三角形な奇妙な日常21
我が家のタオルは初めの方こそふわりとしていたが、何度か洗濯しているうちに、かつての栄光を思い出すことが出来ない程、ざらざらとした肌触りを演出していた。
少しカビてもいる。
こんなタオルを女の子に勧める何て俺は紳士失格だ。
ちょっと落ち込んだ気分になった。
ため息が自然と口から漏れる。
そんなプチナーバスな状態で脱衣室を出る。
冷蔵庫から氷を取りだしてそれをコップに入れ、水道の水をコップいっぱいに入れて喉を鳴らして飲んだ。
口の中が潤うと、これで気分は少しはマシになった。
水はまだ少し残っている。
えいっ、とそれを飲み干して口元を拭った。
空のカップを流しに置いた。
ことっ、とカップが頼りなさげな音を鳴らす。
その音を聞くとため息が漏れた。
俺は、もう一度、ため息を漏らす。
コップを洗うのは明日にする事を決める。
俺は息をひそめて部屋の中に入った。
床に目を向けるとポチが、すやすやと寝息を立てて眠っている。
ポチの隣にはカプリーヌが寄り添って眠っていた。
カプリーヌは、ぐぅぐぅといびきを掻いている。
猫もいびきをするのだと始めて知った瞬間だった。
俺は出来るだけ音を立てない様にして、ベッドに入った。
そして目を閉じる。
そうして数分、目を閉じたままじっとしていたが、眠りはやって来なかった。
俺は目を開く。
どうした事か、疲れているはずなのに目が冴えてしまっている。
再び目を閉じて布団の中で、しばらく、もぞもぞと動いていたが眠れない。
だんだん、いらいらして来た。
俺は、そっと布団から出ると座卓の上に置いてあるスマートフォンを掴んだ。
眠れない夜はスマートフォンをいじるに限る。
ベッドに戻る途中、何げなくポチを見た。
ポチの寝顔は穏やかでは無く、眉間に皺が寄っていた。
悪い夢でも見ているのか。
気が付けば俺はポチの前に膝を下ろしていた。
そのままポチを見下ろす。
「うーんっ……」
ポチから苦しそうな声が漏れた。
ポチの体がくるりと反転する。
俺はびくりとしてポチから距離を置く。
ポチが目を覚ましたんだと思ったからだ。
だが、ポチは目を瞑ったままだ。
寝言か?
恐る恐る、再びポチに近付く。
ポチの眉間に寄った皺を眺める。
どんな夢を見ているのか、本当に辛そうだ。
俺の手が自然にポチの額に向かって伸びた。
もう少しで額に触れる、という時。
「季夜」
ポチの口からそう声が漏れた。
俺は慌てて手を引っ込めた。
そして、そのままベッドに入る。
布団の中から目を凝らしてポチの方を見る。
ポチは眠っている。
頭の中で言葉に出せない自分の台詞が響く。
俺は何をやってるんだ、とリフレインする。
体が熱くてたまらない。
どきどきと、心臓の音がうるさい。
何なんだ、これは。
訳の分からない感情を持て余した俺は、音を絞って動画を見たりお気に入りのサイトを覗いたりして気を紛らわせた。




