別れ8
俺と仲間は通夜が始まる時間まで季夜の住んでいた町の中をぶらついて過ごした。
季夜がいなかったら付き合う事も無かったであろう仲間とは季夜がいなければ話す事は特に無く、俺は仲間の話に適当に相づちを打つばかりだった。
と言うか、何を言われても上の空であった。
季夜の住んでいた町。
その町並みを見ても俺の頭に残ったのは路地裏にいた三毛猫の姿だけだった。
大きなあくびをしながらのんびりとした風の三毛猫を見て、呑気そうで良いな、何て思った。
三毛猫は俺達の姿を見ると、にゃあ、と鳴いて塀を越えて行った。
黄昏時が訪れる頃、誰かが、「もう直ぐ時間だな」と言った。
それは勿論、季夜の通夜の時間の事を指す。
俺達は重い足取りで葬儀場へと向かった。
季夜の通夜には沢山の人が来ていた。
俺達以外の大学の季夜の友達は季夜の遺影を見て皆、泣いていた。
仲間達も流れる涙を堪えようともせず季夜の遺影を見ていた。
季夜の家族。
見知らぬ人達。
誰もかももが当たり前の様に涙を流していた。
胸が痛くなる。
俺は季夜の遺影を見ても涙が出なかった。
だって、季夜が死んだ事に実感が湧かなかった。
死んだなんて嘘だろ。
何かの冗談に決まってる。
そんな事ばかりを思っていた。
通夜の帰り、俺は、一人で帰る、と言い出した。
仲間は驚いたが誰も俺を止めなかった。
これから食事をして帰ると言う仲間と別れて俺は一人で駅に向かった。
星の無い暗い空の下を歩きながら、俺は何だかムカついて来た。
どうしてこんな事になったんだ。
季夜が何かしたか。
いつも明るくて、笑ってて、優しくて、照れ屋で、モテる癖に彼女もいなくて。
いつもビーチサンダル履いてて。
冗談が好きで。
俺のたった一人の親友で。
何も悪い事なんてして無い。
良い奴で……。
そんな奴が事故で死ぬなんて、この世に神様何てもんがいるなら、そいつは大馬鹿だ。
「馬鹿野郎」
気が付けば俺はそう呟いていた。
何をどうしたのか分からないが気が付けば俺は自分のアパートの部屋にいた。
安いパイプベッドにうつ伏せになり身を沈めている。
何も考えたく無かった。
体が妙に重たい。
疲れて疲れて仕方がない。
なのに眠れない。
泥に沈む様に眠りに落ちてしまいたいのに目だけ冴えているのだ。
そのまま時間だけが過ぎてゆく。
次の日、俺は大学を休んだ。