三角形な奇妙な日常18
仲間と季夜の誕生日祝いを昼間っからしたっけ。
季夜は短い二十代を過ごしたんだ。
廊下から流しの水が流れる音が少し漏れて来る。
これからどうするかな。
俺は宙を仰いだ。
その後は、お互い特に話すこともなく時間だけが過ぎて行った。
ポチはカプリーヌを相手に、まあ、わりと機嫌よさげに過ごしていた。
俺は学生らしく、狭い座卓を陣取りレポートを書いたりしていた。
レポートが一段落ついた頃。
俺が「風呂、どうする?」と思い出したかの様に言うと、ポチは、「入っても良いのか!」と目を輝かせた。
「まぁ、シャワーになるけど」
「シャワーで良い! 風呂は銭湯で毎日入る事にしてたんだ。けど、今日はまだだから……」
「へぇ」
まあ、ポチは女の子だから家無しとは言え身だしなみは気になるんだろう。
「前は身だしなみ何か気にならなかったけど、銭湯に行った日に季夜に会ったら、良い香りがするって言ってくれて。それから毎日体を洗う様にしてるんだ」
「へぇ……」
何とも、ごちそう様な話だ。
「銭湯代はカンさんがいつも奢ってくれてさ。銭湯も毎日となると財布に痛いからカンさんには感謝しなくちゃいけないんだ」
あの恐怖の大王みたいなホームレス達にポチは随分と可愛がられている様子だった。
男だらけの中での紅一点。
しかも十六歳の女の子とくれば可愛がられもするだろう。
そう言えば季夜がポチは乙女川のホームレス達に助けられたと言っていたっけ。
「シャワー、先に使って良いから。あ、着替えとかは?」
俺が訊ねるとポチは「持って来た。タオルも。あと歯磨きセットとコップ」と部屋の隅に置かれた大きな黒いボストンバックに視線を向ける。
あのボストンバッグに身の回りの物を入れれて来たのか。
タオルまで持って来るなんて用意周到だ。
「あー、タオルはうちのを使っていいよ。ぼろタオルで良かったら」
「おお、助かる」
「どういたしまして」
俺は立ち上がりポチを浴室まで案内した。
小さいながら我が家には脱衣室もある。
そこに、ギリギリ入る大きさの洗濯機が置いてある。
脱衣室の半分は洗濯機が占めていた。
シャワーの使い方をポチに教えて、ボディソープとシャンプー類は持って来ていたみたいだからそれを使ってもらう事にして(うちはボディソープでは無くて石鹸だ)俺は浴室から出る。
そして部屋に戻る。
浴室は廊下の方にある。
故に俺は部屋の扉をしっかりと閉めるとイヤホンを耳に突っ込でスマートフォンで音楽を聴いた。
音楽は俺の耳にちっとも入って来なかった。
うちで女の子がシャワーを浴びているという現実が妙に生々しくて気が散ってしまうのだ。
あんなガキでも女は女なんだな、何てろくでもない事を思いながら、ちっとも耳に入らない音楽を聴き続けた。




