三角形な奇妙な日常22
その時間の隙間にたまにポチの事が浮かぶ。
すると心がざわつく。
そうしてはスマホに映る動画に集中する。
そうしているうちに、じきに眠りはやって来た。
その眠りの海の中にダイブして、深く深く、沈んで行った。
カーテンを閉め忘れたのか、眩しい光が俺の眼球を直撃した。
朝だ。
俺は、あくび一つすると布団の中を漁り、目当てのものを探す。
あった。
スマートフォンだ。
俺の足の近くにあった。
何でこんな所にあるのか不明だ。
寝相は悪くないはずなのに。
俺はスマートフォンを掴み、時間を確認する。
そうして大きな悲鳴を上げた。
一気に目が覚めた。
今日は月曜日。
講義があるのだが、史観を見るに、急がないと間に合わない。
寝る時にスマートフォンのアラームを設定していなかったのだ。
昨日は色々あってそんな所にまで気が回らなかった。
不覚。
「何だ? うるさい」
そう声がした。
うん? っと、その声の方を見て俺は、はっとする。
女の子がいる。
誰だ?
まだ寝ぼけが残っているのか、そう一瞬考えてすぐさまに記憶を取り戻した俺は、「ああっ!」とまた声を上げた。
女の子が俺の声に耳を塞ぐ。
そうだ。
ポチだ。
季夜の彼女……ではまだないらしいが、それに近い存在。
俺のうちに初めて泊まった女の子。
彼女の事を考えると妙心がざわついて……。
何だか変な気持ちになって。
「うわぁぁぁっ!」
俺は叫び声と共に髪の毛を掻きむしる。
「うるさい!」
思いっきりポチに怒鳴られる。
密かに朝から女の子が我が家にいるこの状況を夢かと思っていたが、こんなやかましい夢は見た事が無い。
これが俺のリアルなのか。
頭が痛い。
ポチは毛布から出た顔をこっちに向けて目を擦っていた。
ふと思う。
俺は女の子に見られる様な恰好をしているだろうか。
きっと寝癖が酷かろう……いや、そうじゃない。
今考えるべき事は……。
大学に行かねば。
俺は急いでベッドから這い出るとすぐさま脱衣室に走った。
驚いた顔をしたポチの横顔がかすめて行った。
秒で脱衣室まで辿り着く。
扉を開く。
洗面台の前で勢いよく蛇口を捻ると顔を、ばさばさと洗う。
手早くそれを済ませるとその辺にあった手拭いで顔を拭いた。
次は歯磨きだ。
急ぎ過ぎて歯磨き粉を大量に歯ブラシの上に載せてしまった。
大いに泡立つ俺の口の中。




