三角形な奇妙な日常20
「これ。食べれるかどうか分からないけど」
俺は鰹節ご飯をポチに手渡した。
ポチは鰹節ご飯ご飯を眺めて、「……食べさせてみる」と言い、鰹節ご飯をカプリーヌの鼻先に近付けた。
カプリーヌは鰹節ご飯の匂いを濡れた鼻で存分に嗅いだ。
カプリーヌの鼻息で鰹節が宙に舞う。
俺とポチはカプリーヌの様子をじっとして見守った。
カプリーヌが、えいっ! とばかりに鰹節ご飯に食いついた。
「おおっ!」と俺とポチから歓声の声が漏れる。
カプリーヌはがつがつと鰹節ご飯を召し上がっている。
「大丈夫みたいだな……」
俺がそう言うと、カプリーヌが、ふにゃあ、と渋い顔をして俺を見上げた。
「うっ……キャットフード買わなきゃだめか」
俺の頭の中で千円札が羽を生やして飛んで行く映像が浮かぶ。
「カプリーヌの餌代はアタシが出す」
俺の頭の中を見透かした様にポチが言う。
「いやいや。季夜の彼女にそんな事!」
「それくらいする。それに、まだ季夜の彼女じゃ無い。季夜がプロポーズしてくれて無いんだから」
ポチの顔に影が差した。
「プロポーズ……」
俺の表情は固まった。
季夜はポチにプロポーズする前に死んだんだ、と思い知る。
どうしてこんな悲しい事が起きるのか。
季夜に限ってどうして……。
世の中の不公平を呪いたくなる。
「約束したんだ。アタシが十六歳になったらプロポーズしてくれるって。彼女にしてくれるって……」
沈んだ表情でポチは言う。
俺はその台詞に答える事が出来ずに、ただ下を向いていた。
カプリーヌが、にゃあ、と鳴いた。
カプリーヌはすっかり鰹節ご飯を片付けて小さな手で顔を拭っている。
そんなカプリーヌの様子を見てポチが微笑んだ。
それは何処か寂しそうな笑い方だった。
「アタシ、もう寝る」
そう言ってポチはボストンバッグから薄い毛布を取り出すとスカジャンを着込んだ。
そんな毛布とスカジャンで寒くないのかと思う。
しかし、貸してやれる布団も無い。
そんな事を思っている間にポチは部屋の隅に横になって頭からすっぽりと毛布をかぶって目を閉じた。
「……じゃあ、俺、シャワー浴びて来るわ」
ポチにそう言って、俺は部屋の明りを暗くする。
「電気、気を使わなくても大丈夫だ」と目を閉じたまま言うポチ。
「いや、俺もシャワー浴びたら寝るから。今日は疲れた」と俺。
「そうか」
そう言ったまま、ポチは無言になった。
俺は暗がりの部屋から着替えを持ちだすと風呂場にゆっくりと向かった。
熱いシャワーを浴びると一日の疲れが多少消えた。
顔を洗い、頭を洗い、体を洗い終えた頃には随分と気持ち良くなっていた。
この世にシャワーを生んだ人物に尊敬の念を抱く。
風呂場を出て、使い古しのタオルで体を拭く。




