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五分と三角の時間に虹  作者: 円間
三角形な奇妙な日常
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三角形な奇妙な日常2

 俺は静かに見守る事にした。

 数分後。

「ああーっ!」

 ポチから悲鳴が漏れた。

「こんなに集中して季夜を思ってるのに全然季夜を感じない。声も聞こえてこないし……どうなってるんだ!」

 ポチが、ぎろりと俺を睨む。

「俺に訊かれてもどうなってるかなんて分かんねーよ」

 正直に答える。

「アタシの季夜を思う気持ちが弱いのかな」

 不安そうにポチが言う。

「そんな事ある訳無いだろ!」

 俺は言った。

 俺なんかより彼女の方がずっと季夜を思っているだろう。

 そのポチが引き寄せられないなんて……。

「壊れたのかな」

 俺の台詞に、「そんな……」とポチがはちきれんばかりの声を出す。

「明日、それをくれた占い師の所に行って相談してみるよ。一度返してくれ」

 ポチはネックレスを外して惜しそうに俺に手渡した。

「じゃあな」

「待ってくれ!」

 大声で言うポチ。

 まだ何かあるというのか?

 俺は動き出していた足を止めた。

「石の事が分かったら、また此処に来てくれるのか?」

 ポチは切なげな表情だった。

「ああ。必ず来る。明日来るから」

「待ってる」

「ああ。じゃあ、明日な」

 俺はポチに背を向けた。

 背中から「明日な!」と声が掛かる。

 俺は振り返らずに手を振ってみせた。

 ポチはもう何も言って来なかった。

 俺は河川敷から出て、水たまりが所々出来た道をじぐざぐに歩き続けた。

 アパートに着くとそのまま眠ってしまった。

 とても、とても疲れていたのだ。




 翌朝、早くに目が覚めた。

 朝日も昇って無い時間だ。

 昨日、アパートに帰ってから俺はずっと眠ったままだった。

 だるい体を起こして水道水で喉を潤す。

「ぷはぁ」と声が出た。

 俺は口寄せを行う事にした。

 昨日、ポチが口寄せした時、口寄せは成功しなかった。

 本当に石は壊れてしまったのだろうか?

 それを確かめたかった。

 俺は目を閉じて季夜の事を思った。

 親友、頼む。

 来てくれ。

 しばらくすると、季夜の匂いがして来た。

 俺は目を開く。

「季夜?」

 語りかけると「住原」と季夜の声が返って来る。

「あれ? おかしいな。口寄せ……出来てる?」

「何を言ってるんだ、住原」

「いや、あのさ、昨日……」

 俺は昨日のポチの口寄せの事を季夜に話した。

 季夜は、「なるほど」と言う。

「兎に角、今日、あの占い師の所へ行ってみようと思うんだ。石の調子が悪いんだったら困るし」

「それが良いかもな。所で住原、昨日はありがとう。めちゃくちゃ感謝してる」

「感謝なんて、そんな……」

 俺は照れた。

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