魔術は魔力だ。魔力を行使し、繰り出す者が魔術師である。連想的に、リメラリエを思い出す。そして、彼女のことを「リメラ」と愛称呼びしていた男のことも同時に思い出した。

(……、一旦忘れよう)

 そう思いながらなかなか集中できない時間が続いた。


 会議は終わり、騎士長たちが出ていくが、団長に呼び止められる。

「何か?」

「あまり集中していないようだったが、体調でも悪いのか?」

 どうやら普通に心配されてしまった。

「ザイならともかく、アキリアがあまり話が身に入っていのは珍しいな。診療所に行ってみたらどうだ」

「いえ、大丈夫です。……、先程ファクトラン大公令嬢を城内で見かけましたが、ご存じでしたか?」

 その言葉に団長は少し考えるように視線を天井へ向けたが、思いついたようにアキリアをみた。

「そういえば、いつだったかの朝議で話があったな」

 朝議とは国王を入れた朝の会議のことで、騎士団長が騎士団の代表として出席している。

「確か文官補佐だったか?魔力の高さを見込まれて、サヴァトランのとこの下についてるって話だったが」

(……なるほど)

 だからあれほどリメラリエに対してメディスが偉そうだったのかと納得する。リメラリエにとってはメディスが上司になるのだろう。

「お前のところには連絡なかったのか?」


 ただ1ヶ月ほど臨時護衛騎士をしただけである。連絡を取ったりするような間柄ではない。

「いえ、特に。なので、先程見かけて驚きました」

「……、なるほどな」

 妙に納得した様子の団長に首を傾げる。しかし、団長はばしばしと強めに肩を叩いてきただけで、何も言わない。

「ちょっとザイとでも飲んで見ろ。最近飲んでないだろ?」

「なんですか急に」

「ちょっとした助言だ」

 それだけ言うと騎士団長室から追い出された。



 そのまま訓練場に向かうと、第二班所属の半数が訓練をしているところだった。基本的に訓練は半数ずつだ。残り半数は警備にあたり、午前午後で入れ替えたりもする。

 

 丁度ザイが指示を終えたのか、アキリアに気づき手を上げる。

「なんだった?」

「リヴァランの使節団の件だ。2週間後にくるらしい。警備体制の見直しが必要だ」

「リヴァランかー、ちょっと想像できなさすぎるな」

 ザイの感想の通りだった。アキリア自身もあまりピンと来ていない。リヴァラン自体についても、学ぶ必要があると感じていた。


「……今日夜時間あるか?」

 アキリアの問いにザイが固まる。

「めちゃめちゃ空いてるけど、どうした。なんかあったか。お前から誘ってくるなんて、嵐でも起きるのか」

「……やっぱりいい」

「わー!そんなこと言うなよ!冗談だよ!呑みに行こうぜ!俺も行きたい!」

 あわてて取り繕ってくるザイに冷たい目を向けつつ、アキリアはため息をつきつつ頷いた。


 まだ書類仕事が残っていたが、部屋に戻ってやる気が起きず、アキリアも訓練に参加していった。今は体を動かしたい気分で、なんとか剣を振れば少しだけ気分が落ち着いて来た気がした。

短いのが続いててすみません

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