出会い、そして再開9
ポチの目は真剣そのものだった。
男達は静まった。
「橋の下に行け。そこなら俺達の目が届く」とカンさん。
カンさんに頷くと、ポチは顎で橋の下を指し「付いて来い」と歩き出した。
男達を掻き分けて急いでポチの後を追う。
乙女橋の下。
そこは完全に陰に飲まれている。
地面にはしぶとく生えている雑草。
そして、青いビニールシートで覆われた小屋が二軒。
小屋の中からは誰の気配も感じない。
振り向けば、此処からそう遠くない場所からホームレス達がこちらを眺めているのが見える。
「それで、話しって何だ。あの下らない話し以外に何かあるのか?」
棘のある言葉を言うポチ。
俺は嫌われているのだろうか。
まあ、かまわない。
俺は息を大きく吸い込んでから話し出した。
「前に言った通り、季夜が亡くなったんだ」
そう言った途端、ポチは顔の中心に皺を寄せ集めて「嘘を言うな!」と怒鳴る。
「本当に残念な事だけど。そうなんだ……でも」
静かに、静かに言った。
「でも、何だ!」
興奮しているポチが一歩俺の方へと足を踏み鳴らす。
出来るだけ、落ち着いて話さなければならない。
俺は慎重に口を開く。
「季夜から、君にメッセージがある。それを伝えたい」
「メッセージ?」
「そう、メッセージだ」
「どんな?」
「これから話す。待っててくれ」
目を閉じて、口寄せを始める。
集中して季夜の事を思う。
「何やってるんだ」
ポチにそう言われ眉間に皺が寄る。
「静かにしててくれ」と俺は言った。
ポチは黙った。
季夜に集中しろ。
そう自分に命じる。
季夜。
季夜。
季夜!
強く。
強く季夜を思った。
「住原」と声がした。
「季夜!」
俺は眼を開き、呼び掛けた。
季夜が俺の中に下りて来た。
季夜を感じる。
温かくて心地良い季夜の感じが、じわりと俺の体に広がっている。
「季夜? 何処だ?」
ポチが辺りをきょろきょろとする。
「静かにしてろって!」
俺に言われ、不服そうな顔をするポチ。
「住原、これから俺が言う事を、ポチに伝えてくれ」と季夜。
「分った」と俺。
「お前、何独り言、言ってるんだ」
ポチの台詞から季夜の声は俺にしか届かない事がはっきりと分かる。
「ちょっと静かにしててくれ。それで、その後、俺の話を聞いてくれ。頼む」
そう言うと、俺は地面に両手と足の両肘をついて頭を下げた。
「住原!」
「お前、何やってるんだ!」
季夜とポチが同時に声を上げる。




