三角形な奇妙な日常12
「じゃあな」
そう言うと俺はラーメン丼ぶりとmy箸を両手に持ち、開けっぱなしの戸を抜けて部屋の中に入り込む。
「熱い、熱い」
小走りになる。
ラーメン丼ぶりの熱さに耐えかねた俺は素早く、しかし、ラーメンのスープをこぼさない様に気を付けながら座卓にラーメン丼ぶりを置いた。
ラーメン丼ぶりを持っていた為に赤くなった手に、ふぅふぅと息を吹き掛けながら座卓に着くと、やや大きめの声で、「いただきます」と言う。
耳を澄ませど廊下は静かだった。
ふぅっ、と俺からため息が漏れる。
俺の目は、薄汚れた座卓に向いた。
座卓にお似合いの見た目が猛烈に汚いラーメンに俺の目は釘付けになる。
ええいっ、ままよ!
ラーメンを勢い良く啜る。
「ん?」
麺を良く噛む。
「んー……美味い!」
がっ、と、ラーメン丼ぶりに箸を入れる。
野菜と麺を一緒に箸で挟み、箸を口に突っ込む。
ラーメンの味を噛み締める。
美味い。
美味過ぎる。
この美味さは尋常じゃない。
箸が進む、進む。
無我夢中でラーメンを啜る俺。
カプリーヌが俺の側まで来て、ふがふがと鼻を鳴らす。
食べさせてくれ、という事だろうか?
はたして猫にラーメンを食べさせても良いものか。
悩んだ末、麺を一本箸で掴んでカプリーヌの鼻先へ持って行く。
カプリーヌが麺に食い付いた。
その後……。
カプリーヌは、ぎゃっ! と声を上げて麺を吐き出した。
そうだ猫舌だ。
熱々の麺を猫にあげてしまった。
何たる不覚か。
カプリーヌは急いで俺のベッドに駆け込んで行った。
「うわっ、ベッドは止めろ!」
俺が素早くベッドに向かうとカプリーヌはひらりと俺を交わしながらベッドの上を跳ね回った。
「こら! こら!」
猫を追い回して右往左往。
そうしているうちにポチがラーメン丼ぶりを持って部屋に入って来た。
「何遊んでるんだ?」
言われて「遊びじゃない!」と思わず怒鳴る。
ポチが顔を顰める。
「わ、悪い」
俺は顔に似合わずしゅんとなる。
ポチが無言でラーメン丼ぶりを座卓に置く。
座卓は小さく、二人分のラーメン丼ぶりが並んでいる姿には、かなり違和感がある。
ポチは畳に胡座を描いて、「いただきます」と手を合わせる。
俺は、どうしようかと迷いながら座卓に落ち着いた。
俺の至近距離でラーメンを女の子が啜っている。
変な感じがした。
何だか非常に気まずい。
「あ、ラーメン、美味かったよ」
照れながら言ってみる。
「だろ。こつがあるんだ」
「こつ?」
自分の顔が少しポチの顔に近付いてしまって、さっと距離を取る。




