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五分と三角の時間に虹  作者: 円間
三角形な奇妙な日常
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三角形な奇妙な日常9

 何処だ、と探すと、カプリーヌはベッドの上で自分の足を舐めていた。

「うげっ汚い!」

 悲鳴を上げる俺。

「汚い部屋だな」

 ポチの声が背中に掛かる。

 俺は首を後ろに向けてポチを見た。

 ポチがきょろきょろと俺の部屋を見まわしている。

「今、片付けるから!」とポチに向けて言う。

「声が大きいやつだな」

 ポチの視線が水着姿のグラビアアイドルが表紙の雑誌に向けられた。

「うわっ!」

 俺は急いで雑誌を本棚の隙間にねじ込む。

 本棚は雑誌に学校の教科書類、それに、何となく買った漫画や本が混沌としてある。

 本棚の様子は、そのままこの部屋の様子を表していた。

「兎に角、片付けるから。その辺でじっとしてろ!」

 俺が言うとポチはつまらなそうにして「分かった」と言った。

 深いため息が俺の口から漏れた。




 部屋の片隅でポチがカプリーヌと戯れている間、俺は掃除に猛奮闘した。

 掃除してみて思う。

 こんな部屋で自分はよく生きていたものだ、と。




「終わったーっ!」

 思わず声が出た。

 二時間ほど掛けて、まあ、何とか見られる様になった部屋。

 すっきりと汗をかいた俺はシャワーでも浴びたい気分になっていた。

「これでお終いか? まだ汚い」とポチ。

「うるさいな。男の部屋なんてこんなんで十分だろ」

「物が多すぎるんだ。生きてくのにこんなに物が必要なのか?」

 ポチが俺の部屋を目を細めて眺める。

 確かに言う通り、俺の部屋は物で溢れている。

 何でこんな事になったのか自分でも分からないくらいに物がひしめいていた。

「生きるのを楽しむ為にはこれくらい必要なんだよ」

 名言だ、と自分でも思った。

「ふぅーん」

 どうでも良いと言う風にポチ。

 けっ。

「ところで、口寄せはいつやるんだ?」

 言われて俺は「今日はもう口寄せ出来ない」と答える。

 ポチの眉間にどっと皺が寄る。

「何で?」

「今日は、もう口寄せをしちまったんだ。口寄せは一日に一回しか出来ない」

「ええーっ? もう口寄せしたなんて。そんな、聞いてない!」

 畳みを踏み鳴らすポチ。

「いや、その、悪い。明日、ちゃんと口寄せしてやるから」

「今日は季夜に会えないのか……」

 しょんぼりと肩を落とすポチ。

「口寄せは一日一回、五分間までなんだ」

「五分?」

「ああ」

「たったそれだけ?」

「ああ」

「そんな……せっかくここまで来たのに……今日はもう季夜に会えないなんて……一日五分だなんて。何で早く言ってくれなかったんだ。季夜とゆっくり話しがしたくて……だからアタシはこんな所まで……なのに」

 ポチがその場に座り込んだ。

 カプリーヌが俺に向かって、「しゃーっ!」と鳴く。

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