三角形な奇妙な日常3
照れ隠しに俺は話し出した。
「でも、本当にびっくりしたぜ。お前に付き合いたい女の子がいたなんて。しかも、歳下だ。彼女どこの高校何だ?」
言ってから大学生が女子高生と知り合いになるにはどうしたら良いんだろうか?
そんな疑問がふと過った。
「いや」
「ん?」
「ポチは高校には行ってない。ポチは……こんな事話して良いのか分からないけど、捨て子だったんだ」
「えっ?」
衝撃が俺に走る。
「どう言う事だよ」と俺。
「ああ。ポチから聞いた話なんだけど、彼女、赤ちゃんの頃に施設の前に捨てられていたらしい」
施設って児童養護施設の事か。
あの子にそんな過去が……。
季夜が話を続ける。
「ポチは十四歳まで施設で育ったんだ。でも、ポチは施設を抜け出した。なんでそうなったのかは話してくれなかったけど施設を抜け出したポチはこの街に辿り着いて、それでお腹を空かせて街を彷徨っている所を彼ら……乙女川の人達に助けられたんだ。それ以来、ポチはずっと彼らと一緒にいる」
「十四歳で施設を抜け出したって……学校は?」
「施設にいた頃は中学まで通ってたらしいけど、途中で施設を抜け出したからポチは小学校までしか卒業して無い」
何て話なんだ。
俺は言葉が出ない。
「ポチに出会ったのは去年のこの時期で……」
季夜の言葉が途切れた。
「季夜?」
呼び掛けたが返事はない。
季夜の気配を感じない。
五分間が過ぎたのだ。
五分は、あっという間に過ぎてしまう。
急に寂しさが湧いて来た。
季夜、また会えるんだよな。
石が壊れているとしたら今後、季夜とこうして会う事は出来なくなるのだろうか。
もやもやとした気持ちのままに俺は一日をスタートさせた。
掃除に洗濯。
大学の課題の数々。
やる事は山ほどある。
俺は無心でそれらをこなした。
こんな時間もあっという間に過ぎてしまう。
午後。
課題が終わると俺は直ぐに占い師の下へと向かった。
さぼりがちなのに申し訳ないが、今日、アルバイトが無い事に心から感謝した。
これなら占い師の所へ行った後でポチの所へ行ってもそう遅くはならない。
占いの館の扉の前で俺は立ち止まっていた。
まさか、また此処に来る事になるなんて。
もう二度と来ないと思っていたのに、と思いにふける。
扉が開き、中から出て来た二人組の女の子が迷惑そうに俺を見た。
「すいません」
つい謝る俺。
彼女達は怪しそうな視線を俺に投げかけ、階段を下りて行った。
俺は占いの館の扉を開いた。
占いの館は相変わらず香の香りに満ち溢れ、相変わらず混んでいた。
パイプ椅子にカップルらしき連中や女の子達がずらりと順番を待って並んでいる。
受付に行き受付係の店員に、「あの……」と声を掛ける。
店員は笑顔で、「いらっしゃいませ」と俺に言う。




