別れ3
そして、占い師はカードを纏め、切ると、テーブルの上に一列に並べて俺にその中から三枚選ぶようにと指示をした。
俺は言われた通り、特に悩むことは無く三枚カードを選んだ。
占い師が、俺が選んだカードを表に返す。
占い師の目がカードに注がれる。
真剣な顔でカードを睨む占い師。
占い師は小さく息を漏らす。
そして占い師は口を開いた。
「うーん、そうね……。あなたは心配する事は無いわ。きっとこれから良い事がある」
「そうなんですか?」
俺はカードをじっと見た。
一枚は太陽が描かれたカードで、もう一枚が、崩れそうな塔の描かれたカード。
あと一枚が羽の生えた弓を持った子供が男と女を空から見下ろしているカードだ。
太陽と羽の生えた子供のカードはともかく、塔のカードは何だか不吉そうである。
俺は占い師の占いに不信感を覚えた。
「そんなに不信がらなくても大丈夫よ。あなたには、恋の予感もあるのよ」
俺の不信気な顔を見てなのか、俺が不信に思っている事を占い師は当てた。
「恋の予感だってさ。良かったな、住原」
季夜が笑って俺の肩を叩く。
「本当に俺の運気は大丈夫なんですね?」
「ええ。大丈夫です。全体的な運勢を見ても住原さんは、今年は発展の時で、行動する事で全てが上手く行く時期です。普段よりも行動的になって動いて行けば大丈夫ですよ。何かやりたい事があるなら是非チャレンジしてみて下さい。ただ……」
占い師の顔が一瞬曇った。
「ただ?」
俺は息を呑む。
占い師は俺と目を合わせた後、カードに視線を落とした。
緊張が場に走る。
早く何か言えよ、と思う俺。
俺の念が通じたのか占い師が口を開く。
「今後、何かショックな出来事がある、との暗示が出ています。何かが壊れてしまう様な、そんな暗示があります」
「え」
え、と言って開いた口を閉じる事も忘れ、俺は占い師の顔を見返した。
「恐れる事はありません。何かが壊れた後に、また再生の時が始まりますから」
「はぁ……」
うーん、恋の予感も発展の時も、ぴんと来ない。
しかし、ショックな事なら俺の日常生活に溢れている。
家を出れば財布を忘れるし、寝坊して単位ぎりぎりの大学の講義が受けられなかったり。
これ以上何があるというのか……。
気が付けば季夜が心配そうに俺の顔を見ている。
まぁ、そんなに気にする事も無いか、と俺は自分に言い聞かせ、季夜に向かって、にかっと笑った。
季夜の心配そうな顔が和らいだ。
俺は占い師の方に顔を戻した。
「分かりました。ありがとうございます」
「後は何かありますか?」
「……いや、特には……」
俺は首を横に振る。
逆に、他にまだ何かあるのか、と聞きたい。
占い師が頷く。
「では、次の方……えーっと、多田野季夜さん」
「はい」
季夜は占い師に軽くお辞儀をする。
さて、季夜の番だ。
占い師は手に季夜のプロフィール用紙を持ち眺めた。
その時、占い師の目が微かに曇るのを俺は見逃がさなかった。