三角形な奇妙な日常10
こんな所呼ばわりされて猫にまで吠えられる……。
俺の方こそ何でこんな目に合ってるのかと訴えたい。
「ご、五分でも、会えないよりましだろ!」
俺の台詞への返事は無かった。
ポチは膝を抱いてその場に座り込んでしまった。
カプリーヌがそんなポチに、そっとすりよる。
「はぁっ……」
ため息と共に俺はベッドに腰掛けた。
掃除の疲れもあって、このままベッドの中へ潜りたい気持ちだったがポチがいるのでそうもいかず。
明らかに元気が無いポチと二人。
気まずい空気が部屋の中に流れる。
俺はベッドに腰掛けたまま、しばらくじっとして過ごした。
ポチも畳の上に座ったまま、たまにカプリーヌの背中を撫でながら無言でいた。
静かな俺達の代わりみたいに時折、カプリーヌが思い出したかの様に、にゃあ、と鳴く。
こんなんで、本当にこれからやって行けるのか。
その事だけが俺の脳裏を横切っていく。
ポチからため息が漏れて俺は余計に自信を無くした。
ぐうっ。
王道の音が部屋に響いた。
ポチのお腹が鳴ったのだ。
ポチの顔に赤みが差した。
俺は重い腰を上げて「飯、食べるか?」とポチに訪ねた。
ポチは、俺を見て、こくりと頷いた。
「よし」
腕まくりをして部屋から出て、狭い台所に俺は立つ。
中古で買ったボロい小型の冷蔵庫を開いて中を見る。
キャベツともやしとキクラゲの入った野菜炒めセットが目に付いた。
俺は野菜炒めセットを手にすると冷蔵庫を閉じた。
そして、コンロに火を付ける。
コンロの上に置きっぱなしの油のこびりついたフライパンに熱が通るとフライパンに油を注ぎ、洗わなくてもOKな野菜炒めセットを投入した。
じゅっ、と小気味いい音がする。
化学調味料を振りかけ、長さの揃っていない菜箸でフライパンを掻き混ぜる。
ポチが部屋から出て来た。
ポチは無言で俺の隣に並ぶ。
廊下にある狭い台所スペースに二人並ぶと、より狭さを感じる。
ポチは無言のまま、フライパンを見つめていた。
俺も無言で肉の無い野菜炒めをかき混ぜる。
換気扇の音だけがやけに張り切って鳴っている。
「……お前、やってみる?」
無言の世界に耐えきれず、言ってみる。
俺の顔を目を見開いて見た後「うん」とポチ。
菜箸をポチに渡すとポチは野菜炒めを掻き混ぜる。
ぐるぐると、大胆なかき混ぜ方をするポチに多少の不安を抱きながら、隅にある格安スーパーの袋を漁る。
袋から袋麺を取り出す。
今日のメニューはラーメン。
安くて美味いのを選んで買った。
味は豚骨。
「野菜炒め出来た」
ポチの声。




